「ゼロコロナ」政策を緩和した中国で、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっている。中国政府は、今月7日から新型コロナの感染対策を緩和。
現地のメディアによると、このうち、北京の大学病院の一つでは、治療を受ける重症の患者が1日当たり500人を超えるなど、深刻な状態に。
医療体制が脆弱な内陸部でも深刻な状態に。安徽省にある病院の救急外来では、医療従事者全員の陽性が確認された。
しかし代わりの医師や看護師がいないために、39度の熱があっても解熱剤を飲んで勤務を続けているという1。
一方、ロイター通信が28日に配信した四川省成都にある火葬場の映像には、車の長い列が映っており、多くの人が死亡していることをうかがわせる。
感染による死者は27日の死者は、国内全体で3人にとどまっている2。ただ中国の感染症の専門家は、基礎疾患のある感染者が重症化し死亡した場合は、新型コロナによる死者に数えないという見解を示す。
中国は来年1月下旬の春節(旧正月)をむかえる。政府は27日、来年1月8日からの対策のさらなる緩和を受け、交通機関などの乗客に対し、PCR検査の陰性証明は求めないとした。
そのため、今後も全国的な感染の拡大が危惧される。
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若者の反発恐れ、方針転換
中国政府があれほど「ゼロコロナ政策」に固執してきたのにもかかわらず、ここにきて規制を”緩和”するという施策に出た背景には、中国という国家体制そのものが、さまざまな面において”揺るがしかねない”事態に陥ったためだ。
共産党の関係筋は、共同通信の取材に対し、
「従来の政策を続けるならば、北京や上海といった大都市は機能を停止しなければならない。経済は崩壊だ」
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と解説。さらに移動禁止など厳格な規制に反発する若者たちの抗議デモが、”反体制運動”に発展するのを警戒したものでもあった。
「安定と安全」を強調する習近平政権にとって、最大の脅威はアメリカや台湾ではない。中国の将来を担う18歳から29歳までの「Z世代」の反乱だ。
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コロナ禍が収まらない中、中国では、生産や物流に大きな悪影響が及び主要都市の今年7月の失業率は6.0%。このうち16歳から24歳までの若年層の失業率が19.9%と過去最高を記録した5。
死者149万人予測 著名人の「病死」相次ぐ
厳しい行動制限を伴う新型コロナ対策が緩和されたことで、中国では今後、新型コロナ関連の死者が約6か月間で約149万人に達する可能性があるとする研究論文を、マカオ大学と米ハーバード大の研究者が27日までに公表。
査読前の論文を扱う医学関連サイトに、22日付で掲載。中国政府がワクチン接種や医療資源の準備が整っていないまま、緩和政策を見切り発車的の進めたのが原因だとも。
中国政府の公式なデータによると、新型コロナによる死者数は大きく増えていない。7日に大幅な緩和をして以降、死者の数は、18日まではゼロ、19日に2人、20日には5人が死亡したと発表があっただけ6。
しかし、中国国外のメディアは、医療崩壊や10日待ちとなった火葬場の現状などを、刻々と伝えている。
米CNNの記者が現地を訪れたところ、火葬場は駐車場にすら入れない車の入場待ちで長蛇の列となり、黄色い遺体袋が保管場所に山積みになっているという。
またCNNの取材に対し、友人の遺体が病院の床の放置されたままであったと証言。
中国では、ここのところ著名人の「病死」が相次いでいる。中国政府は、新型コロナ関連死の認定基準を極端に高く設定していると批判されているが、しかし実際には有名人の死は隠せない。
市民生活に影響 今後、世界に波及も
感染の拡大に伴い、市民生活にも大きな影響を与えている。上海では、宅配サービスの配達員が不足、宅配に大きな影響が出ている。
発熱した患者が押し寄せる病院は逼迫、市販の解熱剤や風邪薬を買い求める人が薬局に列をなす。北京のある企業では、90%以上が感染したとも7。そのために、どこも深刻な人手付不足に陥った。
北京のある病院では、スタッフの8割が感染。しかし感染しても勤務を続けなければならず、患者が「明日亡くなる」ほどでなければ、手術をキャンセルしているという8。
そのため、人口が3000万人以上を超える重慶市や、浙江省では、コロナの陽性判定が出ても症状が軽ければ出勤できるようになった。
中国の感染者拡大は、世界に波及。28日のアメリカの株式市場では米国上場の中国株が軒並み、下落9。中国本土での感染拡大と、それによる経済への影響が懸念される。
中国は世界のサプライチェーン(供給網)における重要な拠点であると同時に、多くの消費財企業にとって重要な場所。生産と消費需要への打撃がさらに深刻化すれば、国境を越えて影響が広がるだろう。
- NHK NEWS WEB「中国 新型コロナ 北京や内陸部で重症患者増 医療ひっ迫深刻に」2022年12月29日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221229/k10013937601000.html
- NHK NEWS WEB、2022年12月29日
- 北京、東京共同、西日本新聞「感染爆発構わず幕引き」2022年12月28日付朝刊
- 岡田充「中国はなぜゼロコロナ政策を「大転換」したのか。習近平政権を揺るがす「Z世代の反乱」その実態」BUSINESS INSIDER、2022年12月26日、https://www.businessinsider.jp/amp/post-263760
- 三浦 有史「中国の若年失業率の高止まりは何を意味するか」日本総研、2022年9月29日、https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=103606
- 青葉 やまと「「公式にはコロナ死者はゼロ」なのに火葬場は10日待ち…習近平のウソに翻弄される中国の悲劇」Yahooニュース、PRESIDENT Online、2022年12月29日、https://news.yahoo.co.jp/articles/699b47106f4f09238afde62f09f070e1125ad591?page=1
- https://www.20minutes.fr/monde/4014775-20221214-covid-19-chine-cas-explosent-desormais-impossible-denombrer
- https://www.theguardian.com/world/2022/dec/15/chinese-doctors-and-nurses-reportedly-told-to-work-while-infected-as-covid-surges
- Matt Turner「米上場の中国株急落、コロナ感染拡大懸念-オフショア人民元も安い」Bloomberg、2022年12月29日