【有料記事】国会議員定数削減論の本質 日本の民主主義はすでに『少なすぎる代表』だった なぜ日本では『削減』が美徳になったのか 日本の小さな政府の政治文化の風土

政党
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「身を切る改革」が美徳になる国 日本に根付いた「小さな政府」思想の功罪

 近年の日本の政治では、「身を切る改革」が国民的支持を集める定番のスローガンとなっている。その根底には、戦後日本が形成してきた「小さな政府」を是とする政治風土がある。

 GHQの占領期以降、国家の役割は福祉や再分配より経済成長の枠組みづくりに置かれ2。自民党長期政権下でも、福祉より公共事業や税制優遇といった間接的再分配が重視され3、政府支出は抑制されてきた。

 1990年代以降は財政危機論の浸透により、政府支出は「将来世代への負担」と捉えられるようになった4。高齢化で社会保障は拡大したが、給付抑制や自己負担増が続き、日本の政府支出対GDP比はOECD平均を下回る。こうした倹約志向と自助責任を重んじる価値観の延長線上で、「身を切る改革」という政治倫理が成立した。

 欧州諸国が再分配を国家の役割として共有してきた5のに対し、日本では「小さな政府」が美徳とされ、民主主義のコストを負担することより支出削減が評価される逆説が生じている。しかし高齢化と格差が進む現在、このモデルは限界に近い。

 必要なのは定数や報酬の削減ではなく、政治の代表性や議員報酬、政府支出の決定過程と分配構造を透明化する制度設計である。それこそが次の時代の本当の、「身を切る改革」でもある。

1社会構造や政策課題が複雑化するなかで、代表の多様性と審議の厚みを確保する必要性が共有されているためだ。 2真に必要なのは、報酬体系や手当の透明化、公設秘書制度の見直し、課税の徹底などによって「少数・高コスト」構造を是正することだ。 3議員定数の「削減」の前に、議員報酬の「精査」を行うことこそが、政治への信頼回復に不可欠であるだろう。

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  1. 宮本太郎『福祉政治―日本の生活保障とデモクラシー』(有斐閣、2008年)、高度成長期には企業社会が生活保障を担った1濱口桂一郎『日本の雇用と労働法』(日本経済新聞出版社、2011年)
  2. 宮本太郎『生活保障―排除しない社会へ』(岩波新書、2009年)
  3. 井手英策『財政から読みとく日本社会―君たちの生活は間違っている』(岩波ジュニア新書、2017年)
  4. エスピン-アンデルセン『福祉資本主義の三つの世界』(ミネルヴァ書房、2001年)
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