2024年米国大統領選、どうなる? 民主党・共和党の動き 第三極の動きはバイデン氏に不利に?

北アメリカ
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Gerd AltmannによるPixabayからの画像

  2024年に迫る米国大統領選挙へ向けての動きが活発化している。

 民主党からはジョー・バイデン大統領が4月25日に立候補を表明した。 一方、共和党からは、主要候補としてドナルド・トランプ前大統領やニッキー・ヘイリー元国連大使らが、3月までに立候補を表明。

 とくに共和党陣営の中では、トランプ氏が党の予備選についての世論調査で依然として首位をキープ。

 現時点では、2020年の前回大統領選と同じく、トランプVSバイデンの再選が最も有力とみられるものの、多くの有権者はそれを望んでいない。

 共和党予備選では、各州の大学などが実施して最新の世論調査によると、フロリダ州知事であるロン・デサンティス氏がトランプ氏についで2位につけている。

 ただ、トランプ氏への支持は2022年11月の中間選挙後に一時低下した。

 しかし今年3月、ニューヨーク州裁判所(マンハッタン大陪審)がトランプ氏を起訴したあと、共和党内ではトランプ氏への支持率が上昇する。4月にNBCニュースが実施した世論調査では、共和党支持者の68%が、

「トランプ氏の大統領選への立候補を阻止する政治的動機がある。同氏の代わりはいないので、支持しなければならない」

 と回答した1

 一方のバイデン氏は支持率が低迷状態。現在、80歳となるバイデン氏が大統領職を継続することに不安を持っている人も多く、ハーバード大学アメリカ政治研究センターとハリス・インサイト・アンド・アナリティクスが4月に実施した世論調査によると、バイデン氏が2024年大統領選挙で再選された場合、

 「(副大統領候補の)カマラ・ハリス氏がどこかの時点で後を継ぐことになると思う」

2 

 という回答が6割を超えた(63%)。これは、「バイデン大統領がもう1期務めることができる」(37%)を大きく上回る結果だ。

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民主党 不気味なケネディ氏

 一方、バイデン氏は2020年選挙においてトランプ氏に勝利したことや、2022年中間選挙で民主党が下院で多数を失うも、その数を最小限にとどめたこと、上院において民主党の多数派を維持したことは注目に値する。

  こうした結果を過小評価すべきではないという声も。 事実、エマーソン大学が、4月に実施した世論調査では、

「大統領選挙の民主党予備選で誰に投票するか」

 という問いの回答結果では、当時正式に立候補を表明した人の中で、バイデン氏への回答が70%と圧倒的だった。むしろバイデン氏にとって”不気味”なのはロバート・F・ケネディ・ジュニア氏(69)の存在だろう。

  ジョン・F・ケネディ元大統領のおいで、暗殺されたロバート・F・ケネディ元司法長官の息子のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏は、4月に民主党候補として出馬するための書類を提出した。

 ケネディ氏は環境問題を扱う弁護士として知られる。他方、反ワクチン運動を展開し、Instagramは2021年、ワクチンに関する偽情報を繰り返しシェアしたとして、ケネディ氏のアカウントを削除した3

 しかしながら、ケネディ氏はすでに米テック業界から熱烈な支持を受けており、今後、台風の目”となるかもしれない。

 2020年の選挙で実業家のアンドリュー・ヤンらを支持した元TwitterCEOのジャック・ドーシー氏は6月4日、ケネディ氏が「バイデンに勝つ」と宣言した動画をリツイートし、「彼なら勝てる」とコメント4

 またイーロン・マスク氏も6月5日にケネディ氏をホストにして、Twitter Spacesで2時間半のディスカッションを行った。

共和党 乱立状態でトランプ優位

 一方の共和党内は、10人もの候補者が乱立し、結果、“トランプ優位“の雰囲気を醸し出している。

  共和党では、トランプ氏のほか、フロリダ州のデサンティス知事、ペンス前副大統領のほか、ニュージャージー州のクリスティー前知事、ノースダコタ州のバーガム知事も出馬を表明する見通し5

  共和党内で候補者を1人に絞り込む予備選は、2024年初頭に始める。現時点での世論調査ではトランプ氏が党内において50%超の支持を得て先行しており、それにデサンティス氏は約20%の値で追う。ほかの候補者は、いずれも10%未満だ。

 ただ候補者が乱立すれば、より少ない得票で勝ち抜ける可能性が高まる。トランプ氏が初当選した2016年大統領選でも、10人以上が共和党から出馬しており、州によっては3割程度の得票でも勝利できた。

 そのため、一定の強固な支持層を持つトランプ氏にとっては有利な展開だ。

 指名争いをリードするトランプ氏に対し、ほかの政治家が調整して候補者の“一本化“へと向き合う機運は乏しい。トランプ氏は今年3月、大統領経験者として初めて起訴され、ほかにも様々な疑惑で刑事捜査の対象となっている。

 また76歳という高齢という年齢もあり、大統領職としてはふさわしくないという見方も共和党内では渦巻く。しかしながら“トランプ外し“をすると無党派層からの支持を得られず、民主党候補と対決する本選では不利だという見方もある6

 結果、抜群の知名度を誇るトランプ氏に対し、ほかの候補者は対抗軸を描けていない。

 そのトランプ氏は、膨らむ訴訟費用に考慮している状態だ。トランプ氏は、2024年の大統領選に向けた政治団体が弁護士費用をまかなっており、資金難に直面7

  刑事訴追のたびに大掛かりな宣伝をし、資金を集める手法にも陰りが見えており、大統領選に向けの課題が資金繰りとなっている。

第三極の動きはバイデン氏に不利に?

 しかしながら、来年の本選挙に向け第三極を目指す政治団体「ノーラベルズ(レッテルなし)」が候補者の擁立を目指す動きを見せている8

 前回同様、80歳である民主党現職のバイデン氏と77歳の共和党前職トランプ氏による対決が有力視されている現状に対し、党派を超えた多くの有権者が不満を持っていることの表れだ。

 ノーラベルズは2010年に設立された超党派による政治団体。与党対立が激しくなり、米政治の“分断“が激しくなる中、民主、共和党両党の穏健派による統一候補擁立を模索している。

 「バイデンVSトランプ」の対決については、両党の穏健派や無党派層は強い不満を持つ。米キニピアック大が7月19日に発表した調査によると、ほぼ半数(47%)が次期大統領選において第三極である第3政党の候補者へと投票を検討していると回答。

 その内訳は、無党派が6割以上、民主・共和党支持者の間でも約4割を超えた9

 しかしながら、第三極の動きに対し、与党である民主党はバイデン氏を支持しない党の支持者や無党派層の票が流れとし、懸念を強める。また、ノーラベルズにはトランプ派など共和党右派の資金も流れているとの指摘もあり、

「第3の候補を擁立する彼らの動きは、トランプ氏を有利にする」

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と危機感を募らせる。

 実際、政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が集計した各種世論調査の平均支持率では、バイデン氏44・2%、トランプ氏43・2%であるが、民主党の特別政治活動委員会(スーパーPAC)が実施した調査では第3政党から候補者が出た場合、トランプ氏40%、バイデン氏39%となり、トランプ氏が逆転するとの結果が出ている。

 ノーラベルズは予備選が集中する来年3月のスーパーチューズデー後の状況を見て、独自の候補者を擁立するか最終判断する方針だ。

  1. 松岡智恵子「共和党支持者の7割弱はトランプ氏起訴・捜査に政治的動機があるとみる、米世論調査」JETRO、2023年4月24日、https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/04/0122ea842fca83ab.html
  2. 松岡智恵子、2023年4月24日
  3. BBC NEWS JAPAN「ケネディ元大統領のおい、2024年米大統領選に立候補 民主党指名争い」2023年4月6日、https://www.bbc.com/japanese/65197850
  4. Sara Dorn「米大統領選における「JFKの甥」の存在感、テック界の大物らが支援」Forbes JAPAN、2023年6月9日、https://forbesjapan.com/articles/detail/63771
  5. 高野遼「共和党の候補10人乱立、トランプ氏有利の展開も 24年米大統領選」朝日新聞デジタル、2023年6月6日、https://www.asahi.com/articles/ASR664RCYR66UHBI00P.html
  6. 高野遼、2023年6月6日
  7. 吉田通夫「トランプ氏陣営が「資金難」に直面 訴追のたびにかさむ訴訟費用、一方で集金力には陰りが」東京新聞、2023年8月3日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/267653
  8. 金子渡「米大統領選で「第三極」の動き 超党派が候補者擁立検討」西日本新聞me、2023年7月28日、https://www.nishinippon.co.jp/sp/item/n/1111578/
  9. 金子渡、2023年7月28日
  10. 金子渡、2023年7月28日
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