「2025年7月5日予言騒動」が映す日本社会の影 なぜ終末論が繰り返されるのか かつて19世紀末にもあった終末論 欧州はどう乗り越えた? 民主社会を守るために必要な「社会の免疫」とは何か?

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Gerd AltmannによるPixabayからの画像

 大きな災害が2025年7月5日に発生するという騒動は、日本社会において今なお、終末論的世界観が根強く残っていることを示した。

 発端は、漫画家たつき諒氏の著書『私が見た未来 完全版』に記された「2025年7月に未曾有の大災害が起きる」という“予知夢”の記述であるが、こうした終末論が拡散する背景には、いくつかの構造的要因がある。

要約

2025年7月5日に「大災害が起きる」とする噂が広まった要因として、たとえば日本社会に歴史的に根付く終末論的世界観がある。発端はたつき諒氏の“予知夢”であったが、仏教の末法思想、キリスト教的黙示録、さらにノストラダムスなど大衆文化を通じた終末予言も長く日本社会に浸透してきた。

終末論は日本だけにとどまらない。19世紀ヨーロッパでも社会不安とともに終末思想が強まり、民族主義や排外主義と結びついた歴史がある。

しかしナチスの台頭という惨禍を経て、欧州諸国はデマや陰謀論に対抗するため教育改革を進め、メディアリテラシー教育を「社会の免疫」として制度化してきた。

一方日本では、批判的思考や情報リテラシー教育が十分に整備されておらず、行政・学術機関の科学的発信力やメディアのファクトチェック体制も弱いことが、終末論的デマがいまだ広まりやすい要因ともなっている。

記事のポイント

  • 日本社会には、末法思想やノストラダムスなど歴史的・文化的に終末論が根強く残り、予言的デマが拡散しやすい構造がある。
  • 終末論が広がる背景には、宗教観の歴史的影響に加え、近代以降の大衆文化・オカルトの浸透がある。
  • 対策として、欧州のようなメディアリテラシー教育の強化と、行政・学術機関による科学的情報発信の継続が必要。

Summary

The spread of rumors predicting a “major disaster” on July 5, 2025 can be attributed to several factors, including Japan’s historically ingrained apocalyptic worldview. While the initial trigger was Tatsuki Ryo’s “prophetic dreams,” Japan has long been influenced by Buddhist ideas about the Age of Decadence, Christian apocalyptic prophecies, and even end-time predictions through popular culture figures like Nostradamus.

End-times theology isn’t confined to Japan. In the 19th century Europe too, end-times thinking intensified alongside social unrest, historically linking with nationalism and xenophobia.

However, following the catastrophe of Nazism’s rise, European nations advanced educational reforms to combat misinformation and conspiracy theories, institutionalizing media literacy education as “society’s immune system.”

Meanwhile, in Japan, critical thinking and information literacy education remain inadequate, and the scientific communication capabilities of government and academic institutions, along with media fact-checking systems, remain weak—all of which contribute to why apocalyptic rumors continue to spread easily.

 日本社会には仏教の「末法思想」など、終末的世界観が歴史的に根付いている。加えて、近代以降は、キリスト教的な黙示思想や、西洋オカルティズムに由来する終末予言が、エンターテインメントや大衆文化を通じて広く浸透してきた。

 なかでも、1970年代以降の「ノストラダムスの大予言」ブームは象徴的であり、1999年の人類滅亡説を真剣に受け止める層まで登場した1

 このような騒動に対しては、欧州諸国の取り組みを参考にした複合的アプローチが必要である。まずはメディアリテラシー教育の強化が不可欠。デマや陰謀論に対して冷静かつ批判的に対応できる市民的能力の強化は、民主社会の基盤でもある2

 欧州では、情報の真偽を積極的に検討する教育が制度化され、フェイクニュース対策の専門的インフラも整備されている。第二に、行政や学術機関が、災害が予言されているというような情報を「科学的に不可能である」(再現不可)という見解を明確に、かつ継続的に発信する姿勢が重要だ。

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終末観の歴史的展開:黙示録、末法、そしてノストラダムス

 終末論とは、世界の終焉や人類の最終的運命についての宗教的・思想的観念であり、古代から現代に至るまで、さまざまな文化や宗教において形を変えながら語り継がれてきた。

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