Don MetznikによるPixabayからの画像
警察庁は、特殊詐欺被害の多くが75歳以上の高齢者である現状を受け、ATMの1日利用限度額を30万円に制限する方針を検討中。ATMを使った詐欺手口への対策が急務だが、高齢者の利便性や金融機関の負担といった課題もある。世界ではATMでの振込は一般的でなく、オンライン送金が主流。特殊詐欺の多くは電話で始まるため、ATMや電話に依存しない社会構造への転換が効果的だ。
- 特殊詐欺の被害が過去最悪の約722億円となり、被害者の約45%が75歳以上であることから、警察庁はATMの利用限度額を30万円に制限する方針を検討中。
- 高齢者をATMに誘導する詐欺手口が多く、対策は急務だが、利便性の低下や金融機関への負担といった課題もある。
- 世界的にはATMでの振込は一般的でなく、特殊詐欺防止には電話の排除やデジタル化の推進が効果的だ。
特殊詐欺被害が深刻化する中で、警察庁は75歳以上の高齢者がATMを利用する際の1日あたりの限度額を30万円に制限する方針を検討している。2024年の特殊詐欺被害額が約722億円と過去最悪を記録し、その被害者の約45%が75歳以上であるという統計があるなか、少しでも高齢者への被害をなくそうとする施策の一環だ。
とくに詐欺手口としては、高齢者をATMに誘導して指定口座に振り込ませるケースが多いなか、これに対する対策が急務となっている1。
他方、この制限案にはいくつかの課題が存在。まず、高齢者の利便性低下が懸念されている。なお日常的に高額な取引を行う個人事業主などには例外措置が検討されているものの、多くの高齢者にとっては不便さを感じる可能性が。
しかしながら、そもそも世界的にATMは現金の引き出しや預け入れ、残高照会が主な用途であり、他行への振り込みは一般的ではない。代わりに、オンラインバンキングやモバイルアプリを利用した送金が主流となっている。
日本の特殊詐欺は、電話を入り口とした巧妙な手口が特徴的。警察庁のデータによれば、高齢者を狙った特殊詐欺の約86%が電話による接触で始まってる。特殊詐欺をなくすためには、徹底的なデジタル化、具体的には「電話を使わない」、「街中のATMをなくす」などの施策が最も効果的だ。
特殊詐欺の歴史
- 特殊詐欺の登場(平成15年頃)
特殊詐欺が目立ち始めたのは平成15年夏頃で、オレオレ詐欺が最初に注目された。親族等を装い、金銭を至急必要と信じ込ませる手口が特徴。 - 平成16年:初期の拡大
認知件数が約25,700件、被害総額が約284億円に達し、社会問題として注目され始める。 - 平成22年以降:手口の多様化
オレオレ詐欺以外にも架空料金請求詐欺、還付金詐欺、キャッシュカード詐欺盗など新しい類型が登場し、手口が巧妙化。 - 平成27年:被害額のピーク
特殊詐欺被害額が年間565.5億円と過去最高を記録。この時期には暴力団など犯罪組織による関与も指摘されている。 - 令和2年:新たな分類の導入
従来オレオレ詐欺に含まれていた預貯金詐欺が新たな類型として分類され、この形態の被害額が増加 - 令和5年:最新状況
認知件数は19,038件、被害額は452.6億円と前年より増加。高齢者を標的にした詐欺が依然として多く、大都市圏で集中して発生している。
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