チリで大規模な山火事 エルニーニョ現象と気候変動が被害を拡大させる 南半球、暑すぎる夏

中南米
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Gerd AltmannによるPixabayからの画像

チリ中部で発生した大規模な山火事は、5日までに123人の犠牲者を出すまでに。チリのボリッチ大統領はテレビ演説で国民に向け、「大変な悲劇」と表現し、5日から2日間の服喪期間を宣言、

「チリ全体が苦しみ、死者を悼んでいる。われわれは大変な悲劇に直面している」

1 

と述べる。

 山火事が大きかったのは、住宅が密集する斜面地域。さらに現地の研究者は、当時の気象条件が山火事を拡大させた可能性も指摘。まだ数百人が行方不明のままであり、被害は増える可能性も。

山火事の壊滅的な被害を受けた地域では、多くの遺体が見つかっている。火災は2月2日に急速に拡大し、観光客にも人気のあるビニャ・デル・マルとバルパライソ周辺で顕著に出た。

 これら両都市は、チリの首都サンティアゴの西に位置し、100万人以上が暮らす。

 南半球の夏に山火事が発生するのは一般的ではあるものの、チリでこのような大規模な犠牲者が出たのは、2010年の地震以来のことであり、現地では悲しみが広がっている。

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被害

 チリの当局によると、山火事は沿岸部を中心に発生。これまでに少なくとも130人以上の死亡が確認されている。

 とくに斜面に住宅が密集する地域で大きな被害が出ていて、このうち、中部ビニャ・デル・マルにある地区では、一帯が広く焼け焦げ、斜面に建てられたおよそ700軒の住宅のほとんどが被害をうけている。

 ロイター通信がビニャ・デル・マルで撮影したドローンの映像では、地域が焦土と化し、住宅の屋根が焼け落ち、道路には黒焦げになった車が散乱している様子が確認できたとのこと2

 当局は、最も大きな被害を受けた地域に午後9時からの外出禁止令を発令し、消防活動を支援するために軍隊を派遣した。

 4日になり、政府高官は、チリ国内で165件の火災が発生し、ビニャ・デル・マルとその周辺のキルプエだけで推定1万4000戸前後の住宅が被害を受けたことを明らかに。

 8日になり、131人の死亡が確認された。NHKの取材によれば、当局の幹部はこの時点で連絡がとれない人は10人余りになったとし、死者の数は今後、大幅には増えないとする見解を示す。

 中部に位置するビニャ・デル・マルでは、住宅700軒ほどの大部分が延焼。7日、焼け跡にはテントを張り、生活を続ける人が多く見られた3

原因

 サンティアゴ大学の地元研究者であるラウル・コルデロ博士は、NHKの取材に応じ、

「強い風と高い気温という条件がそろった場合、火災の進行を食い止める手段はない」

4

と述べ、当時の気象状況が被害を拡大させる要因であったことを指摘。

「主に人間の活動が気候に及ぼした影響で起きた典型的な現象だ」

5

と続ける。

 山火事の直接の原因は放火であるとみられる6が、今回の場合、高温、乾燥、強風などの要素が火災を拡大させる要因に。

 今年の1月、チリのサンティアゴでは気温36.7℃を記録。これは、112年間で3番目に高い気温だ。気温の上昇は、エルニーニョ現象と関連がある。

 エルニーニョ現象は2023年5月からスタート、12月から1月にかけて強まり、南米全体に熱波をもたらす。

 さらにいえば、地球温暖化の影響を受けて元々海水温が高かったことで、エルニーニョ現象がより極端になったとも7

 一方、米シンクタンク「世界資源研究所」(WRI)は近年、森林火災の被害が拡大しており、20年前に比べて約2倍の面積が焼失しているとの分析結果を発表。

 とくに2020〜2022年の3年間は年平均で831万ヘクタールの森林が焼失。2001〜2003年までの3年間は年平均が387万ヘクタールであり、増加は顕著だ。

エルニーニョ現象、気候変動で被害拡大か?

 現在、チリを含む南米地域はエルニーニョ現象による激しい熱波や気候変動の影響で山火事が発生しやすい状況にある。事実、現地では、赤色警報(最も危険が高いレベル)が発令され、夜間の外出禁止令なども実施される。

 エルニーニョ現象は通常2~7年ごとに起こり、9~12カ月続くことが一般的。この現象は中央太平洋と東部熱帯太平洋の海面水温上昇に関連しているものの、人間活動による気候変化と相まって大きな影響を及ぼすことが懸念されている8

 とくに2023年から24年の南半球の夏には、エルニーニョ現象と人為的な気候変動が重なり、長期間にわたる気温と海水温の上昇があった。その結果、熱波や干ばつなどの気象災害が多発し、山火事もその一環として発生した可能性が。

 現在、南米の多くの国、チリ、アルゼンチン、パラグアイ、コロンビアでは、観測所で記録された気温が過去最高を更新するほどの猛暑が続く9

 気候変動による山火事への対策としては、火災警報システムの強化などが効果的であるが、地球温暖化対策がますます重要となっていることは言うまでもない。

  1. REUTERS「チリ森林火災、123人死亡 2010年地震以降で最多」2024年2月6日、https://jp.reuters.com/economy/EEM3BW53MZILPLKSCSULTW4N44-2024-02-06/
  2. REUTERS、2024年2月6日
  3. NHK NEWS WEB「チリ山火事131人死亡 “死者数 今後大幅には増えない見通し”」2024年2月8日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240208/k10014351361000.html
  4. NHK NEWS WEB、2024年2月7日
  5. NHK NEWS WEB、2024年2月7日
  6. 橋本淳司「対岸の火事ではないチリの森林火災。世界で頻発する森林火災と地球温暖化の負の連鎖」Yahoo!ニュース、2024年2月6日、https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/91db4a3846f43c7fd566b1fde02ea8ef50e2ba8
  7. 橋本淳司、2024年2月6日
  8. 環境ビジネス「【南米】チリ山火事で100人以上死亡 エルニーニョ・気候変動の影響か」2024年2月9日、https://www.kankyo-business.jp/news/56ae1e54-0076-478c-9621-19f50d00e3ed
  9. 環境ビジネス、2024年2月9日
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