未知の領域 二つの巨大ハリケーンが米南部を襲う 「ヘリーン」 天候の影響を受けにくい「気候ヘイブン」地域を襲う 「ミルトン」 あまりの強さに放送中に気象学者が涙ぐむ

ハリケーン
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wurliburliによるPixabayからの画像

 9月下旬から今週にかけて、アメリカは巨大ハリケーン「ヘリーン」と「ミルトン」に相次いで襲われ、甚大な被害を受けた。
 
 9月下旬には「ヘリーン」がフロリダ州に上陸し、南東部の広範囲にわたって壊滅的な被害をもたらす。死者数は200人以上に達し、経済損失は2,250億~2,500億ドルに上り、これは米国の年間GDPの約0.9%に相当する。
 
 フロリダ州やジョージア州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州で大規模な被害が確認され、広範囲にわたって洪水や停電、インフラの損壊が発生した。
 
 続いて、「ミルトン」は10月9日午後8時30分頃にフロリダ州シエスタキー近くに上陸。上陸時のカテゴリーは3で、最大風速は時速100マイル(約160km/h)を超えた。少なくとも14人の死亡が確認されている1
 
 また、MLBタンパベイ・レイズの本拠地であるトロピカーナ・フィールドの屋根が大きく損傷し、約125軒の家屋(主に高齢者向け集合住宅)が破壊された2
 
 これら二つのハリケーンは、米国南部の産業や供給網に深刻な影響を与える可能性があり、気候変動による大規模災害のリスクが一層顕在化している状況だ。

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「ヘリーン」 天候の影響を受けにくい「気候ヘイブン」地域を襲う 未知の領域

 「ヘリーン」は、従来、「気候ヘイブン(気候避難所)」と考えられていた地域にも大きな被害をもたらし、気候変動の影響が予想を超えて広がっていることを示した。
 
 米内陸部の多くの地域は気候変動の影響を受けにくいと考えられ、不動産業者によって「気候ヘイブン」として宣伝されてきた。これらの地域は、海面上昇や沿岸部の暴風雨の直接的な影響を受けにくいという特徴があった。
 
 しかし、近年の気候変動は予想を超えて広範囲に影響を及ぼしており、内陸部も例外ではなくなっている。実際、極端な気象現象、特に豪雨や洪水のリスクが内陸部でも高まっている。
 
 ハリケーン「ヘリーン」は、ジョージア州、ノースカロライナ州西部、サウスカロライナ州西部、テネシー州東部、バージニア州南部を含む広範囲に豪雨をもたらす。
 
 現在の気候(産業革命前と比べて1.3°C温暖化した状態)では、ハリケーン「ヘリーン」がもたらしたような深刻な降雨は、沿岸地域で約7年に1回、内陸地域で約70年に1回の頻度で発生すると推定されている。
 
 だが気候変動により、両地域での降雨量は約10%増加。地球温暖化が産業革命前と比べて2°Cに達すると、このような壊滅的な降雨の現象の可能性がさらに15-25%増加すると予測されている。

「ミルトン」 あまりの強さに放送中に気象学者が涙ぐむ

 またハリケーン「ミルトン」の動向について伝えていたアメリカの気象学者ジョン・モラレス氏が、テレビ放送中に思わず涙ぐむ出来事があり、反響を呼んだ3
 
 10月7日、NBCの気象番組「NBC6サウスフロリダ」で天気予報を担当していたモラレス氏は、ハリケーン「ミルトン」の異常な強さについて説明している最中に、突然声を詰まらせ、話を続けることができなくなる。
 
 モラレス氏は「本当に驚くべきハリケーン」と述べ、目を閉じたまま首を横に振りながら、震える声で「10時間で気圧が50ミリバール落ちた」とハリケーンの急激な強化について伝えた。
 
 この場面は多くの視聴者の共感を呼び、ソーシャルメディアで大きな反響を呼んだ。TikTokでは2600万回以上再生され、120万人が「いいね」を押し、Xでは190万回以上再生される。
 
 後のインタビューでモラレス氏は、涙ぐんだ理由について、ハリケーンの急激な強化に対する衝撃を述べ、科学的根拠があるにもかかわらず、地球温暖化を止められない社会への不満、あるいはハリケーンの被害を受ける人々への申し訳なさを語った。
 
 「ミルトン」による被害額についてバイデン大統領は、専門家による初期段階の試算として、総額が約500億ドル(約7兆4560億円)に上る可能性があると発表4 。
 

米産業集積地を襲うハリケーン 新たな脅威 

 米南部で相次ぐ大型ハリケーンの襲来は、この地域の産業に深刻な影響を与えている。
 
 アメリカ南部は、税負担の軽さや豊富な人材を理由に、多くの産業が移転してきた地域。しかし、気候変動による度重なる大規模災害の増加が、この産業集積に大きな脅威となっている。
 
 ゼネラル・モーターズ(GM)はハリケーン「へリーン」の影響で、ミシガン州とテキサス州の工場で2日間の生産停止。日産自動車の南部の工場でも生産に支障があった。
 
 この地域は重要な物流ハブとなっており、混乱は全国的な供給網に波及。ハリケーン「ヘリーン」の影響により、自動車、小売、農業分野の供給網が大きく乱れ、商品の遅延や製造停止が発生。
 
 またフロリダ州や南東部の港は国際貿易の重要な玄関口。これらの港の機能が停止すると、輸入品の流れが滞り、国内外の供給網に影響を与える5
 
 ハリケーンの数と激しさは年々増加傾向にあり、災害関連の被害も拡大していいる。気候変動リスクの増大により、企業は今後、南部への移転戦略を見直す必要に迫られる可能性がある。
 
 ハリケーンによる被害は単に局所的な問題ではなく、複雑に絡み合った供給網全体に波及し、広範囲にわたる混乱を引き起こす可能性が高い。企業は気候変動リスクを考慮に入れた長期的な事業継続計画を迫られるだろう。

  1. JULIO CORTEZ, KATE PAYNE and HAVEN DALEY「Although Milton has moved on, at least 8 are dead and millions remain in the dark」APnews、2024年10月11日、https://apnews.com/article/hurricane-milton-tampa-florida-5f6a112986eb6e21720f0f17c504afe8 
  2. JULIO CORTEZ, KATE PAYNE and HAVEN DALEY、2024年10月11日 
  3. Chris D’Angelo「ハリケーンの猛発達を伝えていた気象学者、放送中に思わず涙ぐむ「本当に恐ろしい状態です」」HUFFPOST、2024年10月8日、https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6704bf17e4b0f84405a2db1f 
  4. 共同通信「米南部ハリケーン被害7兆円か 大統領、13日に現地視察」Yahoo!ニュース、2024年10月12日、https://news.yahoo.co.jp/articles/18b09176bac120116d5e02cad2e9771e252da860 
  5. Sue Doerfler「Back-to-Back Hurricanes Wreak Havoc on Supply Chains」OSM、2024年10月8日、https://www.ismworld.org/supply-management-news-and-reports/news-publications/inside-supply-management-magazine/blog/2024/2024-10/back-to-back-hurricanes-wreak-havoc-on-supply-chains/ 
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