WHO、エムポックスについて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」 アフリカ・コンゴで集中、世界へ広がりも

アジア
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Pete LinforthによるPixabayからの画像

 エムポックス(サル痘)の新たな感染拡大に伴い、世界保健機関(WHO)は14日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。
 
 これは、コンゴ民主共和国を中心とするアフリカ中部での感染が急速に拡大し、新たな変異株が確認されたことを受けての措置である1
 
 コンゴでの流行は、当初は地域的な感染であるエンデミックとして繰り返されていたが、しかし今回、新たな変異株が性的接触や日常的な濃厚接触を通じて感染しやすくなり、アフリカのブルンジ、ケニア、ルワンダ、ウガンダなどの近隣諸国に広がっている。
 
 さらに、変異株はアフリカ以外でも確認されており、スウェーデンではアフリカ外で初めての症例が報告された2
 
 新たな変異株は、致死率が高く、特に子どもたちの間で感染が広がりやすいという。アジア諸国もこの変異株に対する監視を強化しており、感染国からの渡航者に対する入国審査を強化している状況である3
 
 WHOのテドロス事務局長は、感染拡大を抑え、人命を救うためには国際協力が不可欠であると強調した。WHOは当座の対応計画に1500万ドルが必要であるとし、まず150万ドルを拠出し、追加の資金を募る方針を示した4

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新変異株

 新たな変異株は「クレードI」と呼ばれ、重症化しやすく、致死率が高いとされている。そして特に、家庭内での通常の接触を通じて、子どもたちの間で感染が広がりやすいと報告されている5
 
 新変異株の感染源は、主にアフリカ、特にコンゴを中心に広がっている。感染経路としては、接触感染が主であり、特に性的接触や家庭内など日常的な濃厚接触を通じて感染が広がるという。
 
 スウェーデンで確認された症例も、感染者が感染が広がるアフリカの地域に滞在していたことが報告されており、アフリカからの感染拡大が起点となっていると考えられている。

 この新変異株は、アフリカ以外にも広がる可能性があるため、国際的な監視と対応が求められている状況である。
 
 新しい変異株は、従来の株よりも病原性が高く、感染後に重症化するリスクが高いという。新変異株は、感染した人々に広範囲の皮膚病変を引き起こし、特に小児や免疫力が低下している人々において重篤な症状を引き起こす可能性が高い。
 
 新変異株は、性的接触だけでなく、非性的な接触を通じても感染が広がることが確認された。これにより、感染の拡大がより容易になり、結果として重症化するケースが増えていると考えられている6
 

コンゴでの感染拡大

 コンゴにおけるエムポックスの現状は深刻だ。2年以上前からコンゴで患者数が増加しており、ここ最近ではさらに悪化している。

 特に、ウイルスの変異によりヒトからヒトへの感染が増加しており、コンゴ国内の紛争から逃れた避難民の間でも感染の疑いが報告されている。
 
 特に避難民キャンプでは、過密な環境や衛生状態の悪化により、感染症のリスクが高まっている。そして、難民キャンプでの密接な接触が感染拡大の一因ともなっている。

 避難民は、栄養不良や医療サービスの欠如といった問題にも直面しており、特に子どもたちが深刻なリスクにさらされている7
 
 感染の拡大は、特に男性と性交渉を持つ男性の間での性的接触を介した感染が主な原因となっており、コミュニティ内でのアウトブレイクや野生動物の肉であるブッシュミートの消費も感染リスクを高めている。
 
 また、紛争地域での避難民キャンプでは、密集した環境や性的暴力の頻度が高いため、さらなる感染拡大のリスクがある8
 
 しかし、コンゴ国内では、ワクチン接種や感染症対策の体制がまだ十分に整っていない状況が続いている。
 
 コンゴでは新型コロナウイルスのワクチン接種率も非常に低く、これがエムポックスを含む他の感染症対策にも影響を及ぼす9
 

アフリカ以外への広がり

 エムポックスは今年、スウェーデンでアフリカ以外で初めて重症化しやすいタイプのエムポックスが確認され、さらにフィリピンでも感染者が報告された。このように、エムポックスはアフリカ以外の地域でも感染が広がりつつあり、国際的な公衆衛生上の懸念が高まっている。
 
 スウェーデンでのエムポックスの初発症例は、アフリカでの滞在中に感染した人物から発見された。この人物は、エムポックスのクレードIが大規模に流行しているアフリカの地域を訪れた後、スウェーデンのストックホルムで医療機関を訪れ、診断を受けた10
 
 このケースは、アフリカ以外で初めて確認されたクレードIのエムポックス感染例であり、スウェーデンの公衆衛生機関によって報告された。
 
 8月には、タイの保健当局が、アフリカから中東を経由してタイに到着したヨーロッパ人の男性(66歳)がエムポックスに感染していることを発表した。男性は、タイに到着した翌日に発熱と発疹の症状が現れ、医療機関で診断を受けた結果、エムポックスの感染が確認された11
 
 今のところ、エムポックスの感染経路としては、性的接触や動物からの感染、家庭内での感染が指摘されており、特に男性間での性的接触が感染の主な伝播経路となっている。このため、国際的な協力と感染対策の強化が求められている。

  1.   Bhanvi Satija, Jennifer Rigby「WHO、エムポックスで緊急事態宣言 2年ぶり2回目」Reuter、2024年8月15日、https://jp.reuters.com/world/economy/IQZVZPMF3ZM4VHJ3JZXJRHUMOQ-2024-08-14/
  2. Bloomberg「エムポックス感染拡大に身構えるアジア、スウェーデンで変異株確認」2024年8月20日、https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-20/SII4EIT0AFB400
  3. Bloomberg、2024年8月20日
  4. Bhanvi Satija, Jennifer Rigby、2024年8月15日
  5. Molly Bohannon「エムポックス(サル痘)変異株、アフリカ以外で初の症例 スウェーデンで確認」Forbes、2024年8月16日、https://forbesjapan.com/articles/detail/73127
  6. Philippa Roxby「New mpox strain in DR Congo ‘most dangerous yet’」BBC、2024年7月20日、https://www.bbc.com/news/articles/c2vv0pgggqzo
  7. World Vision「エムポックスは子どもたちにとって命に関わる深刻なリスク 国際NGOワールド・ビジョンが警鐘」2024年8月21日、https://www.worldvision.jp/news/press/20240821.html
  8. World Vision、2024年8月21日
  9. 平野光芳「ワクチン接種率0・3%の国で<中>コロナより恐れられる、あの生き物」毎日新聞、2022年3月6日、https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20220228/pol/00m/010/021000c
  10. Reuters「Sweden confirms first case of mpox」CNN World、2024年8月15日、https://edition.cnn.com/2024/08/15/europe/sweden-mpox-viral-infection-intl/index.html
  11. ロイター「タイ、アフリカから渡航の外国人にエムポックス感染確認」2024年8月21日、https://jp.reuters.com/economy/AHPOKRRVNBO37PLK3AMTF26HDY-2024-08-21/
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