法律の名称は、新約聖書の「善きサマリア人のたとえ」に由来する。このたとえ話では、強盗に襲われた傷病者を通りがかったサマリア人が助けたことが描かれており、民族や身分を超えて困っている人を助ける重要性が説かれている。
「善きサマリア人の法」は、1959年にカリフォルニア州で初めて導入され、その後1987年までに全米50州とコロンビア特別区に広がった。この法律には主に2つのタイプがある。多くの州で採用されている「支援型」は、救助者の法的責任を免除し、自発的な救命措置を促すもの。一方、「制裁型」は、その場にいる人に救助義務を課し、救助を怠った場合に罰則を科す。
国際的には、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどで類似の法律が施行されており、地域によって救助義務の有無や免責の範囲が異なる1。
現行法で十分か 善きサマリア人の法をめぐる日本の現状
「善きサマリア人の法」は、日本では導入されていない。その理由の一つは、現行法制度での対応の可能性にある。日本の民法第698条には「緊急事務管理」という規定があり、これが善きサマリア人の法と類似の機能を果たすと考えられている2。
1具体的には、急病人や負傷者を救おうと、善意により良識的かつ誠実な行動を取った場合、失敗してもその責任を問われない(免責する)という趣旨が含まれている。 2日本の民法第698条には「緊急事務管理」という規定があり、これが善きサマリア人の法と類似の機能を果たすと考えられている。 3この制度は、日本医師会の提案を受けて構築され、国内の航空会社として初めて導入された試みである。 4この制度の目的は、機内で急病人が発生した際、事前に登録された医師に客室乗務員が直接協力を要請し、迅速な応急措置を行えるようにすることだ。
マウスオーバーか長押しで説明を表示。
