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インドネシアのバリ島で開かれたG20サミット(20カ国・地域首脳会議)は16日、首脳宣言を採択し、閉幕。
宣言では、参加国の大半がウクライナにおける戦争を強く非難したと明記する一方、ロシアへの制裁などについても異論があったとも併記1。
結果、G7(先進7カ国)とロシア双方の主張も盛り込み、折り合いをつけた形となった。G20首脳会議が始まった2008年以降、初めて共同宣言が見送られる可能性もあったものの、しかしそれは回避される。
宣言では、
「核兵器の使用や、使用の脅しは許されない」。
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と明記
ロシアが今後、ウクライナ戦争の打開に向け、核兵器を使うとの見方を踏まえた内容だ。さらに、
「ウクライナでの戦争が世界経済に、さらなる悪影響を及ぼすことを目の当たりにした」
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ともした。
他方、G7が主導するロシア制裁には、
「他の見解や異なる評価もあった」
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とするロシアの立場に配慮した文言も明記。
今回の会議は、今年2月に始まったウクライナ戦争後、初めてとなるG20サミット。会合では世界の食料供給を不安定にしているロシアの侵攻に関し、応酬が続く。
ただ、G20はそもそも経済問題を協議する場。その点でいえば異例ともいえる展開であり、今後の国際協調も試される。
G20とは?
G20は「Group of Twenty」の略称。世界的に重要な経済や金融問題を協議する国際会議であり、そのメンバーは20カ国・地域に及ぶ。
メンバーは日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダのG7(Group of Seven)に加え、ロシア、中国、インド、韓国、インドネシア、オーストラリア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンにEU(欧州連合)が含まれる。
会議には首脳会議(G20サミット)と財務大臣・中央銀行総裁会議がある。
もともと、G5(Group of Five)というものがあった。
1970年代から80年代にかけ、世界経済や国際通貨に関わる重要な問題が生じた際、日本、アメリカ、イギリス、フランス、当時の西ドイツの西側先進5カ国は、随時、財務大臣と中央銀行総裁による非公式な会合を開催。
1985年には、「プラザ合意」と呼ばれるドル高の是正で実績を上げ、翌1986年にはカナダ、イタリアを加えたG7を加える。
その後、冷戦の終結やグローバル化にともなう新興国の台頭とともに1999年に財務大臣・中央銀行総裁会議に初めて20カ国・地域が参加。
そして2008年のリーマン・ショック後に当時のブッシュ米大統領の呼びかけにより初めて首脳によるG20 サミットが開かれた。
ウクライナ問題 南アフリカ、独自路線
ロシアによるウクライナ侵攻については、たとえば国連総会でもロシアを非難する内容の決議が繰り返し採択。
ただ、採決をめぐっては、とくにアフリカ諸国を中心に棄権に回る国も目立ち、G20の首脳会議を前に国際社会の分断も見られた。
採決では反対に加えて、G20のメンバーである中国やインド、さらにアフリカ諸国の多くは棄権。この中でも、アフリカで唯一のG20メンバーである南アフリカは、
「情勢を憂慮している」
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とする一方、
「建設的な結果をもたらさない」
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などとして棄権に回る。
専門家は、南アフリカはかつてアパルトヘイト(人種隔離政策)からの解放闘争で旧ソビエト時代からの歴史的なつながりとともに、国民に広がる反欧米感情が背景にあり、ロシア寄りの姿勢が取られたと分析4。
南アフリカの大学で政治学を教えるウィリアム・グメデ教授は、NHKの取材に対し、
「欧米との経済格差が続き、近年、アフリカでは貿易ルールなどをめぐり欧米批判が強まっていて、南アフリカでも一部の特に若い世代で反欧米感情が高まっている。
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ウクライナの問題を欧米とロシアの対立と一方的にみなして、ロシアを支持する傾向がある」
とした。
米中対立 新興国が協調促す
G20の中で15日から始まった討議は、エネルギーや食料危機への対応を中心に協議が進み、その原因を作ったロシアへと批判が向かう。そこに台湾問題などをめぐり対立が続く米中の思惑が絡む。
「閉鎖・排他のインナーサークルを作るべきではない」
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中国の習近平国家主席は、討議で中国との対立姿勢を崩さないアメリカを指し、”暗に”批判した。アメリカは、中国の貿易慣行や人権問題を繰り返し指摘した。
一方、新興国は協調路線を促す。双方の歩み寄りでカギを握ったのはインドだった。
「国連のような国際機関が失敗したと認めることをためらってはいけない」
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インドのモディ首相は15日の演説で、大国の利害対立で身動きがとれなくなった国連を例に挙げ、
「世界はG20により大きな期待を寄せている」
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と強調。
インドは伝統的にロシアを近いが、モディ氏は9月のプーチン大統領との会談で戦争の継続に難色を示していた。ロシアへの直接的な非難を避けつつも、対話への回帰を訴える姿勢が
「代表団の間で共鳴をもたらし、当事者間のギャップを埋めるのに役立った」(インド外務省高官)
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とも。
- 共同=西日本新聞「G20「ロの核使用許さず」2022年11月17日付朝刊
- 共同、2022年11月17日
- NHK NEWS WEB「G20首脳会議前に ウクライナ情勢めぐり国際社会の分断浮き彫り」2022年11月13日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221113/k10013889901000.html
- NHK NEWS WEB、2022年11月13日
- 高見浩輔、花田亮輔、地曳航也「G20協調、新興国が促す」日本経済新聞、2022年11月17日、https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66050320X11C22A1EA2000/