ワグネル創設者プリゴジン氏死去 暗殺か? 米メディア「公開処刑」 プリコジン氏とは 「プーチンの料理人」

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ar130405によるPixabayからの画像

 ロシア非常事態省は23日、小型ジェット機がモスクワ北西のトベリ州内で墜落し、乗客乗員10人全員が死亡したとみられると発表。

  航空当局は、6月に反乱を起こした民間軍事会社ワグネルの創設者エブゲニー・プリゴジン氏(62)ら幹部の名前が、搭乗名簿にあったと明らかに。

  一方、ワグネルの関係者が管理しているとみられる通信アプリ「テレグラム」の「プリゴジン2023」には、プリゴジン氏が同機に搭乗しており、遺体が確認されたと投稿された。投稿には、プリゴジン氏が、

「ロシアの裏切り者による行為の犠牲になった」

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との記載があり、情報機関の関与が示唆されていた。

 プリゴジン氏らが死亡したとみられることで、ロシアの多額の国家予算が配分され、正規軍並みの兵力を保持していたワグネルの弱体化が決定的に。

  また、プリゴジン氏が高く評価していたスロビキン航空宇宙総司令官も解任され2、ロシア軍内の「親ワグネル派」が一層されたことになる。

 ロシアのプーチン大統領は24日、プリゴジン氏について、

「家族に哀悼の意を表したい」

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と述べ、死亡したとの認識を示す。

 バイデン米大統領は23日、滞在先に米西部カリフォルニア州で、記者団に対し、

「実際に何が起きたのかは分からないが、驚いてはいない」

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と述べる一方、プーチン大統領の関与については、十分な情報がないとしたうえで、

「ロシアでプーチン氏が背後のいないことはあまりない」

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と語った。

 23日は、第二次世界大戦でソ連軍が、ナチス・ドイツの戦車群を押し返し、勝利への転換点となった「クルスクの戦い」80周年の記念式典が開かれていた。

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「公開処刑」

 プリゴジン氏を乗せた自家用小型ジェット機は、23日午後6時11分(日本時間24日午前0時11分)、首都モスクワ北西の上空8.5キロを飛行中、突然、レーダーから消えた6

 インターネット上に投稿された動画によると、航空機はらせん状に回転、煙を上げながら急降下し、墜落したという。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルは24日、墜落は暗殺計画の結果との見方であると報道。米政府は機内に仕掛けられた爆発物が作動した可能性があるとみているという。

 墜落原因は断定していないものの、国防総省のライダー報道官は記者会見で、

「プリゴジン氏は殺された可能性が高い」

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との見方を示す。

 プリゴジン氏はウクライナ侵攻に部隊を派遣したものの、その後、ロシア国防省と対立、6月に反乱を起こす。現地では現場検証や身元の確認がつづくものの、プーチン大統領が、

「公開処刑」(米メディア)

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したと米メディアは報じた。

 ニューヨーク・タイムズなどは、米欧政府当局者の初期段階の分析として、機内に仕掛けられた爆発物が飛行中に爆発した結果、墜落したとみられると報道。同氏は、飛行記録の分析として、

「墜落の数分前に上空で何らかの爆発があった結果、機体が急降下した」

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と指摘する。

 機体の残骸は主に三つの地点に落下しており、その範囲は約2マイル(約3・2キロ)にわたっているとのこと。結果、

「残骸が広範囲に拡散したことは、機器の故障というよりも、航空機の爆発や突然の分解の可能性が高い」

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との専門家の分析を紹介している。また燃料に不純物が混ぜられていた可能性もあるという。

プリコジン氏とは 「プーチンの料理人」

 プーチン大統領とプリゴジン氏との関係は、1990年代に始まった。プーチン氏と同じロシア第ニの都市サンクトペテルブルク出身のプリゴジン氏は1990年、この地にホットドッグの販売店を開き、大成功を収める。

 同年は、モスクワで、ソ連で初めてマクドナルト1号店がオープンし、大盛況を収めた年だ。 ロシア庶民の間に広がるファーストフード文化へのあこがれを見抜きホットドッグ店を開いたプリゴジン氏は、確かに”商才”があった。

 1997年には、パリの人気店を模したという水上レストランを開き、こちらも大盛況。とくにプーチン氏はこの店舗がお気に入りで、大統領就任後も当時のシラク仏大統領やブッシュ米大統領を招き食事を共にする11

 その後、プリゴジン氏は学校給食や軍のケータリング事業などを手がけ、富を築く。そのことから、「プーチンの料理人」というあだ名が付いた。

 民間軍事会社ワグネルが設立されたのは、2010年のこと。ロシアでは以前から正規軍が関与できないような作戦に従事する秘密部隊の整備が必要だとの議論があった。

  そのような部隊を、ロシア軍内のスパイ組織である参謀本部情報局(GRU)の傘下に置くという案もあったようだが、しかし結局、軍の外部にワグネルを創設し、一介の民間人であるプリゴジン氏に任せることになった。

 その後、ワグネルは、シリアやウクライナ東部の特殊作戦に従事してきたほか、アフリカにおいて政情が不安定な国で軍事顧問や警備の仕事を請け負ってきた。代わりにワグネルは、金やダイヤモンドなど利権を手にしてきたとされる。

 ワグネルとプリゴジン氏がロシアのために築いてきた軍事・商業ネットワークは、しかしプリゴジン氏が死去したことで”宙に浮く”形となった。プリゴジン氏の死去による不透明感が、今後、アフリカを襲う可能性も。

相次ぐ暗殺

 プリゴジン氏だけでなく、プーチン政権下では”暗殺行為”とみられる例が相次ぐ。

 2006年には、元ロシアのスパイであり、しかし政権批判に転じたアレクサンドル・リドビネンコ氏が、英国で放射性物質ボロニウム入りの緑茶を飲んで殺された。

 同じ元スパイのセルゲイ・スクリパリ氏も2018年、英南部で娘とともに神経剤のノビチョクで襲われる。

 エリツィン政権時代の第1副首相でプーチン大統領の最大の政敵とも呼ばれた野党指導者のボリス・ネムツォフ氏は、2015年にモスクワ中止部で射殺。

 プーチン政権を公然と批判し、現在収監されているアレクセイ・ナワリヌイ氏も、2020年8月、ノビチョク系とみられる毒物により、一時意識不明の重体に陥る。

 これらの手法は、銃を使った以外にも、発見するのが難しい神経剤など、はっきりと暗殺だとわからない手法は用いられる場合が多い12

 暗殺や不審死とみられる事例が相次ぐ背景には、プーチン大統領が極端に批判を恐れるからであるとも。また、はっきりと暗殺であると分からなくとも、不審死がつづくだけで、政権に批判的な人物を怯えさせる。

 一方、調査報道機関「ベリングキャット」でロシア関連の調査を率いるクリスト・グローゼフ氏は、今年1月の時点で、

「半年以内にプリゴジンがプーチンに反旗を翻す」

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と予測し、結果、その通りになった。そして7月には英紙「フィナンシャル・タイムズ」のインタビューで、

「半年以内にプリゴジンが殺されるか、あるいは彼の2回目の蜂起がある」

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とも発言していた。

  1. 共同「プリゴジン氏 墜落死か」西日本新聞、2023年8月25日付朝刊、1項 
  2. 共同、2023年8月25日 
  3. 共同通信「プリゴジン氏は死亡と認める プーチン大統領、哀悼表明」Yahoo!ニュース、2023年8月25日、https://news.yahoo.co.jp/articles/76ec7797eedd6bac36c3f8c89c09bee3a12dca98 
  4. ワシントン=共同「バイデン大統領「驚いていない」」西日本新聞、2023年8月25日付朝刊、2項 
  5. 共同、2023年8月25日、2項 
  6. キーウ=共同「反乱2カ月「公開処刑」か」西日本新聞、8月25日付朝刊、2項
  7. 共同、2023年8月25日 
  8. キーウ=共同、2023年8月25日
  9. 読売新聞オンライン「プリゴジン氏の搭乗機墜落、機内に爆発物が仕掛けられたか…残骸落下の範囲約3キロ」2023年8月25日、https://www.yomiuri.co.jp/world/20230825-OYT1T50193/ 
  10. 読売新聞オンライン、2023年8月25日 
  11. 駒木明義「プリゴジン氏とはどんな人物なのか ワグネルの暗躍でプーチン氏に売った恩が力の源に」AREAdot、DIAMOND online、2023年7月15日、https://diamond.jp/articles/-/326111
  12. 牛尾梓「いちからわかる! プーチン政権下で暗殺が疑われる例は?」朝日新聞、2023年8月25日付朝刊、3項
  13. Edward Luce「プリゴジン暗殺を予言したクリスト・グローゼフが語る「2024年米大統領選にまつわるプーチンの思惑」」COURRiER JAPON、Yahoo!ニュース、2023年8月26日、https://news.yahoo.co.jp/articles/9102bb13ddab605f0993b8bd78ef18a2faed1412?page=1 
  14. Edward Luce、2023年8月26日 
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