Juergen StriewskiによるPixabayからの画像
プルデンシャル生命保険株式会社で長年にわたり続いてきた組織的不正は、個々人の倫理逸脱として片づけられるものではない。1991年から2025年にかけて明らかになった一連の事案1は、「顧客第一主義」という企業理念が、過剰な成果主義のもとで形骸化し、制度面・文化面の双方において倫理的統治が機能しなくなっていたことを示している。
要約
プルデンシャル生命で長年続いた大規模不正は、個人の倫理欠如ではなく、過剰な成果主義と営業裁量の肥大化によって、倫理的統治や監督機能が組織全体で機能不全に陥っていたことに起因する。売上至上主義の下でトップセールスが「聖域化」され、不正が黙認・温存された。
この問題は、義理や人情に依存して拡大してきた日本の生命保険営業文化や、社会的価値より組織内部のKPIを優先する日本型成果主義の歪みと深く結びついている。
問題は生命保険業界に限らず、日本の対面営業型ビジネス全般に共通する、消費者保護と倫理を侵食する構造的問題が提示した。
記事のポイント
- プルデンシャル生命の不正は、個人の逸脱ではなく、成果至上主義と営業裁量の肥大化により倫理統治が崩壊した組織的・構造的問題である。
- 日本の生命保険市場は、高い加入率の裏で「信頼」「義理人情」に依存した販売文化と情報非対称性を温存し、顧客の合理的判断を弱めてきた。
- 日本型成果主義は短期KPIや内部評価を過度に重視し、社会的責任や長期価値を切り捨てることで、不正を誘発する閉鎖的制度へと変質している。
Summary
The large-scale misconduct that persisted for years at Prudential Life Insurance stemmed not from individual ethical lapses, but from excessive performance-based systems and the bloated discretionary power of sales agents, which caused ethical governance and oversight functions to become dysfunctional across the entire organization. Under a sales-above-all mentality, top salespeople were “sanctified,” allowing misconduct to be tacitly accepted and preserved.
This problem is deeply intertwined with the distorted Japanese-style performance-based system, which prioritizes internal KPIs over social value, and the life insurance sales culture in Japan that has expanded by relying on obligations and personal relationships.
The issue presented a structural problem common to all face-to-face sales businesses in Japan, not limited to the life insurance industry, one that erodes consumer protection and ethics.
Translated at DeepL

同社は日本進出以降、「ライフプランナー」という制度を中核に据え2、営業職に大きな裁量と自主性を与えてきた。しかしこの仕組みは、売上実績をほぼ唯一の評価軸とする運用と結びつくことで、内部牽制や監督機能を弱体化させた。数字の達成が自己目的化し、倫理より成果が優先される企業文化が温存されたのである。
発覚した不正は、顧客に虚偽の投資話を持ちかけて資金を詐取する行為3や、架空の社員持株制度による配当偽装など多岐にわたる。107名の社員・元社員が関与した4という事実は、不正が一部の例外ではなく、長年にわたる全社的な監督不備の中で事実上黙認されてきたことを物語っている。
不正が見逃され続けた背景には、トップセールスを「聖域」とする企業文化があった5。成果を上げる者ほど監査や倫理監督の対象から外され、「結果さえ出せば許される」という歪んだ価値観が組織内部に定着していたのだ。
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加入率9割の功罪 日本の生命保険市場に残る構造的歪み
日本の生命保険市場は、世帯加入率が約9割に達するなど、国際的に見ても極めて高い普及水準にある6。しかし、この数値は国民の金融リテラシーの高さを直接示すものというより、日本固有の社会構造や文化的慣習のもとで形成されてきた制度的・歴史的帰結として理解すべき現象である。
