中東情勢緊迫化 ハマス最高指導者暗殺で イスラエル、ヒズボラ中枢を次々狙う 遠のくガザ停戦 イランの次の一手は?

中東
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Pedro FiguerasによるPixabayからの画像

 ハマスの最高指導者イスマイル・ハニヤ氏が、年7月31日にイランの首都テヘランで暗殺された。ハニヤ氏はイランの新大統領マスード・ペゼシュキアンの就任宣誓式に出席するためにテヘランを訪れていた1
 
 暗殺は、ハニヤ氏が滞在していた建物に事前に仕掛けられた爆発物によるもので、遠隔操作で爆発が引き起こされたと報道2。また一部の報道では、精密誘導ミサイルや自爆ドローンが使用された可能性も指摘されている。
 
 暗殺の実行者については、イスラエルの対外諜報機関モサドが関与しているとの見方が強い。イスラエルは公式には関与を認めてはいないものの、ハニヤ氏は以前からイスラエルの「ヒットリスト」に含まれていたことが知られている3
 
 イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は、ハニヤ氏の暗殺に対する報復を宣言し、イスラエルに「厳しい処罰」を下すと述べる4
 
 ハニヤ氏の暗殺を受けて、ハマスはガザ地区の指導者ヤヒヤ・シンワル氏を新たな最高指導者に選出。シンワル氏はハマス内で最も過激な存在の一人とされており、今後のハマスの動向に注目が集まっている5

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ハマスの最高指導者イスマイル・ハニヤ氏が、年7月31日にイランの首都テヘランで暗殺された。ハニヤ氏はイランの新大統領マスード・ペゼシュキアンの就任宣誓式に出席するためにテヘランを訪れていた。 目次 ・暗殺されたハニヤ氏とは? ・イスラエル ...

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暗殺されたハニヤ氏とは?

 暗殺されたイスマイル・ハニヤ氏は1962年、ガザ地区の難民キャンプで生まれた。両親は第1次中東戦争で難民となり、ガザ地区に避難。ハニヤ氏はガザのイスラム大学でアラビア文学を学び、卒業後は学生運動家として活動した6
 
 1987年に始まった第1次インティファーダ(対イスラエル民衆蜂起)に参加し、しかし何度も投獄される。その後は、ハマスの創設者シェイク・アフマド・ヤシンの一番弟子兼補佐官として活動。
 
 2006年、ハマスがパレスチナ立法評議会選挙で大勝したことに伴い、ハニヤ氏はパレスチナの首相に就任。その後、ハマスとファタハの間の対立が激化し、2007年にはガザ地区でのハマスの一方的な統治が始まる。
 
 2017年にハマスの政治局長に選出され、その後はカタールにも滞在。ハマスの国際外交を代表する人物であり、停戦交渉にも積極的に関与していた人物だ。
 
 ハニヤ氏は、「調整型の現実主義者」としての側面も持つ。事実、ハニヤ氏は、状況に応じて柔軟に対応する能力を持っていたと報じられる。しかし、複雑な政治状況と長期化する紛争の中で、彼の調整型現実主義者としての役割には限界があったとも。

イスラエル ヒズボラ中枢を次々狙う

 ハマス最高指導者ハニス氏だけでなく、7月30日にはイスラエルがレバノンの首都ベイルートを空爆し、ヒズボラの最高幹部フアド・シュクル氏を殺害したと発表。
 
 攻撃は、27日にゴラン高原で発生したロケット攻撃への報復として行われた。ロケット攻撃では子どもを含む12人が死亡しており、イスラエルはヒズボラが関与していると主張した7
 
 一方、ヒズボラはイスラエルの攻撃に対し、ロケット弾や砲撃で報復。8月2日には、イスラエル軍機に対して地対空ミサイルを発射し、イスラエル北部の軍事拠点にも攻撃を行った。
 
 さらに、ヒズボラの最高指導者ナスララ師は「戦いは新たな段階に入った」と述べ、さらなる報復を予告する8
 
 ヒズボラは1982年、イラン革命防衛隊によってレバノン内戦中に創設。シーア派を中心とするこの組織は、レバノン南部を拠点とし、イスラエルに対する武装闘争を続けている。

 現在では、精密ロケットや無人機などの高度な兵器を保有し、イスラエル全土を攻撃できる能力を持っているとも9
 
 イスラエルは敵対勢力の中枢を狙い、組織の壊滅を図る戦略を取っており、ヒズボラはこれに対して激しい報復を行う。

中東緊張 遠のくガザ停戦 イランの次の一手は?

 中東の緊張が高まる中、イランの次の一手が懸念されるとともに、ガザ停戦の見通しについての動きが続いている。

 ガザ地区では、イスラエルとハマスの間で激しい戦闘が続いている。最近の報告によると、イスラエル軍はガザ市に対する大規模な地上攻撃を準備しており、北部ガザの住民に対して新たな避難命令を発出した。

 一方、国際社会は、この紛争を終結させるための停戦提案を推進している。国連安全保障理事会は、247日間にわたるガザの戦争を終結させるための包括的な三段階の停戦案を採択した。

 提案には、即時の完全な停戦、人質の解放、パレスチナ人の帰還、そしてガザでの人道支援の安全な配布が含まれている。

 また、イランはハマスやヒズボラなどの武装組織を支援しており、イスラエルとの対立において重要な役割を果たしている。

 最近の報道によれば、イスラエルによるハマス指導者イスマイル・ハニーヤの暗殺を受けて、イランとその同盟国であるヒズボラがさらなる報復行動を取る可能性が高まっている。

 他方、ガザでの停戦は依然として困難な状況にある。国連の停戦提案が採択されたものの、ハマスがこの提案を受け入れるかどうかは不透明である。イスラエルも国際的な圧力に対してどのように対応するかが、今後の鍵となっていく。

  1. 湯浅大輝「なぜイランで?イスラエルがハマス最高指導者を暗殺…パリ五輪に隠れて戦火を拡大、米国を巻き込む狙いか」JBpress、2024年8月3日、https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/82434
  2. 金子淳「ハマス最高指導者・ハニヤ氏、仕掛けられた爆弾で暗殺か 米紙報道」毎日新聞、2024年8月2日、https://mainichi.jp/articles/20240802/k00/00m/030/007000c
  3. 湯浅大輝、2024年8月3日
  4. Reuter「ハマス最高指導者、イランで暗殺 ハメネイ師「報復」宣言」2024年8月1日、https://jp.reuters.com/world/mideast/N2SPM7RANRP7ZCK3ULNW2WGRUI-2024-07-31/
  5. BBC NEWS JAPAN「ハマス、強硬派シンワル氏を新指導者に選出 最高幹部殺害受け」2024年8月7日、https://www.bbc.com/japanese/articles/c5ylwrz81neo
  6. 松倉佑輔「暗殺されたハマスの最高指導者ハニヤ氏とは 外交の中心的存在」毎日新聞、2024年7月31日、https://mainichi.jp/articles/20240731/k00/00m/030/238000c
  7. Laila Bassam, Emily Rose「イスラエル「ヒズボラ司令官殺害」、レバノン首都に報復攻撃」Reuter、2024年7月31日、https://jp.reuters.com/world/us/UMMTBEJB7JKVZKSWUXO2LIKOOY-2024-07-30/
  8. NHK NEWS WEB「ヒズボラ「戦いは新たな段階に入った」イスラエルへ報復の構え」2024年8月2日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240802/k10014533281000.html
  9. ロイター「情報BOX:中東の戦火拡大も、イスラエルと交戦するヒズボラとは」2023年10月17日、https://jp.reuters.com/world/security/ENKHCRGK4JM3HPGUQ62GXNA2UE-2023-10-17/
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