「観て賭ける産業」に変わるスポーツの光と影:8700億ドル市場の裏で世界的に進むスポーツ人口の減少 スポーツの公共性は取り戻せるか?

スポーツ
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fernando zhiminaicelaによるPixabayからの画像

 今日のスポーツ産業は、かつてない拡大期を迎えている。2023年の市場規模は4,849億ドルに達し、2033年には約8,700億ドルへの拡大が見込まれ、その規模は半導体やスマートフォン、再生可能エネルギー市場にも匹敵するという1。そしてその成長を牽引するのは、放映権料の高騰とスポーツ賭博の拡大であることは間違いない。

〇全文を以下(有料)で読むことができます。

要約

スポーツ産業は賭博や放映権の拡大で8700億ドル規模へ拡大する一方、「観て賭ける産業」への変容は深刻な課題を生んでいる。日本ではスポーツ参加率が7割を切った。

持続可能なスポーツの未来には、利潤追求と公共性の両立が不可欠。単なる「量」の拡大ではなく、収益を地域に還元し、社会性を育む「スポーツ・シティズンシップ教育」を強化することで、スポーツを地域社会の共通財産として再定義する必要がある。

記事のポイント

  • スポーツ産業は2033年に約8,700億ドル規模に拡大する一方で、日本スポーツ参加率は7割を切った。
  • 参加率の低下は時間的・空間的制約に加え、有料化や遠征費による経済格差が主な原因という。
  • 持続可能なスポーツの使命は、利潤追求と公共性の両立。「量」から「質」への転換(地域還元、フィットネス投資)と、社会性を育む「スポーツ・シティズンシップ教育」の推進が不可欠である。

Summary

The sports industry has expanded to an $870 billion scale through gambling and broadcasting rights, yet its transformation into a “watch-and-bet industry” poses serious challenges. In Japan, sports participation rates have fallen below 70%.

For a sustainable future of sports, balancing profit-seeking with public benefit is essential. Rather than merely expanding “quantity,” we must redefine sports as a shared asset of local communities by reinforcing “sports citizenship education” that reinvests profits locally and fosters social values.

Translated with DeepL.com (free version)

 特にストリーミング配信の定着により、視聴主体がデジタルへと移行する中、スポーツは「プレイする文化」から「観て賭ける産業」へと変容しつつある。しかしこの転換は、経済的成功の裏でスポーツの本来の価値をどう維持すべきかという、根本的な問いを突き付けている。

 事実、成長の陰には構造的な課題も潜んでいる。第一に、放映権費用の高騰は、人気競技の有料化を進め、無料でスポーツを楽しむ機会を急減させた。かつては地域社会と結びついていたスポーツ観戦は、しかし今や課金を前提とする“プレミアム・エンターテインメント”へと変貌している。

 第二に、賭博市場の拡大が新たな社会リスクを生んでいる。国際的な合法化の動きは新興国経済を押し上げる一方で、未成年者のギャンブル依存や八百長の温床化といった深刻な問題を引き起こしている。

 今後とも持続可能なスポーツ産業の構造を築くには、利潤追求と公共性の両立が不可欠である。したがって、放映権料の透明化、賭博規制の国際協調、収益の地域スポーツへの還元といった制度的改革も求められる。

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世界で加速する「スポーツ離れ」:背景に時間・空間・経済の“三重苦”が

 現在、世界中でスポーツ参加率の低下が進行している。日本国内では、笹川スポーツ財団の「スポーツライフ・データ2024」によれば、年1回以上の運動・スポーツ実施率は69.8%と、2006年以来初めて70%を下回った2。この傾向は日本固有の現象ではなく、ヨーロッパ諸国や北米でも若年層のスポーツ参加率低下が報告されている。

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