JR九州、韓国・釜山-福岡「クイーンビートル」、船体浸水隠し運行 クイーンビートルとは? 航海日誌「異常なし」

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OpenClipart-VectorsによるPixabayからの画像

 JR九州高速船が運航する高速船「クイーンビートル」が、福岡と韓国・釜山を結ぶ航路において、船体に浸水が発生していることを隠しながら運航を続けていたことが発覚した。
 
 問題は、2024年2月に船の船首部分で浸水が確認されたにもかかわらず、必要な修理や検査、国への報告を行わず、およそ4カ月間運航を続けていたことに起因する1
 
 
 隠蔽(いんぺい)行為は、当時の社長であった田中渉氏の指示によるもので、浸水のデータを改ざんしたり、警報センサーの位置をずらして警報が鳴らないようにするなどの措置が取られていた。

 そして浸水の事実は、国の抜き打ち監査によって8月に発覚した2
 
  問題を受け、JR九州は13日に田中社長を解任し、14日に記者会見を開いて謝罪した。会見では、浸水の深さが最大で1メートルに達していたことや、虚偽の記載が行われていたことまで明らかになった。クイーンビートルは現在運休中で、再開のめどは立っていない3
 
 事件は、利用客や関係者に大きな影響を与え、約2万2000人が影響を受けたという。JR九州は、今後の安全意識と体制の強化に取り組むとしている。
 
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クイーンビートルとは?

 クイーンビートルは、JR九州高速船が運航する高速船で、福岡と韓国の釜山を結ぶ航路を提供する。
 
 クイーンビートルは新型高速船として落成し、オーストラリアで引き渡された。当初は2020年7月に就航予定であったが、新型コロナウイルスの影響で遅れ、9月29日に引渡しが行われる。

 21年3月の国際線の再開までの期間限定で、国内遊覧運航を開始した。この時点ではパナマ船籍であったため、沿岸輸送特許を取得して国内運航を行った。22年3月、船籍をパナマから日本に変更した。

 これにより、国内での運航が容易になり、博多港と門司港、長崎港間の運航を開始した。
 
 22年11月4日、福岡と釜山を結ぶ国際航路の運航を再開した。これにより、クイーンビートルは国際航路での運用を開始した。
 
 クイーンビートルのデザインは、日本の著名なデザイナーである水戸岡鋭治氏が手掛けた。彼はJR九州の豪華列車「ななつ星in九州」などもデザインしており、船内は高品質でカスタマイズされたインテリアが特徴である。
 
 船内は3階構造になっており、1階にはスタンダードクラス席や共用ラウンジ、キッズスペースがある。2階にはビジネスクラス席、免税店、キオスクがあり、3階には展望室が設けられている。
 
 これにより、乗客は移動中にショッピングやリラックスを楽しむことができるという。

浸水隠し、航海日誌「異常なし」

 クイーンビートルは、船首部分に浸水が発生していたにもかかわらず、その事実を国土交通省に報告せず、運航を続けていた。浸水は少量であったとしても安全上の重大な問題である。

 そして船体の浸水に関するデータを改ざんし、実際の状況を隠していた。
 
 浸水を検知するセンサーの位置を変更し、警報が鳴らないようにする不正行為も行われていた4
 
 一方、航海日誌には「異常なし」と記載され、実際の浸水状況は裏で管理簿を作成して記録していたことが明らかになっている。これらの不正行為は、当時の社長である田中渉氏の指示によるものである。
 
 クイーンビートルでの浸水量については、最大で1メートルに達していたことが報告されている。この浸水は船首部分で発生しており、安全上の重大な問題となっていた。
 
 現場で浸水が確認された際にも「異常なし」と記録するよう指示し、センサーの位置変更を許可していたという5。しかし8月に国の抜き打ち監査が行われた際に、これらの不正が発覚した。

 監査によって浸水の事実が確認され、運航が停止されるに至った。
 
 不正行為は、乗客の安全を著しく軽視したものであり、非常に悪質な隠蔽(いんぺい)工作である。JR九州はこの問題を重く受け止め、経営陣の交代を行い、安全対策の強化に取り組むとする。
 

運休回避優先か

 クイーンビートルが浸水を隠してまで運休回避を優先した背景には、LCC(ローコストキャリア)との激しい競争が影響している。
 
 博多と釜山を結ぶ航路は、LCCの参入により競争が激化している。LCCは低価格での航空運賃を提供し、多くの乗客を引き付けているため、クイーンビートルも競争力を維持するために運航を続ける必要があった。
 
 また、クイーンビートルは輸送力の高い新型高速船として投入されており、この航路の重要な役割を担っている。

 しかし、クイーンビートルは先代のビートルとは異なり1隻体制での運航であるため、運休を避けるために無理にでも運航を続けようとした可能性がある。
 
 JR九州は1990年に船舶事業に参入し、翌年には福岡と釜山を結ぶ国際航路を開設した。船舶事業は鉄道事業の赤字を補うための多角化戦略の一環として始められた。
 
 クイーンビートルは、訪日観光需要の増加を背景に福岡~釜山航路の利用客数を増やすために導入された。2017年に建造が決定され、2020年に落成。502名の旅客を収容できる大型の高速船であり、輸送力の強化を図るために導入された。
 
 今回の事態は、クイーンビートルを運行させるJR九州の安全管理体制に対する重大な疑念を生じさせ、運航の停止や経営陣の交代といった結果を招くこととなった。今後、安全意識の再構築が求められている状況である。

  1. NHK NEWS WEB「福岡とプサン結ぶ高速船 船体への浸水隠したまま3か月以上運航」2024年8月14日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240814/k10014548911000.html 
  2. NHK NEWS WEB、2024年8月14日 
  3. 毎日新聞「「悪質にも程が…」 浸水隠しの日韓高速船「クイーンビートル」運休」2024年8月13日、https://mainichi.jp/articles/20240813/k00/00m/040/319000c 
  4. 江口悟「クイーンビートル、不正発覚で13日から運休 浸水報告せず改ざんも」朝日新聞デジタル、2024年8月9日、https://digital.asahi.com/articles/ASS893FC3S89ULFA01DM.html 
  5. 江口悟「クイーンビートル浸水隠しは「社長の指示」 親会社のJR九州が会見」朝日新聞デジタル、2024年8月14日、https://digital.asahi.com/articles/ASS8G3R50S8GULFA002M.html 
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