連続企業爆破事件で指名手配されていた桐島聡と名乗る男、死亡 連続企業爆破事件・東アジア反日武装戦線とは? 日本の犯罪被害者支援が始まるきっかけにも

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succoによるPixabayからの画像

 1970年代に起きた連続企業爆破事件で指名手配されていた桐島聡容疑者を名乗る男が1月29日、神奈川県内の病院で死亡したニュースについての報道が活発だ。

 桐島聡と名乗る男は、「内田洋(うちだひろし)」の偽名を使うなどして逃走していたと警視庁はみる。桐島聡本人の可能性が高いとみて、確認を進めていた。

 連続企業爆破事件は、50年前、東京・丸の内で爆弾テロ事件「三菱重工ビル爆破事件」が起きたことに端を発す。

 1974年8月30日午後0時45分ごろ、東京都千代田区のビル正面玄関前に仕掛けられた爆弾2個が爆発。8人が死亡し、380人がけがをした。

 75年5月までに企業を対象にした連続企業爆破事件が都内などで計12件相次いだ。主に標的となったのは三井物産、大成建設、鹿島、間組(当時)など大手ゼネコン企業だった。

 しかし桐島聡容疑者は重傷者を出した連続企業爆破事件に関わっていた可能性はあるが、桐島聡が三菱重工ビル事件に関わっていた可能性は低いとみられている1

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桐島聡とは?

  桐島と名乗る男は数十年前から「内田洋」という名前で神奈川県藤沢市内の工務店で住み込みで働いていたことが分かっており、「最期は本名で迎えたい」などと病院で話していたほか、事件当時の詳しい状況や、家族構成など関係者しか知りえない情報を説明していたという2

 桐島と名乗る男は80年代から神奈川県藤沢市の工務店で住み込みで働いていた。男は金融機関の口座を持っておらず、給料は現金で受け取っていた。男の事件後の海外への渡航歴は確認されていない。

  桐島聡容疑者は広島県出身で、地元の高校を卒業後、明治学院大学法学部に入学。それまで逮捕歴はなかった。

  桐島聡容疑者は、5月20日に東京の渋谷区にある銀行から3万円を引き出し、同月末に広島県福山市の実家に「岡山にいる」と電話したことが判明。

 しかし、その後の逃亡先や生活はわからず、ほぼ50年が経過したが、有力な手がかりは一切見つらなかった。

「爆発物取締罰則違反」の指名手配容疑は25年で時効であるが、共犯者である東アジア反日武装戦線の「狼」のグループの大道寺あや子容疑者(75)らが海外に逃亡したため、桐島聡容疑者の時効は停止されていた3

連続企業爆破事件を起こした東アジア反日武装戦線とは?

 桐島聡容疑者は、「東アジア反日武装戦線」に参加し、70年に大手商社やゼネコンに対する数々の連続企業爆破事件を実行。しかし組織の主要メンバーはわずか9人であり、「狼」4人、「大地の牙」2人、「さそり」の3人4

 このうち桐島聡容疑者は「さそり」に所属。

 最初に結成された「狼」は、爆弾の製造方法を詳細に説明したパンフレット「腹腹時計」(はらはらとけい)を秘密裏に出版。このパンフレットでは、日本を「日帝」と呼び、戦後もアジアの人々を経済的に侵略していると主張し、爆弾による武装蜂起を呼びかける。

 パンフレットには、警察に怪しまれないように、「ごく普通の生活人であることに徹すること」などのカムフラージュの方法も記載。そして、このパンフレットの存在が、「大地の牙」と「さそり」の結成を促す。

 「さそり」のリーダーは、1975年6月12日のサンケイ新聞夕刊によれば、収監中の黒川芳正受刑者。そしてサンケイ新聞によると、「さそり」のテロの動機は次のようなもの。

「日雇い労働者の体験を通じ、これらの労働者からの搾取を許している大手建設会社への怒りや憎しみから爆弾闘争に至った」

「サソリは小さな体で大きな敵を倒す猛毒を持っている。自分らの小さな組織も巨大な建設資本を倒すことができる毒を持っていることを誇示しようとした」

連続企業爆破事件は、日本の犯罪被害者支援が始まるきっかけにも

  丸の内の三菱重工ビルが爆破され事件では8人が死亡、380人が負傷。そして、この連続企業爆破事件をきっかけに犯罪被害者補償制度の確立を求める声が高まる。1980年には、「犯罪被害者等給付金支給法」が制定。

 以後、1992年、東京医科歯科大学に「犯罪被害者相談室」が開設されたり、同年には「犯罪被害者実態調査」が開始。そして98年5月、全国8団体による民間組織「全国被害者支援ネットワーク」が設立。

 加盟団体は年々増え続け、2009年7月には47都道府県すべてに加盟団体(被害者支援センター)が設置された。

 99年5月、全国被害者支援ネットワークは「犯罪被害者の権利宣言」を発表。犯罪被害者の7つの権利を宣言する。そしてこの宣言の主旨は2004年12月に公布された「犯罪被害者等基本法」に反映されていく5

 しかしながら、日本の犯罪被害者支援は各国に比べて手薄だと指摘さ。特に経済的な支援は大幅に遅れている。

 警察庁のまとめによると、日本の2021年度の給付金や補償金の総額は約10億円。一方、ドイツは約478億円(20年)、フランスは391億円、アメリカは約379億円、イギリスは約214億円だという6

 このニュースを機に改めて、日本の犯罪被害者支援について考えなければならない。

  1. 安藤健司「桐島聡容疑者は何をした人物だったのか。「最期は本名で迎えたい」49年間の逃走の末に死亡した可能性」Yahoo!ニュース、BuzzFeed、https://news.yahoo.co.jp/articles/c2891c5b2c9dda0e8e196cda79aba75bf6c0ddbf 
  2. NHK NEWS WEB「桐島容疑者 名乗る人物死亡 爆破事件の遺族「無念でならない」2024年1月29日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240129/k10014338861000.html 
  3. 朝日新聞デジタル「末期がん患者「自分は桐島聡だ」 爆破事件から半世紀、突然の告白」2024年1月26日、https://digital.asahi.com/articles/ASS1V6QZ6S1VUTIL02Y.html 
  4. メ~テレ「捜査関係者「最期は本名で」と…70年代連続企業爆破で指名手配・桐島聡容疑者か」2024年1月29日、https://www.nagoyatv.com/news/syakai.html?id=000334547 
  5. 全国被害者支援ネットワーク「被害者支援の歴史とこれから」https://www.nnvs.org/higai/history/page-298/ 
  6. 産経新聞「「被害者の生活楽に」犯罪被害者給付拡充 医療費支援、損害補償制度導入も」Yahoo!ニュース、2024年2月5日、https://news.yahoo.co.jp/articles/8467c56ba9a225ee3369ab7922421266e8b01b81?page=1 
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