日本の年末年始を問い直す 大掃除と三が日に刻まれた日本的慣習 なぜ日本人は一斉に休むのか 前川リポートと日本型休暇制度の副作用

文化
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 日本における年末年始の行事は、清掃や正月の祝い、家族の再会といった要素を通じて、「日本的情緒」や「古来から続く伝統」として語られてきた。しかし歴史的に検討すると、これらの慣習の多くが明治以降の国家改革の過程で再編され、制度として定着したものであることも明らかである。

要約

日本の年末年始の行事は、多くは明治以降に国家主導で再編・制度化された慣習である。とくに年末の大掃除も、近世の信仰的慣習に加え、コレラ流行を背景とした汚物掃除法などの公衆衛生政策によって「清潔は義務」という意識を社会に根付かせた。

一方で現代では、高齢化に伴う大掃除中の事故増加や、年末年始の一斉休暇による経済停滞といった問題が顕在化している。

「三が日」に象徴される一斉休暇は、改暦や戦後の労働政策、前川リポートに見られる年間労働時間削減の発想の中で温存されてきたが、今後は文化を尊重しつつ、個々が主体的に休める柔軟な仕組みへの転換も求められている。

記事のポイント

  • 年末年始の大掃除や三が日といった慣習は、古来の文化として語られがちだが、多くは明治以降に国家が衛生・勤労・時間管理を目的に制度化した「再編された伝統」である。
  • 大掃除は信仰行事に加え、公衆衛生政策(汚物掃除法など)によって国民の義務として定着し、その延長線上で現在も事故リスクや高齢者負担といった問題を生んでいる。
  • 一斉休暇も、前川リポートに象徴されるように「1日の労働時間を減らせない」制約下で年間労働時間を調整する政策選択の結果であり、現代では経済停滞や多様な働き方との齟齬が課題となっている。

Summary

Many of Japan’s year-end and New Year traditions were reorganized and institutionalized by the state after the Meiji period. The year-end cleaning ritual, in particular, took root in society as a “duty to cleanliness” through modern public health policies like sanitation laws—enacted against the backdrop of cholera epidemics—combined with pre-modern religious customs.

However, contemporary issues have emerged: accidents during cleaning have increased alongside an aging population, and the simultaneous year-end holidays cause economic stagnation.

The collective holiday symbolized by the “first three days of the new year” has been preserved through calendar reforms, postwar labor policies, and the concept of reducing annual working hours seen in the Maekawa Report. However, going forward, there is a growing need to transition to a flexible system that allows individuals to take time off proactively, while still respecting cultural traditions.

Translated with DeepL.com (free version)

 とりわけ明治政府は、衛生観念の普及や勤労倫理の定着を国家的課題と位置づけ、その一環として「年末の大掃除」や「年始の挨拶」を国民的行動として奨励した1。こうした慣習は、個々の家庭の自発的な文化というより、生活の規律と秩序を形成するために設計された社会的装置として機能してきた。

1こうした慣習は、個々の家庭の自発的な文化というより、生活の規律と秩序を形成するために設計された社会的装置として機能してきた。 2一方で、大掃除は明治期以降はコレラなどの流行を受け、公衆衛生を重視する国家政策のもとで清掃が制度化され、国民生活に強く浸透していった。 3消防庁や消費者庁の統計によれば、事故の多くは脚立そのものの欠陥というよりも、「天板の上に立つ」「片手で作業する」といった不適切な使用方法に起因しているという。 4これは西洋化への対応であると同時に、国民生活の時間管理を制度化する試みもあった。 5結果、元日を中心とする三が日の休暇が定着し、国家・経済・生活文化が連動する年中行事が形成された。 

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  1. 『日本の近代化と生活改善運動』内務省衛生局編、東京大学出版会 
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