トランプ前大統領、起訴 疑惑、半世紀 問題の行為 キャッチ・アンド・キル 

北アメリカ
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Pete LinforthによるPixabayからの画像

 アメリカ東部ニューヨーク州の大陪審に起訴されたトランプ前大統領(76)は4日午後(日本時間5日未明)、ニューヨーク市マンハッタンの裁判所で罪状認否に臨み、全面的に無罪を主張した。

 これにより、米国大統領経験者が被告人となる、初の刑事手続きが本格化する。

  州検察は、

 「大統領選をゆがめた」

1

 と指摘。トランプ氏は検察に出頭後、拘束下に置かれ、罪状認否を経て約2時間で保釈された。

  トランプ氏は、不倫関係にあったと主張するポルノ女優ストーミー・ダニエルズさんに、当時の顧問弁護士を通じ口止め料13ドル(約1700万円)を支払い、顧問弁護士に分割で弁財する過程で、計34件の業務記録を改ざんしたとされる1 (2)。

  トランプ氏は罪状認否後に南部フロリダ州の私邸に戻って演説。2024年大統領選に出馬表明している自身の起訴は、

 「選挙介入だ」

1 

 と非難した。

  米メディアによると、業務記録の改ざんは単独では軽い犯罪とされるが、しかし別の犯罪を隠すなどの意図がある場合は、最高刑が禁錮4年の「重罪」に分類されるという。

  州検察は、選挙関連法などの違反を隠す目的があったという位置付けであるが、具体的な内容については言及していない。

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半世紀にわたる疑惑 ついに

 トランプ前大統領をめぐっては、「不動産王」への道を歩み出した1970年代から数々の疑惑が噴出。しかしながら、スキャンダルのたびに徹底抗戦し、半世紀にわたり打撃を回避してきた。だが今回、初めて起訴されることに。

  米メディアによると、トランプ氏が初めて法的な責任を追及されたのは、20代後半であった1973年。父親と経営する不動産会社が管理していた集合住宅をめぐり、黒人やヒスパニックの入居希望者らを意図的に排除したとして、司法省から入居差別を禁止した連邦法違反の疑いで訴えられた。

  80年代には、ニューヨーク州中心部の5番街にある「トランプタワー」の高級マンションについてのマフィア関係者らとの不透明な取引を当局が捜査。90年~2010年代には、自身が経営するカジノがマネーロンダリング(資金洗浄)などの疑いで調査を受けた。

  2010年代にも、不動産セミナーの「トランプ大学」の運営を問題視され、当局に訴えられる。

  1973年の件では、名誉棄損を主張し、逆に政府を提訴。2年間にわたり争った末、法令違反を認めないまま和解に持ち込んだ。この経験から、

 「攻撃されたら、圧倒的な力で反撃する」

2

 すべを学んだという。

問題の行為 キャッチ・アンド・キル

  検察がトランプ前大統領の罪状認否後に公表した訴状や関連資料では、トランプ氏の不倫や婚外子の疑惑を封じるため、口止め料や出版社自身が握りつぶすなど、さまざまな工作を駆使していたことがわかる。

  起訴内容の背景となる「事実説明書」によると、トランプ氏は2016年の大統領選に出馬表明した直後の15年8月、トランプタワーで当時の顧問弁護士とタブロイド紙などを発行していた出版社経営者と会談。

  選挙戦を有利に進めるため、自身に不利な情報を事前に察知して封じ込めることで合意していた。出版社が記事化の権利を購入して握りつぶす、

 「キャッチ・アンド・キル」
 

という手法が使われたという。

  その後、聴聞を知るとされたトランプタワーの元ドアマンに3万ドル、不倫疑惑のあった元モデルに15万ドル、同様に元ポルノ女優に13万ドルが支払われた。起訴の対象となったのは、そのうちのポルノ女優のケースだとみられる。

  口止め料は、顧問弁護士が立て替えたあと、トランプ氏が実質的に所有する企業を通じて清算。トランプ氏側は別の案件や所得税で差し引かれる分なども加算し、「法的サービス料」などと偽って分割で支払ったという3

  起訴状では、一連の支払いに絡む業務記録の虚偽記載は34件に上ったとする。

 暗黙の了解 公職からの引退

  アメリカではこれまで大統領経験者の起訴はなかった。

  その理由について、かつてクリントン元大統領による元ホワイトハウス実習生モニカ・ルインスキー氏との不倫もみ消し疑惑について捜査を率いたスター特別検察官のもとで上級顧問として働いた経験をもつポール・ローゼンツワイグ氏は朝日新聞の取材に対し、

 「最も明白な理由は、過去の大統領のほとんどが、起訴されるようなことをしていないためです。もう一つの理由は、間違ったことをした大統領たちは、交換条件に合意したことでしょう。暗黙の了解として、刑事責任を問われない代わりに、政界からの引退に合意してきたにです」

4

 とする。一方、アメリカでは現職の大統領は起訴されないとする。

 「司法省は、現職大統領を起訴しないと明言している。これは、司法省の法律顧問室の公式な意見として記されています」

5

 という。

  ただ、ウォール・ストリート・ジャーナルは、大統領経験者に対する刑事訴追は、

 「パンドラの箱を開けた」

2

 と今後の行方を懸念する声も上がる。

  1. ニューヨーク・共同「トランプ氏 全面無罪主張」西日本新聞、2023年4月6日付朝刊、1項 
  2. ワシントン・共同「半世紀 疑惑に徹底抗戦」西日本新聞、2023年4月6日付朝刊、3項 
  3. 吉田通夫「大統領選前に聴聞隠し」東京新聞、2023年4月6日付朝刊、4項 
  4. 高野遼「異例の前大統領立件 背景は」朝日新聞、2023年4月6日付朝刊、11項 
  5. 高野遼、2023年4月6日 
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