【本日のニュース 2025年5月15日(木)】食品「3分の1ルール」に公取委が警鐘 

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要約

公正取引委員会は、食品流通の商慣行「3分の1ルール」が、食品メーカーに過度な負担を強いているとする実態調査報告書を公表した。大手小売業者がメーカーと協議せず納期を一方的に設定する行為は、独占禁止法違反となる恐れがあると指摘。3分の1ルールは食品ロスの主要因にもなっている。

記事のポイント

  • 公正取引委員会は、食品流通における「3分の1ルール」と小売業者の一方的納期設定を問題視し、独占禁止法違反の恐れを指摘。
  • 「3分の1ルール」は1990年代に消費者の鮮度志向から大手小売業者が導入し、業界全体に定着した日本特有の商慣行である。
  • このルールにより、賞味期限が残っていても返品・廃棄が発生し、食品ロスの拡大とメーカーへの過度な負担が深刻化している。

Summary

 On May 12, the Japan Fair Trade Commission (JFTC) released a report on its investigation of business practices in food distribution, and found the “one-third rule” for food deliveries problematic. In particular, the report pointed out that the practice of retailers setting delivery dates without consulting with food product manufacturers may constitute abuse of a superior bargaining position under the Antimonopoly Law.

 The one-third rule is a practice unique to Japan that divides the period from the date of manufacture to the expiration date into three equal parts and requires delivery to retailers within the first third.

 公正取引委員会は12日、食品流通の商慣行に関する実態調査報告書を発表。報告書では、「3分の1ルール」と呼ばれる食品の納入期限に関する独自の商慣行を問題視1。特に、大手スーパーなど小売業者が食品メーカーと協議せずに納期を設定する行為について、優越的地位の乱用として独占禁止法違反となる恐れがあると指摘。

 「3分の1ルール」とは、食品の製造日から賞味期限までの期間を3等分し、最初の3分の1の期間内に卸売業者が小売店へ納品しなければならないという、日本特有の商慣行。このルールは1990年代に消費者の鮮度志向の高まりを背景として大手小売業者が導入し、その後業界全体に定着した2

 消費者に新鮮な商品を提供する目的で始まったものの、賞味期限が十分に残る商品でさえ納品期限超過を理由に返品・廃棄される事例が相次ぎ、食品ロスの主要因となっている。

 3分の1ルールの最大の問題点は、メーカーや卸売業者への過度な負担だ。公正取引委員会の調査では、約1,100社の食品メーカーの7割が不満を表明。特に、納品期限を1日でも超過すると全額返品費用を負担させられるケースが目立つという。

 また、メーカーとの十分な協議なく小売業者が一方的にルールを設定する行為は、独占禁止法が禁止する「優越的地位の濫用」に当たる可能性があると指摘されている3

3分の1ルールとは?

  • 3分の1ルールは、日本の食品流通業界で広く用いられている商慣行で、法律ではなく業界の自主ルール。
  • 加工食品など賞味期限が設定されている商品について、製造日から賞味期限までの期間を3等分し、それぞれの期間に役割が割り当てられている。
  • 最初の3分の1の期間内に、卸売業者は小売店に商品を納品しなければならない(納品期限)。
  • 次の3分の1の期間は、小売店が商品を店頭で販売できる期間(販売期限)。
  • 最後の3分の1は、消費者が購入し、賞味期限内に消費する期間とされている。
  • 例えば賞味期限が6か月の商品なら、製造から2か月以内に納品、次の2か月が販売期間、最後の2か月が消費者の消費期間となる。
  • このルールは消費者に新鮮な商品を届ける目的で導入されたが、納品期限を過ぎた商品が返品・廃棄されることで大量の食品ロスの原因にも。
  • 欧米では納品期限を「2分の1」や「3分の2」とする国も多く、日本の「3分の1」は特に厳しい設定となっている。

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(※1=消費者庁・環境省・農林水産省(2024年6月)/※2=大手コンビニの中央値。公正取引委員会(2020年)) 食品ロスは、コロナ禍やウクライナ侵攻、気候変動など、地球規模の事件と繋がっており、貧困や飢餓の問題にも影響を与えている。社会...
  1. 食品納期の商慣行「3分の1ルール」、独禁法違反の恐れ…公取調査報告で問題視. (2025). Retrieved 15 May 2025, from https://www.yomiuri.co.jp/national/20250512-OYT1T50136/
  2. スーパーなど優越的地位を乱用し納期「3分の1ルール」、食品ロスも発生…公取委が商習慣を問題視. (2025). Retrieved 15 May 2025, from https://www.yomiuri.co.jp/national/20250512-OYT1T50161/
  3. (令和7年5月12日)フードサプライチェーンにおける商慣行に関する実態調査について. (2025). Retrieved 15 May 2025, from https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2025/may/0512_foodsupplychain.html
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