KDDIの回線が大規模な障害 なぜ起こった? 影響は? 私たちユーザーに求められる自衛策

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 KDDI(au)などの大規模な通信障害は、発生から86時間たった5日午後3時半すぎに全面的に復旧。

 コールセンターには9万件を超える苦情があったという1。KDDIは、最大、3915万の利用者に影響があったと発表。今後は利用者に対し、影響を確認したうで、補償も含め、検討していくという。

 障害は、2日午前1時35分ごろ発生。定期のメンテナンスで音声通話の「ルーター」という機器を交換していた際に不具合が生じたことがきっかけとなった2

 つづいて、音声通話に関しての別の機器である「交換機」にアクセスが集中する問題がおきるなど、連鎖的な不具合が重なる。

 KDDIはシステムへの負荷を抑えるため、通信量を制限しながら復旧作業を進めた。

 結果、西日本エリアでは3日午前11時ごろ、東日本は午後5時ごろに復旧についての作業を完了できたものの、その後もサービスの本格的な再開が可能であると確認できるまで、通信の制限を続ける対応をとる。

 KDDIは、4日午前7時には、データ通信については、「おおむね回復した」と発表。ただ、音声通信はつながりにくい状況がつづく。

 システムの負荷が軽減したことなどを確認し、同日午後2時51分に通信の制限を全面的に解除。音声通話、データ通信ともにほぼ回復した。

 ただ今回の障害は、法律で定める「重大な事故」に相当。

 KDDIは、事故発生から30日以内となる来月8月1日までに総務省に対し、障害の詳しい原因や再発防止策などについて報告しなければならない。そして、これを受け、総務省は行政指導などを検討する。

なぜ大規模な障害が起こったのか


 KDDIの高橋誠社長は3日、記者会見を開き、「創業以来、最大の障害」とし、謝罪をするとともに、障害の詳細と復旧状況の説明をした。

 今回の障害における被害の対象端末は、全国で最大約3915万回線にも上るという。その数の端末が、ほぼ2日間にわたって影響を受けたことになる。

 端末は、アンテナピクトも立たず、通話もまったくできない状態に。通話ができないということは、緊急通報もできないことを意味する。

 SMSも使うことができなかった。現在のWEBサービスの認証では、SMSを使った多要素認証が採用されることが一般的。そのSMSが使えないと、認証さえもできないので、WEBサービスさえ使えない。

 今回のトラブルは、おもに音声通話の接続についてのものだった。しかしながら、結果としてKDDIが取り扱うデータトラフィックの全体に影響を及ぼす。

 auの回線はもちろん、MVNOの回線や一部エリアでKDDIの回線を使っている楽天モバイルにも影響を与えた。

 障害は、2日午前1時35分に発生。メンテナンスの一環として、KDDIネットワークのモバイルコア・ネットワークへと中継するコアルータのうちの1つを、旧製品から新しい製品へと切り替える作業を行っていた。

 作業では、トラフィックがどのように流れるか、ルーティングの切り替えが行われる。

 しかし、その過程で、音声通話を取り扱う「VoLTE交換機」でアラームが鳴った3。作業の過程で、ルーターに何らかの不具合が発生し、音声トラフィックの一部が不通になる。

 すぐに音声トラフィックを元に戻す「切り戻し」を実施したが、そこでもまた別のトラブルが起きた。

 VoLTEは、通信がされなくても50分に一度、携帯電話端末の位置登録がなされる。

 そうなると、切り戻しの作業中に多くの端末から「再接続要求」が発生、結果、「少なくとも通常の2倍以上、数倍程度」(KDDI・吉村和幸 取締役執行役員専務技術統括本部長)のトラフィックが生まれた。

 結果として、VoLTE交換機で通信が集中して不具合が発生する「輻輳(ふくそう)」と呼ばれる現象が、全国で発生した。

 輻輳とは、さまざまなものが1カ所に集まり、混み合うこと4。通信の分野では、インターネット回線や電話回線など、特定の場所にアクセスが集中する現象を意味する。

 携帯電話の通信網には、その番号がどのような契約にともなうもので、どこにあるのかを記録した「加入者データベース(DB)」がある。

 VoLTEの交換機で輻輳が起きると、加入者DBに正しい情報が書き込めなくなり、データベースの不一致が発生。加入者DBの内容が正しくないと、多くの人の通信や通話が正しく行なえなくなる。

 そして、そのまま負荷増大による輻輳を長引かせると、さらに大変なことになる。そこで2日午前3時、VoLTE交換機の負荷軽減を目的とした「流量制御」が始まり、全国規模で音声通話とデータ通信が行ないづらくなった。

 結果、最初のメンテナンスから玉突き的に、トラフィックが増大、さらに輻輳により、トラブルが拡大した。

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障害の影響 顧客への補償 過去には700円減額事案も

 今回の通信障害は、携帯電話のみならず、物流や電子決済といった社会インフラに甚大な影響を及ぼした。

「私たちの歴史上、一番大きな障害だ」

 3日午前に開かれた高橋社長の記者会見のときも、すでに障害の発生から30時間以上が経過していた。

 障害で影響を受けた回線は、最大3915万回線にのぼる。内訳は、個人や法人向けの携帯電話が3580万回線で最も多く、ついで格安スマートフォン事業者向けが140万回線5

 物流や金融業界で使われる機器向けも150万回線ほどあり、企業への影響もあった。ヤマト運輸の配送状況確認システムが更新されなかったり、大垣共立銀行(岐阜県大垣市)のATMが使用できなくなったりした。

KDDIの通信障害の主な影響

・au、UQモバイル、povo(ボヴォ)の音声通話やデータ通信がつながりにくい状況に 回線を借りる楽天モバイルやJCOMにも障害

・貨物列車の情報システム障害による遅れに伴い、近畿・中国・四国地方発・北海道向けのゆうパックに遅れ

・ヤマト運輸の配送状況確認システムが更新されず ドライバーの携帯電話も通じず

・東武バスの一部のバスでICカードを利用できず

・セコムの高齢者見守りサービスで安否確認に支障

・大垣共立銀行で一部ATMが使用できず

・トヨタ自動車「コネクテッドカー(つながる車)」のサービスに障害

・地域気象観測システム(アメダス)一部データ配信できず

・滋賀県大津市消防局の消防車や救急車が市内を回り「固定電話などで通報を」と呼びかけ

西日本新聞7月4日付朝刊

 KDDIの約款によると、24時間以上の不通か同じ程度の障害があった場合、直前の6カ月の利用実績などから1日当たりの利用額を算出し、障害の日数に応じて補償額を支払うと規定。

 ただ、今回、会社側が説明した「利用しづらい状況」が当てはまるかは微妙。事実、ソフトバンクが2018年、NTTドコモが2021年に起こした障害でも、この「24時間ルール」には達せず、個人向けの補償は見送った。

 KDDIは、2013年の4月~5月に3回、それぞれ60万人程度に影響した障害では、24時間の障害には満たなかったものの、自主的な判断として、通常の料金プランの3日分にあたる700円を補償していた。

 ただ、影響が最大で3915万回線に及ぶ今回の障害は、補償するにしても、経営面から巨額のコストが生じかねない。

もう、「万が一」では済まされない 被害を最小限に抑えるための自衛策

 今回の障害は、KDDIで起きた障害のため、auの回線だけでなく、UQ mobileやpovoなどへも広く広範囲に影響を与えた。

 通話やメッセージのやり取りだけでなく、インターネットを使った情報収集やバーコードを表示されるスマホ決済もできなくなった。

 さらに通話ができないと、そもそも緊急通報もできないため、人命にもかかわってくる。

 しかしながら、ここ数年を振り返ると、今回のKDDIだけでなくソフトバンクもNTTドコモも大規模な通信障害を起こした。

 2018年12月にはソフトバンクが約4時間半、2021年10月にはドコモが約12時間にわたり全国で通信障害を発生させた。

 今回のKDDIを含めると、約4年半で3度の大規模な通信障害が起きており、もはや「万が一」では済まされない頻度だ。

 そのため、一般ユーザとしては、自分が普段使っている回線が通信障害にあったとしても、代替の通信手段を確保する、あるいはダメージを最小限に抑えるための自衛策を講じる必要があるだろう。

 まず、最もシンプルな対策が「サブ回線」持つことだという6。また、eSIMのサービスも有効。物理的なSIMの発送を必要としないeSIMなら、オンラインで申し込んで即日利用を開始できる。

 つまり通信障害が起きてから契約をすることができる。

 スマートフォンならば、nanoSIM+eSIMの組み合わせがが効果的。iPhoneの場合、iPhone XS以降のモデルはnanoSIM+eSIMのデュアルSIMに対応している。
 
 Androidスマートフォンについても、Pixelシリーズ(Pixel 4以降)を中心にeSIM対応機種が増えている。

 メインの回線にnanoSIMを使い、サブ回線用にeSIMを確保しておくと安心だ。

 そこまで複雑な契約はしたくないという人は、家族で異なる回線を持つということも有効だ。他にも、固定回線を持つ、外出先では公衆電話の場所を把握しておくことが重要だ。

 スマホ決済の場合はどうか。iD、QUICPay、Suica、楽天Edy、nanaco、WAONなどFeliCaの非接触決済サービスは、スマートフィン自体は圏外になっても利用できる。

 ただしこれらのサービスも、決済端末側で通信が必要になる場合があるため、利用回線に障害が起きていると決済できなくなる可能性はある。そのため、現金は一応、持っておいた方がよいだろう。

 これらの防衛策は、1人暮らしか、家族と暮らしているか、固定回線があるかないかなど、生活環境によって対策方法が変わってくる。自分の生活環境を考えながら、不測の事態に備える必要がありそうだ。

  1. NHK NEWS WEB「auなど通信障害 全面復旧もKDDIに苦情9万件超 補償含め検討」2022年7月6日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220706/k10013703981000.html
  2. 西日本新聞7月5日付朝刊
  3. 西田宗千佳「KDDIの大規模障害はなぜ起きたのか。「告知」に課題」Impress Watch、2022年7月4日、https://www.watch.impress.co.jp/docs/series/nishida/1422028.html
  4. 杉山歩、中島嘉克「丸2日以上の通信障害、招いた「輻輳」とは 解決対応は「職人芸だ」朝日新聞デジタル、2022年7月5日、https://digital.asahi.com/articles/ASQ746H8RQ74ULFA021.html
  5. 西日本新聞7月4日付朝刊
  6. 田中聡、ITmedia「もう「万が一」ではない 通信障害の被害を防ぐための自衛手段」ITmedia Mobile、2022年7月5日、https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2207/05/news100.html