Maiia YeromenkoによるPixabayからの画像
21日、岸田文雄首相は、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を電撃訪問した。ゼレンスキー大統領と会談し、連帯と揺るぎない支援を直接伝える。
首相が議長を務めるG7サミット(先進7カ国首脳会議)を前に対応を協議。日本の首相が紛争地に入るのは、極めて異例のこと。
2月、アメリカのバイデン大統領がウクライナを訪問したことで、日本以外のG7首脳はすでにキーウを訪れており、首相もサミット前の訪問を目指していた。また今年1月、首相はウクライナ政府からの訪問の招請を受け、
「諸般の状況を踏まえ検討したい」
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と語る。
しかしながら、安全の確保が課題となり調整は難航。外務省などの関係省庁が慎重に検討を重ねてきた。
安全確保を理由に事前公表はせず、訪問先のインドから帰国する予定を変更。ポーランド経由で航空機や鉄道を乗り継ぎウクライナ入りし、21日正午過ぎ(日本時間同日夜)、キーウの駅に到着した。
今回の訪問について、北海学園の若月秀和教授(戦後日本外交史)は、
「平和主義を掲げる日本は戦後、紛争当事国の一方に肩入れすることに慎重だった。その意味で岸田文雄首相のウクライナ訪問は、従来の外交姿勢を大きく転換するものだ」
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とする。
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この1年、水面下で何度も訪問探る
岸田首相は、水面下で何度もキーウへの訪問を模索してきた。
「なんで総理執務室で話した内容がすぐに外に漏れるんだ!」
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2022年12月、首相官邸内で岸田首相はこう、怒りをあらわに。首相の「年末キーウ訪問」を具体的に検討する極秘の打ち合わせの一部が、外部に漏れた。
実は、昨年の6月にも訪問の可能性があった。2022年4月、イギリスのジョンソン首相(当時)がキーウを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と会談。追加の軍事支援を約束し、その行動力が世界から称賛される。
「『外交の岸田』をアピールし、日本として世界に連帯を表明するため、キーウを訪問できないか」
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昨夏の参議院選挙も意識しながら、そう首相は模索する。G7サミットのためヨーロッパを訪れる予定だったため、そのタイミングなら行ける可能性がある。
訪問のチャンスをうかがう中、昨年の6月下旬までにフランス、ドイツ、イタリア3か国の首脳がキーウ訪問を計画しているという情報がもたらされた。
「3か国の首脳と一緒に訪問するという案もあるのではないか」
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しかし、ゴーサインを出すことはできなかった。
中国 習近平国家主席 ロシアを訪問
中国とロシア両政府は、17日、中国の習近平国家主席が20日から22日、モスクワを訪問し、ロシアのプーチン大統領と会談すると発表した。ロシア政府は、両首脳が、
「包括的なパートナーシップと戦略的協力」
を話し合うと説明する。
昨年2月にロシアのウクライナ侵攻が始まって以降、習主席がロシアを訪問するのは初めて。20日にプーチン大統領と昼食を共にするほか、21日には首脳会談をする予定が組まれた。
BBCは、両首脳は食事を共にする3月20日は、両国がともに反対したアメリカのイラク侵攻は始まって20年目にあたり、これが全くの偶然ではないともする5。
中国の外交部の報道官は、中国はウクライナ戦争について、
「客観的で公平な立場」
を維持すると説明。
さらに
「和平協議推進へ建設的な役割を果たす」
つもりだと述べた。
中国は今月、すでにサウジアラビアとイランとの外交関係の正常化の仲介役を果たし、外交成果を上げている。
プーチン大統領 ベラルーシに戦術核を配備
プーチン大統領はロシアの隣国であり、かつ同盟関係にあるベラルーシへの戦術核兵器の配備を決定、さらに、この行為は核拡散防止条約に違反しないとした。
ウクライナ国家安全保障・国防会議のオレクシー・ダニロフ書記は26日、ロシアがベラルーシを
「核の人質」
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にしていると非難した。
戦術核の定義はあいまいなものだ。学界や核軍縮交渉担当者は何年もかけて、戦術核兵器の定義方法を議論してきた。
一般的には、アメリカやロシアの大都市を壊滅させるような目的でなく、戦場で軍事的な優位を得るために使用される核兵器を指す7。
ただ、ロシアの正確な戦術核弾頭保有数は、ほとんど知られていない。しかし、アメリカとNATO諸国の合計をはるかに上回っているとみられる8。
アメリカが見積もるロシアの保有数は約2000発で、米国の10倍以上に達するという。
これらの戦術核弾頭はさまざまなミサイルや魚雷、爆弾などの陸海空兵器に搭載して使われる。
ベラルーシはロシアと同盟関係にあり、ロシアにウクライナ侵略の軍事拠点を提供している。
- キーウ=共同「首相、キーウ電撃訪問」西日本新聞、3月22日付朝刊、1項
- キーウ=共同、3月22日
- 家喜誠也・高橋太一「「これは命に関わる話だ」 岸田首相 キーウ電撃訪問は」NHK 政治マガジン、2023年3月21日、https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/95741.html
- 家喜誠也・高橋太一、2023年3月21日
- スティーヴ・ローゼンバーグ(モスクワ)、スティーヴン・マクドネル(北京)、ジェイムズ・ランデイル(キーウ)「中国・習主席がモスクワ訪問へ 中国の意図は」BBC NEWS JAPAN、2023年3月18日、https://www.bbc.com/japanese/64998175
- BBC NEWS JAPAN「ロシアのベラルーシへの戦術核配備計画、「危険で無責任」とNATOが非難」Yahoo!ニュース、2023年3月27日、https://news.yahoo.co.jp/articles/57468effa3fadc94de14dac90e0f27ed7e38b867
- REUTERS「情報BOX:ロシアによるベラルーシへの戦術核配備、実態と問題点」2023年3月28日、https://jp.reuters.com/article/russia-belarus-nuke-idJPKBN2VU05L
- REUTERS、2023年3月28日