英国ラグビーの失敗の核心は、スポーツを過度に市場原理へ委ね、社会的基盤の維持を後景に追いやってきた点にある。放映権収入の偏在やクラブ間格差の拡大は、経営を短期的収益に依存させ、地域共同体としての役割を空洞化させた。
こうした反省の延長線上に位置づけられるのが、英国政府がサッカー界への導入を進める「独立規制当局(IFR)」である。IFRはクラブを公共的資産と位置づけ、財務の持続性監督やファン資産の保護、オーナー審査、収益再分配を通じて、市場と公共性の均衡回復を図る。これは、アメリカ型のオーナー至上主義とも、従来の放任的自己統治とも異なる「第三の道」の模索と言える。
結局のところ、英国ラグビー界の崩壊は、スポーツを経済論理の従属物として扱った帰結であり、サッカー界への明確な警鐘である。サッカーにおいても同様の制度的疲労を放置すれば、競技はいずれ社会の関心を失いかねない。IFRの導入は、スポーツを経済的持続性と社会的共有価値の双方に根ざした存在として再定義できるかを問う、重要な試金石となるだろう。
1イングランド・プレミアリーグは、豊かな歴史と国際的ブランド力を背景に、世界で最も商業的に成功したサッカーリーグへと成長してきた。 2しかし現在、その栄光の陰で構造的な疲弊が深刻化している。 32022年から2023年にかけて名門クラブが相次いで破綻した事実は、個別の経営失敗にとどまらず、リーグ全体の制度的脆弱性を浮き彫りにした。
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