この慣習は宗教的慣習というよりも、「一斉に休み、一斉に働く」社会的リズムを生み出す近代的な管理装置として機能していく。祝日という制度は国民の生活時間を編成し、初詣もまた鉄道や都市化と結びついた信仰と経済の融合として1定着した。
一斉休暇の時間構造は戦後の労働政策にも引き継がれる。高度成長期以降、日本は長時間労働を常態化させ、1980年代には前川レポートなどを通じて「働きすぎ」への対応が課題となった2。しかし、1日の労働時間を削減できないという制約の下で選ばれたのは、働き方そのものの改革ではなく、祝日の増設という代替策だった。
結果、年末年始やゴールデンウイークといった一斉集中休暇は温存され、ここにきて現在経済活動の停滞やオーバーツーリズムへの対応といった副産物も生み出している。今後は「皆が同時に休む社会」から「個々が主体的に休める社会」への転換が求められるだろう。
1こうした慣習は、個々の家庭の自発的な文化というより、生活の規律と秩序を形成するために設計された社会的装置として機能してきた。 2一方で、大掃除は明治期以降はコレラなどの流行を受け、公衆衛生を重視する国家政策のもとで清掃が制度化され、国民生活に強く浸透していった。 3消防庁や消費者庁の統計によれば、事故の多くは脚立そのものの欠陥というよりも、「天板の上に立つ」「片手で作業する」といった不適切な使用方法に起因しているという。 4これは西洋化への対応であると同時に、国民生活の時間管理を制度化する試みもあった。 5結果、元日を中心とする三が日の休暇が定着し、国家・経済・生活文化が連動する年中行事が形成された。
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