急拡大する新型コロナウイルス「オミクロン」株 いま分かっていること 懸念される社会機能の維持

医療
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Alexandra_KochによるPixabayからの画像

 新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」のまん延により、日本国内では第6波の様相を呈してきた。

 政府は1月5日、感染が急拡大する沖縄県に「まん延防止等重点措置」の適用を決定する方針で調整に入る。広島県、山口県についても要請があれば追加を検討するとした。期間は9日〜31日とする。

 国内の新規感染者は5日時点で、新たに2638人が確認され、前日から2倍超となった。2000人を上回ったのは、昨年2021年9月26日以来のこと。

 感染状況は、年が明けてから一気に拡大する。5日の新規感染者は、沖縄県で623人、東京都で390人、大阪府で244人、広島県は138人、山口県は104人。

 感染力が強いとされるオミクロン株も石川県、山梨県、愛媛県、大分県などで確認されており、感染の急拡大に伴う医療体制への影響が懸念される。

 沖縄県では、昨年12月から米軍基地内で陽性者が増え、県は米軍由来のオミクロン株が広がり、感染が急増したとする。

 山口県は、米軍岩国基地で感染が拡大、広島県は山口県の隣に位置する。

 沖縄県の玉城デニー知事は、まん延防止等重点措置の適用をめぐり、「それだけでは収まらない」と県庁で記者団に強調、すでに緊急事態宣言に相当する状況との認識を示した。

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オミクロン株とは

 新型コロナウイルスのオミクロン株(SARSコロナウイルス2-オミクロン株)とは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こすSARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)の変異株のひとつ。

 最初の症例は、2021年11月24日に南アフリカから世界保健機関(WHO)に初めて報告。2日後の26日には、WHOにより「懸念される変異株」に指定され、ギリシャ文字の15番目の文字オミクロンをもとに命名された。

 オミクロン株は多くの変異を持ち、またいくつかの変異は、これまでとは違うまったく新しいものであることが分かっている。

 これら、いくつかの変異は、発見時にほとんどのワクチンが標的に使用していたスパイクタンパク質に影響を与えるものだ。

 この変異により、伝染性、免疫回避、ワクチンへの耐性に関する懸念がなされている。結果として、短期間のうちに懸念される変異株に指定され、一部の国では感染の拡大を遅らせるために南アフリカへの渡航禁止令が発出された。

 しかしながら、全世界おいてオミクロン株の感染例が報告。また南アフリカ、英国のイングランド、米国ではすでにデルタ株からオミクロン株への急速な置き換わりが報告。


 さらに複数の国や地域では市中感染や集団内の多くの人が感染するクラスターの事例も報告され、さらなる感染拡大も懸念されている。

 ゲノム解析の質が十分でない国や地域においては探知されていない感染例が発生している場合もあり、現在において実際に感染が報告されていない国や地域よりも、さらに広い範囲で感染が拡大しているおそれもある。

ギリシャ文字

 オミクロン株のような、世界的に監視が必要とされる変異株には、ギリシャ文字を冠した呼称が使用される。

 ギリシャ文字は24文字からなり、オミクロン(o)は15番目。残りは9文字となった。初期に新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた当初は、WHOは変異株が初めて確認された国の名前を呼称にしていた。

 しかし2021年の5月末に、呼称となる国への差別につながる可能性があるとして、ギリシャ文字を使う方針に切り替えた。このことにより、英国株をアルファ(α)株、インド株をデルタ(δ)株などと言い換える。

 WHOは変異株のうち、感染力が強まったり、ワクチンの効果が下がったりする性質を持つとみられる変異株を「懸念される変異株(VOC)」と分類している。

 懸念される変異株は、アルファ(α)株、ベータ(β株)、ガンマ(γ)、そして一時世界的流行となったデルタ(δ)株の4株が指定されているが、今回、オミクロン株が加わった。

 オミクロン株は、初期に南アフリカ共和国のほか、イスラエル、ベルギー、ボツワナなどで確認された。

 ただ、ギリシャ文字のアルファベット順ならニュー(ν)やクサイ(ξ)であったが、両方とも飛ばされる。ニューとクサイが採用されなかった理由は明らかにされていない。

 また、懸念される変異株には至らないものの、ワクチンの効果などに影響を与える可能性がある変異株は、「注目すべき変異株(VOI)」として、引き続き動向を注視している。この注目すべき変異株には、南米で初めて確認されたラムダ(λ)株、ミュー(μ)の2つが位置づけられる。

 ギリシャ文字は、数学や物理学、天文学といった幅広い学問で「記号」として用いられてきた。円周率のパイ(Π)や総和のシグマ(Σ)もギリシャ文字だ。

ウイルスは変異する

 ウイルスが増殖するときも、そして人間の体の細胞が分裂するときも、遺伝子が設計図のような役割を果たし、同じウイルスや細胞がつくられる。

 しかしながら、ウイルスが増殖するたびに、また人間の体も細胞が分裂するたびに、少しずつ間違いを起こしていく。これが遺伝子の変異だ。

 ほとんどの変異はウイルスや細胞の機能に影響を及ぼさない。ただ、ごくまれに機能が変わることがある。人間の体でこれが起きる典型的な例が癌だ。ウイルスも一般的に増殖と流行を繰り返す中で少しずつ変異していく。

 新型コロナウイルスも、およそ2週間に1か所程度の速度で何らかの変異をしていると考えられている。

 より具体的に説明すると、まずウイルスの表面にある、とげ状の「スパイクたんぱく質」と呼ばれるものが、人間の細胞表面で受け手となる受容体たんぱく質に結合して細胞内へ侵入する。

 次に、細胞内では、RNAの情報に従って、ウイルスの素材となるたんぱく質を翻訳(合成)する。

 一方、RNAは大量に複製され、たんぱく質とともに組み立て・成熟が進み子孫となるウイルスができ、それらが細胞外へ放出されていく。

 この過程で、RNA複製の際に一定の確率でミスが生じ、RNAを構成する塩基の配列が変わることがある。この現象が「変異」と呼ばれる。

 この変異により危惧されることは次の3点だ。第一に、従来型の株と比べ感染力が増加する。第二に、入院のリスクや、入院時の死亡リスクを高めるおそれがある。最後に、ワクチンの効果を弱める可能性がある。

 感染力の強い変異株が国内に入ってくると、次第にその変異株に感染する患者が増え、最終的にはほとんどが置き換わってしまうという。

オミクロン株について分かっていること

 オミクロン株は、これまで報告されてきたデルタ株などの変異株よりも、感染力がつよいことは「間違いない」という評価になってきている。

 実際、デルタ株がほぼすべてを占めていた欧米諸国においても、1カ月ほどでオミクロン株に急速に置き換わってきた。

 具体的には、英国のイングランドのほとんどの地域で検出される新型コロナウイルスの95%ほどがオミクロン株であるという。

 一方で、感染してから発症するまでの「潜伏期間」については、日本国内の積極的疫学調査の暫定的なデータでは3日前後、韓国の保健施設での感染例の解析でも3.6日となっており、デルタ株よりも潜伏期間が短いとされる。

 ただ、オミクロン株は感染しても重症化する割合は低いという報告が相次いでいる。WHOの責任者は1月4日、オミクロン株の症状について、鼻やのどといった上気道の炎症を引き起こすものの、他の変異株と比べて肺までウイルスが達し、重症化するリスクは低いという見解を示す。

 一方で、「証明するためにはさらなる研究が必要だ」という慎重な姿勢を示す。データ的には、英国の保健当局によると、12月30日までにイングランドでオミクロン株への感染が確認されたのは、21万2000人あまりで、入院は981人、そして75人が亡くなったという。

 より具体的には、オミクロン株に感染して入院にいたるリスクは、デルタ株と比べ3分の1になっているとする。

 また、2回目のワクチン接種を終えてから14日以上の人では、ワクチンを接種していない人と比べ、入院するケースは65%ほど低く、3回目の追加接種を受けてから14日以上の人では81%低くなっていた。

 しかしながら英保健当局は、オミクロン株は感染のスピードの速さや免疫から逃れる性質があるため、重症化リスクが低いからといって、「必ずしも医療機関への負荷が減ることは意味しない」と強調。

 また感染者が増加してから、重症化する人や亡くなる人が増加するまで、一定の時間がかかるため、今後の情報にも注意が必要だ。

 WHOが12月28日に出した週刊報告でも、「英国や南アフリカ、それにデンマークからの初期のデータでは、オミクロン株では入院に至リスクがデルタ株に比べて低いとみられるものの、酸素吸入や人工呼吸器の使用、死亡といった重症度をみるデータがさらに必要だ」との見解を示す。

今後の注意点 懸念される社会機能の維持

 オミクロン株による感染の急拡大は、今後、医療現場などに深刻な人手不足をもたらす事態が危惧されている。

 1月7日に政府がまん延防止等重点措置の適用を決めた沖縄県では、感染するなどした医療スタッフの欠勤が相次ぎ、診療にも影響を及ぼし始めている。

 専門家は、「社会機能の維持に制限がかかる前に対策を取るべきだ」と警鐘を鳴らし、各施設や企業の事業継続計画(BCP)の早急な見直しを提言した。

 厚生労働省に対しコロナ対策を助言する専門家組織は6日、今後の見通しに関する文章で、「各施設のBCPの早急な点検が必要」と記載。

 尾身茂氏ら専門家有志も6日、「このまま感染がエッセンシャルワーカー(医療従事者を含む)やその家族に広がると出勤ができない人が急激に増える」と政府に提言。

 また、

・発症後10日間経過したら退院可能とすること

・欠勤者の増加に伴うBCPを用いた業務の優先付け

を対策として訴えた。

 ただ、政府が緊急事態の発令や重点措置の適用を判断するときに用いる指標には、病床の使用率に関する項目はあるものの、社会インフラの維持といった側面は想定されていない。

 尾身氏は7日、現在の指標でもオミクロン株の感染の拡大阻止に対応できるとしたうえで、「各企業や機関にはBCPを見直してもらいたい。職場復帰の基準を検討するのは、われわれ専門家の役割だ」と述べた。

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