ジャニーズ事務所、新体制へ移行 テレビ局各社が公表した、喜多川氏の性加害に触れなかった理由 「マスメディアの沈黙」はなぜ起こった?

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愚木混株 Cdd20によるPixabayからの画像

 ジャニーズ事務所が、17日付で社名を「SMILE-UP.(スマイルアップ)」に変更した。公式サイトも切り替わり、0時過ぎにはつながりにくい状態となった。

 オンラインの関連サイトやコンテンツなどの名称も変更される。

 一方、エージェント契約で運営する新会社を1か月以内に発足させ、新会社で個人やグループで契約。また若手のタレントでは新会社に所属することも可能という。

 エージェント契約の場合、「営業」や「交渉」など仕事を獲得する部分だけを事務所やエージェントサービス会社が代行する。しかし、それ以外の業務は自身で責任をもたななくてはならない。

 ハリウッド俳優は、このシステムでの活動が一般的だ。他方、日本の芸能事務所はマネジメント契約の形を取ってきた。

 この場合、広告代理店やテレビ局、キャスティング会社へ「営業」を掛けて、「契約・ギャラの交渉」「スケジュール管理」「トラブル対応」など、タレント活動するにあたり、一通りのことすべてを事務所が行なってくれる。

 タレント自身は、芸能活動にのみ集中できまるが、基本的にオーディションや顔見せといったマネージャーとともに営業をするなど、スケジュールの自由度か利かなくなる。

 日本の芸能界の歴史は、1958(昭和33)年2月、東京・有楽町の日本劇場、通称・日劇で行われた「日劇ウエスタン・カーニバル」から始まる1

 平尾昌晃、ミッキー・カーチス、山下敬二郎の3人は「ロカビリー3人男」として売り出され、熱狂的な人気を集める。

 7日間で観客動員は延べ4万5000人に達し、社会現象となった。そして関係者たちが裏方に転身。それぞれが芸能プロダクションを立ち上げた。

 そのために、日本の芸能界が芸能プロダクションによるマネジメント主導になったわけだ。

 最近では、吉本興業が「エージェント契約」を進めるようになった。日本の芸能界が大きく変わろうとしている。

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背景

ジャニーズ事務所の収益構造


 ジャニーズ事務所(1962年創業 1975年法人化 2022年売上高 推計800億円)2

・コンサート

ポップス興行規模ランキング(ぴあ総研調べ)
1位 EXILE 124.4万人  37公演
2位 king &Prince 91.4万人 42公演(ジャニーズ)
3位 ジャニーズWEST 77.8万人 45公演(ジャニーズ)
4位 Kis-My-Ft2   77.1万人 31公演(ジャニーズ)
5位 Mr.Children 65.7万人 14公演
6位 Sexy Zone 58.9万人 34公演(ジャニーズ)
7位 Hey!Say!JUMP 52.8万人 36公演(ジャニーズ)
8位 関ジャニ∞  50.4万人 18公演(ジャニーズ)
9位 桑田佳祐 47.7万人 13公演
10位 ゆず  47.6万人 32公演

・ファンクラブ

・舞台

・CM、テレビ出演

・音楽ソフト(アルバム、シングル、音楽ビデオ)

音楽ソフト総売上金額(アーティスト別)(Billboard Japan調べ)
1位 Snow Man 110億円(ジャニーズ)
2位 king &Prince 77億円(ジャニーズ)
3位 BTS 74億円
4位 SixTONES 67億円(ジャニーズ)
5位 なにわ男子 63億円(ジャニーズ)
6位 乃木坂46 55億円
7位 SEVENTEEN  35億円
8位 INI 35億円
9位 ジャニーズWEST 32億円(ジャニーズ)
10位 関ジャニ∞ 26億円(ジャニーズ)

・グッズ

新・旧会社に分割へ

ジャニーズ事務所

「SMILE-UP.」 被害補償のみの担当 補償を終えたら廃業
10月17日に社名変更
東山紀之社長、藤島ジュリー景子氏(株式の100%を保有、代表権のない取締役)

新会社(社名はファンから公募)
タレントの仕事の窓口、マネジメント、育成など
東山紀之社長、井ノ原快彦副社長

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テレビ局各社が公表した、喜多川氏の性加害に触れなかった理由

テレビ局の検証番組で挙げられた、ジャニー喜多川氏の性加害に触れなかった理由

・NHK(9月11日)
報道関係者
芸能ネタは週刊誌に任せればいい。NHKの報道では扱わないとの風潮(元司法記者)

制作・編成関係者
(ジャニー氏の)裁判は知っていたが、出演の判断に影響しなかった、売れているタレントを出したかった。

ジャニー氏の家に子どもたちが泊っていることは知っていたが、「性的な部分」が知りたくないと思っていた。

・フジテレビ(10月2日)
報道関係者
芸能事務所と出版社の裁判沙汰、スキャンダルの一つという認識(元司法記者の報道局幹部)

・日本テレビ(10月4日)
報道関係者
芸能界という特異な世界での出来事。警察が動いていなかったのも大きい(元司法記者の上司)

ニュース番組に所属タレント起用も影響。別の所属タレントの事件の報道に遅れ(当時の報道幹部)

制作・編成関係者
20年以上前から、社内では事務所を怒らせるとキャスティングや取材ができなくなるのでは、という雰囲気が生まれていた。

ジャニー氏の男の子好きは知られていた。余計なことを言ってもめたくなかった。事務所に力があり、忖度していなのは間違いない。

TBS(10月7日)
報道関係者
オウム松本元死刑囚の一審判決前で忙しく、ジャニー氏の最高裁決定の記憶ない(当時の社会部員)

ジャニー氏の交通事故の原稿を出稿するも放送されず。編成部への配慮が影響(当時の報道局幹部)

制作・編成関係者
タレントは素晴らしい。ジャニー氏はいい育て方をすると思った。見えていなかった面もあるし、性加害は思考を止めていた面もある。

他の事務所でも枕営業やセクハラの話はあると聞いていた。芸能界はそういうところ。ジャニー氏のセクハラも特別なものと感じなかった。

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※NHKとフジテレビはホームページから。日本テレビとTBSは放送から。日付が放送日。

※13日現在。テレビ朝日とテレビ東京はまだ検証番組を放送していない。

「マスメディアの沈黙」はどうして起こったのか?

 「マスメディアの沈黙」は、日本独自のメディアシステムの下で起こったとも言ってよい。たとえば、アメリカの3大ネット(CBS、ABC、NBC)は基本的に自社でエンタメ部門を持っていない。

 歴史的にドラマやバラエティなどの番組制作をハリウッドへアウトソース(業務委託)してきたという経緯があるからだ5

 ところが日本のテレビ局は違う。それぞれの募集要項をみても、総合職の仕事内容は報道のほかドラマやバラエティなど多岐にわたる。つまり、報道とエンタメが混じっている。

 だから、父親を、テレビ局を管轄にもつ総務省総合通信基盤局部長まで務めた桜井俊を父にもつ「嵐」の櫻井翔が、日テレの「news zero」に出演させる禁じ手を犯すのだ。

 たとえば、トヨタ自動車の社員や財務省の官僚が報道キャスターを務めていたらどうなるだろうか。明らかに問題だろう。

 一方、喜多川氏の性加害問題でジャニーズファンだった大学生の約4人に1人が「ファンではなくなった」と回答している。

 株式会社RECCOO(東京都渋⾕区)が運営するZ世代に特化したリサーチサービス『サークルアップ』の「ジャニー喜多川氏の性加害問題の具体的な影響」に関する調査で判明。

 調査は、同サービスに登録する大学1年~4年生204人を対象とし、2023年10月にインターネットで実施。

 まず、「今年3月に放送したBBCの報道がある以前から、ジャニー喜多川氏の性加害問題を知っていましたか」と聞いたところ、約3人に1人が「以前から知っていた」(30.5%)と回答。

 ほか、「BBCの報道以降に初めて知った」が62.5%、「このアンケートで初めて知った」が7%という結果に。さらに、「ジャニーズタレントのファンだった」と答えた74人のうち、23%が「性加害問題で今はファンではない」と回答した。

  1. BOOKウォッチ「芸能プロダクションはこうして生まれた! 戦後芸能史の縮図」2022年11月9日、https://books.j-cast.com/topics/2022/11/09019680.html 
  2. 朝日新聞「社名維持 一転し廃業」2023年10月3日付朝刊、2項 
  3. 朝日新聞、2023年10月3日 
  4. 川上義則「ジャニーズ性加害、テレビ各局の検証番組から見えたものは… 男性中心の価値判断、アイドルは「オンナ・コドモ」のもの」東京新聞、2023年10月14日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/283698 
  5. 牧野洋「ジャニーズ性加害を批判しながら、キャスターはジャニタレ…「二枚舌」を続ける日本のテレビ報道の最大問題」PRESIDENT Online、Yahoo!ニュース、2023年10月13日、https://news.yahoo.co.jp/articles/5fcb4f5455becda22a839c68996737c23c638dd2 
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