トランプ前大統領、再選の可能性高まる 「もしトラ」 「MAGA(マガ)」 バイデン氏の不人気ぶりも

北アメリカ
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Wenhan ChengによるPixabayからの画像

 トランプ前大統領の、2024年米大統領選挙における勝利(再選)が現実味を帯びきた。

 11月の大統領選に向けた野党共和党指名候補争いの第2戦であるニューハンプシャー州予備選が23日に行われ、米主要メディアは、トランプ氏(77)がヘンリー元国連大使(52)に勝利したと報道。

 これにより、トランプは初戦の中西部アイオワ州に続き連勝、指名獲得に大きく前進する。

 現職候補を除き、アイオワ、ニューハンプシャーの両州で連勝した共和党の候補者は初めて。

 だが、AP通信の集計によると、開票率91%時点の得票率は、トランプ氏が54.6%、ヘイリー氏が43.1%と、約40%開いた事前の世論調査からは差は縮まる。

 ニューハンプシャー州の予備選では、党員ではなくても事前に共和党か民主党かを選んで投票することが可能であり、多くの無党派層がヘイリー氏に投票したものとみられる。

 ヘイリー氏は同ニューハンプシャー州のスヌス知事の支援を受け、終盤で追い込みを見せたものの、”反トランプ”の票をまとめきれなかった。

  ヘイリー氏は今後、自身が知事を務めた南部サウスカロライナ州の予備選での巻き返しを狙うものの、トランプ氏からは大きく遅れを取っている。

  多くの州で、予備選・党員集会が実施される前半戦のヤマ場であるスーパーチューズデーの3月5日を前に撤退する可能性も。

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もしトラ


 15年前、「もしも高校野球の女子マネージャーがドラッガーの『マネジメント』を読んだら」という小説がベストセラーになり、「もしドラ」と略され、流行語となった。

 しかし現在、メディアでは「もしドラ」ではなく、「もしトラ」という言葉がよく使われるように。

  「もしもトランプになったら…」というフレーズは、11月の大統領選でトランプ氏が勝った場合のリスクを心配していることを表す。

  なぜこれほどトランプは強いのか。アイオワ州で長年共和党の下院議員を務めたウォルター・コンロンは、TBSの取材に対し、

「昔は金持ちは共和党に投票し、中間層は民主党に投票し、貧困層は選挙に行かないもんだった。(中略)これまで10年連続でトランプ支持者以外の共和党員が支部などの運営をしていたが、直近の執行部の顔ぶれは大半が親トランプ派に取って代わった」

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と語る。あるいはクレアモント・マッケンナ大学のジョン・ピットニー教授は、

「(中略~かつては富裕層が共和党を支持していたが)最近は主に大学教育を受けていない白人が支持する政党になった。大学を出ていない白人は非常に強くトランプを支持する」

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とした。

MAGA(マガ)

  MAGA(マガ)という言葉も注目を集めている。「Make America Great Again」の略であり、トランプ氏の2016年の大統領選挙キャンペーン中に広く使われた。

 アメリカの選挙で不正が起こる確率は、人が雷に打たれる確率をも大幅に低い3。ところが、共和党支持者の6割以上が、いまだバイデン大統領は2020年大統領選で不正に当選したと主張。

 そして今やその不正選挙の陰謀論がトランプ前大統領を支持する「MAGA共和党員」の原動力に。

 本来、共和党は過去何十年もの間、とくに州レベルでのウォール街や企業の利益団体から選挙資金を得ている金融族と、地元のカントリークラブで党内政治を行うような昔ながらの主流派との対立の場であった。

 しかし、それが変わったのは2008年。

 組織化された草の根保守の過激なティーパーティーの台頭をきっかけに共和党の右傾化が進み、州レベルの共和党の伝統的な中道派の威厳を剥ぎ取る保守派の活動が活発化する。

 そして保守的でキリスト教福音派の色合いを含む、むしろ「トランプ教の信者」が集まる舞台が共和党と化した4

相次ぐ起訴、「一番の選挙運動」

 トランプ氏は、21年の議会襲撃事件など4つの罪で起訴され、11月5日に行われる本選では、大きなリスクを抱える。だが、トランプ氏の場合、その相次ぐ起訴が「一番の選挙運動」となっている状態だ。

 そもそも共和党が22年11月の中間選挙で敗退したとき、党内でトランプ氏の責任を追及する声が上がり、これで「トランプは終わった」との見方が支配的だった。

 しかし昨年3月、不倫関係の女性に支払った口止め料の不正会計処理をめぐり起訴された以降、状況は一変。

「あなたたちのために起訴された」

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とトランプ氏は”政治的迫害”をアピールすることで支持を急速に回復。

 その後も、機密文書持ち出しや議会襲撃事件への関与で起訴されるたびにトランプ支持者はバイデン政権への怒りを強めていく。

 ただ、再選を目指すバイデン氏の”不人気ぶり”も目が余る。反トランプ派が別の候補を望む最大の理由は、

「トランプ氏で本選を勝てるのか」

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という懸念であったが、2人の再選を想定した各種世論調査では、数ポイント差でトランプ氏への支持が上回る。このような状態が、

「トランプ氏こそがバイデン氏に勝てる唯一の候補」

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という状態を生み出しだ。

  1. TBS NEWS DIG「可能性高まる“もしトラ” 何故アメリカはトランプを選ぶのか?【報道1930】」Yahoo!ニュース、2024年1月24日、https://news.yahoo.co.jp/articles/207677e90d8297b209f707e18d2b170040e2a078?page=1
  2. TBS NEWS DIG、2024年1月24日
  3. 渡辺亮司「アメリカ揺るがす「MAGA共和党員」の新選挙戦略」東洋経済 ONLINE、2022年10月4日、https://toyokeizai.net/articles/-/623190
  4. ダラ・ロシュ「共和党メルトダウン──自己顕示欲しかない「トランプ教信者」が地方から全米を乗っ取る」ニューズウィーク日本版、2023年11月3日、https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/11/post-102972_1.php
  5. 金子渡「トランプ旋風、再び」西日本新聞、2024年1月17日付朝刊、3項
  6. 金子渡、2024年1月17日
  7. 金子渡、2024年1月17日
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