米大統領選まで1年 そもそもアメリカ大統領選挙とは? バイデン、若者からの支持失う トランプ、返り咲きの可能性も

北アメリカ
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Mohamed HassanによるPixabayからの画像

 来年のアメリカ大統領選挙まで1年を切った。米大統領選は2024年11月5日に行われる。今回の選挙は前回の2020年のような構図になる可能性がある。つまり、現職のジョー・バイデン氏とドナルド・トランプ氏の対決になる見込だ。

 しかし、今回は現職大統領であるジョー・バイデン氏に対し、ドナルド・トランプが挑む構図となっている。

 ただ、バイデン氏とトランプ氏は高齢であるため、将来にわたって健康面が心配されている。バイデン氏は82歳、トランプ氏は78歳。

 現時点では、二人の健康状態は良好であるが、投票日までに何か起こる可能性もある。英BBCの記者ノミア・イクバル氏によると、そのタイミングによって状況が変わるかもしれないという1

 もしも2024年元日までに候補者の重大な問題が生じた場合、新たな候補者が民主党や共和党から出る可能性がある。ただ、各州での予備選挙の結果次第で、事態はより複雑になるだろう。

 最悪の場合、2024年10月中旬でも、二人の名前は本選の候補者として残る。合衆国憲法によれば、死亡しても立候補は有効とされるからだ。

 過去にも同様の状況はあった。2000年に上院議員選挙に立候補していたメル・カーナハン氏は、飛行機事故で亡くなったが、死後の選挙で当選。2002年に特別選挙が行われるまで妻ジーン氏が代わりを務めた。

 大統領に当選した方が就任前に亡くなった場合、副大統領が代わりに就任し、その後任者を指名しなければならない。その後任者は議会の承認を受けて正式に副大統領に就任する。

 ただ、米国民の間では、二人の再選を望んでいる人は少ないようだ。むしろ、民主・共和両党に対する否定的な見方が過去最高になっている。

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米大統領選挙とは?


 アメリカの大統領選挙は夏季五輪が行われる年、つまり4年ごとに行われる。そして大統領選の投票日は「11月の第1月曜日の翌日の火曜日」と法律で定められている。2024年の投票日は11月5日だ。

 アメリカでは民主党と共和党の二大政党制が確立しており、両党が指名した候補者を差し合わせるのが基本。

 指名候補を選ぶ方法は党や州ごとに異なるが、手続きは新年から本格化する。その候補者たちは一般党員の代理人である「代議員」の獲得数で競い合う。

 そして全米50州とコロンビア特別区などで党員の支持を結集するのが、地域の学校などで行われる党員集会や、有権者が投票する予備選だ。

 現職の大統領が2期目に挑む場合、民主党のように各州で党員集会や予備選が行われますが、有力な対抗馬がいないことが多く、今回も形式的な手続きとなりそう。

 一方、共和党の候補者選びは、来年1月15日に予定されるアイオワ州党員集会から始まる。アイオワ州と次に予備選が行われるニューハンプシャー州で勝った候補者は、そこから注目を浴びることになる。

 共和党は7月、民主党は8月に全国党大会を開催。ここで正式に選ばれた指名候補が、11月5日の一般投票で大統領の座を争う。

 投票は各州単位で集計される。しかし全体の得票数ではなく、ほとんどの州で勝者がその州に割り当てられた選挙人を総取りし、合計の選挙人数が多い候補が大統領となる。

 選挙人は全米で538人いる。これが各州の人口などに応じて、カリフォルニア州には55人、テキサス州には38人などと割り当てられる。

 しかし、リベラルが強い州では民主党が選挙人を総取りし、保守色が強い州では共和党が総取りする傾向が続く。

 事実、1988年以降、全体の20州と特別区で勝利した政党は同じ。そのため、選挙の度に勝つ政党が違う「スイングステート」と呼ばれる州の結果で全体の勝敗が決まる。

 来年の選挙では約5つのスイングステートが全体の結果を分けることになりそう2

バイデン、苦戦 若者からの支持失う

 来年の大統領選まで1年となった5日、米紙ニューヨーク・タイムズが報じた世論調査が大きな話題を呼ぶ。接戦州6州のうち5州で、民主党のバイデン氏がトランプ氏に対し、4~10ポイント差でリードを許したためだ。

 米大統領選では、限られた接戦州の結果が全体の勝敗を左右する。前回は、6州すべてでバイデン氏が接戦を制して当選を果たしたが、逆にこれらの接戦州を落とせば再選は難しい3

 バイデン氏の苦戦の理由として指摘されるのが、若者や黒人、ヒスパニックといった有権者層からの支持の低迷だ。この層は本来、民主党の支持基盤だったはずだが、バイデン氏はつなぎとめに苦労する。

 ニューヨーク・タイムズの世論調査では、「非白人の40歳未満」の有権者層でバイデン氏が大きく支持を落としたことが判明した。この層は、2020年大統領選ではバイデン氏対トランプ氏で68%対29%と、圧倒的にバイデン氏を支持していた有権者層だが、現在は49%対42%と、接戦に持ち込まれている。

 また、若者の間では、イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突で大きく動揺する中東情勢について、バイデン政権の対応に不満を持つ声が多い。若年層では、イスラエルよりパレスチナを支持する傾向が顕著。

 パレスチナ自治区ガザ地区での人道危機を止めることができなければ、バイデン氏が若者層の支持を失う展開も考えられる。インフレ(物価高)をはじめとする経済問題がバイデン氏の不人気につながっているとの見方も根強い4

 ウクライナ問題についても予断を許さない。バイデン氏の息子ハンター・バイデンが取締役を務めるブリスマ・ホールディングスは脱税など多くの不正疑惑を抱いたウクライナの検察当局の捜査対象となっていた。

 ウクライナ情勢悪化の背景に、息子ハンター氏のスキャンダルを揉み消す狙いがあったとの声もある。

トランプ、返り咲いたら外交がズタズタ

 もしトランプ氏が勝利し、大統領に返り咲いた場合、いくつかの訴訟が絡んだ選挙戦になると予想される。そして大統領選に勝利して復帰する場合、自身の連邦法違反については恩赦を適用する可能性があるという見方が。

 ただし、この点に関しては、日本経済新聞が8月8日に報じたところによれば、「司法省は1974年、『自身の案件を判断しないという原則の下では、大統領は自身を恩赦できない』との見解を示した」5という報道がある。

 しかし、恩赦については自身に適用されないという意見が多いものの、前例がないため、裁判所の判断に委ねられる可能性が高いとされている。

 また、ロシアとウクライナの戦争の行方にも大きな影響がありそう。トランプ氏は以前から、ロシアとの対決を避ける傾向がある。

 そのため、大統領選と同時に行われる上下両院議員選の結果によるものの、もしもアメリカがウクライナへの軍事支援を急遽中止する場合もあり、そのときは、戦況はウクライナに不利な方向に傾く恐れがある。

 ハマスとイスラエルの問題についても、トランプ氏はガザ地区の人道支援に全く関心を持っていない6。そのため、ガザ情勢はますます悪化していくだろう。

 また、トランプ氏は18日、2024年の大統領選に再選した場合、日米を含む14カ国が参加する新たな経済圏構想である「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を破棄する意向を示す。

 TPPからのアメリカの離脱を主導したトランプ氏は、IPEFを「TPP2」と呼び、大統領に就任次第「たたきのめす」と強調した7

  1. BBC NEWS JAPAN「【米大統領選2024】 選挙の流れを変えうる四つの「予想外の展開」」2023年11月9日、https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-67330027 
  2. 朝日新聞デジタル「2024年11月のアメリカ大統領選 仕組みとこれからの日程を解説」2023年11月5日、https://digital.asahi.com/articles/ASRC43FZNRC3UHBI002.html 
  3. 高野遼「バイデン大統領が81歳に 支持低迷、再選に向けた三つの懸念とは?」朝日新聞、2023年11月21日、https://digital.asahi.com/articles/ASRCN01KRRCMUHBI013.html 
  4. 高野遼、2023年11月21日 
  5. 日本経済新聞「米大統領選挙 トランプ氏恩赦、指名争いの争点に浮上」2023年8月7日、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN064260W3A800C2000000/ 
  6. 山中 俊之「ハマス・イスラエル紛争でトランプ氏の再選に現実味、米外交は混乱・崩壊も」JBpress、2023年11月18日、https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/77998 
  7. Nathan Layne「トランプ氏、米大統領返り咲きならIPEF破棄へ」REUTERS、2023年11月20日、https://jp.reuters.com/world/us/BA4Y37QBHVOBJAMG4U64TQBP4U-2023-11-19/ 
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