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2023年の世界文化遺産への登録を目指す国内候補に選ばれた「佐渡島の金山」(新潟県佐渡市)について、政府がユネスコへの推薦を「見送る」としていたものの、それが一転、1月28日、岸田文雄首相は、
本年申請をおこない、早期に議論を開始することが登録実現の近道であるといいう結論に至った。
と述べ、今後、ユネスコへ推薦する見通しであることを明らかにした。
“一転“して見送りになった経緯については、岸田首相は、
変わったとか(方針を)転換したこととの指摘は当たらない。
と述べてはいたものの、背後に安倍晋三・元首相の背景がチラついているのは明らかだった。
佐渡金山は、昨年末の21年12月26日に文化審議会において国内候補に選定されていたものの、この決定に対し、佐渡金山は戦時中に朝鮮人の強制労働が行われたい歴史があることから韓国政府が反発、外務省も「登録が見込めない」という理由から、ユネスコへの推薦に消極的な姿勢を示す。
ところが、そこで安倍元首相が動く。
(韓国に)ファクトベースでしっかり反論すべきだ。
論戦を避けた形で申請しないのは間違っている。
などと主張。
自民党の政調会長でもある高市早苗や保守論客たちも、一斉に岸田首相のバッシングを展開。ついに岸田首相は見送りの方針を一転させた。
ただ、この一連の動きから、「世界遺産」というものが、「政治」問題化し、「政治遺産」と化していることが現実のようだ。
そもそも、「世界遺産」というものに熱狂しているのは、日本人だけのようだ。その有り様は、「異常なオリンピック人気」、「ノーベル賞人気」とも重なる。 “ガラパゴス化“し、経済も政治も三流となった、この日本が唯一寄り添える、“心のより所“が、オリンピックとノーベル賞、そしてこの世界遺産なのだ。
しかし、本来、世界遺産というものは、“落ちぶれた日本人“のためにあるものでなく、世界人類の共通の遺産であるもの。そして、その世界遺産そのものについても、さまざまな“負“の側面がある。
今回は、この世界遺産の実情に迫っていく。
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「佐渡島の金山」をめぐる問題
今回の「佐渡島の金山」をめぐっては、保守派だけでなく、さまざまなマスメディアや、あるいは世論からも、「安倍元首相や高市氏の主張は当然」との声や、「韓国が世界遺産を政治問題化している」との声や、「岸田首相が弱腰すぎた」との声が上がっている。
しかしながら、そのような声は的外れだ。実際には、政府の「二枚舌」的な行動が、国際的に問題になることを見越した上での判断であった。