「おくりびと」(08年)以来のアカデミー賞へ王手をかける「ドライブ・マイ・カー」の凄さとは? ~2~

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mohamed HassanによるPixabayからの画像

 「ドライブ・マイ・カー」の濱口監督の演出の特徴として、俳優たちに「セリフは一切覚えてこないで」「一字一句変えずに棒読みで」と事前に伝えるというものがある。

 このような演出方法を濱口監督が確立したのは、2015年公開の「ハッピーアワー」という作品。 この作品は、濱口監督が講師を務めていた演技のワークショップがきっかけで製作される。

 同作では、主演を務める4人を含めて、ほとんどの出演者が演技未経験というなかで、監督はどうしたら演技をサポートできるか、試行錯誤を繰り返した。

 編集方法も独特だ。 濱口監督の作品は、すべての撮影が終わったあとに映像を確認し、編集作業が始まる。

 濱口竜介監督の経歴のひとつとして、「東京藝術大学院映像研究科映画専攻」卒業というものが挙げられる。映画専攻コースはm海外の教育機関との共同制作、インターンシップなどを通じ、プロの制作現場を経験することを通じ、実際に現場で活かせるカリキュラムが用意されている。

 講師陣も豪華だ。サウンドデザイン領域には、大友克洋、青山真治らの映画音響を手がけてきた長嶌寛幸などが揃う。

 同映画専攻のこれまでの修了生としては、1期修了生の加藤直輝作「A Bao A Qu」が第12回釜山国際ペンティション部門に出品されたことを皮切りに、真利子哲也作「イエローキッド」が日本映画プロフェッショナル大賞の新人監督賞を受賞するなど高い評価を得る。

 あるいは黒沢清監督作「トウキョウソナタ」で、黒沢ともに脚本を務めた田中幸子や、「隣のレジの梅木さん」で第26回フジテレビ・ヤングシナリオ大賞を受賞した倉光泰子、昨年大きな評判となった松たか子出演作「大豆田とわ子と三人の元夫」の脚本を執筆した池田千尋など、年々、各分野において活動の幅を広げている。

 現在、老舗アカデミー賞予想サイトの受賞可能性ランキングによると、「ドライブ・マイ・カー」は、作品賞(最大10枠)で10位に位置し、監督賞(5枠)では6位、国際長編映画賞(5枠)では1位と、現時点で国際長編映画賞の受賞はほぼ決定的な位置であり、「おくりびと」もなしえなかった作品賞へノミネートも狙える位置、監督賞ノミネートも射程圏内である。

 今後の日本映画業界に与えるインパクトも大きい。韓国映画「パラサイト 半地下の家族」のような、アカデミー賞作品賞は無理だとしても、わずか商業映画2作目でこれだけのインパクトを国内外に与えた濱口監督の登場は、今後の日本映画に明るい見通しを与えることは間違いない。

 少なくとも、「パラサイト」の作品賞受賞により、明らかに日韓の差が開いたであろうことは事実であるが、その差を縮めるであろう存在である人物が、この濱口監督であることは確かだ。

前回までの記事→

「おくりびと」(08年)以来のアカデミー賞へ王手をかける「ドライブ・マイ・カー」の凄さとは? ~1~

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濱口メソッド


 「セリフは一切覚えてこないで」「一字一句変えずに棒読みで」

 濱口竜介監督の演出方法も独特であり、それは「濱口メソッド」とも呼ばれている。特徴としては、俳優たちに「セリフは一切覚えてこないで」「一字一句変えずに棒読みで」と事前に伝えるという。

 まず俳優たちは、本読みのために集まった部屋で、初めから脚本を読んでいき、皆が完璧に覚えてから次のページを開く、というスタイルをとっていく。

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