Susann MielkeによるPixabayからの画像
2日、米国防総省のライダー報道官は、アメリカ本土上空を偵察気球は飛行しており、アメリカ軍が追跡していると明らかに。国防当局者は、
「気球は中国のものだと確信している」
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と強調。破片が地上に落ち市民に危害をもたらす影響を考慮し、撃ち落さずにそのまま監視を続けているとする2。
当初、中国側は自国の民生用の気象研究飛行船であると認め、幕引きを図ったとみられるが3、米メディアは3日、ブリンケン国務長官の中国への訪問を延期すると報道。
3日、ブリンケン国防長官は中国の外交トップである王毅共産党政治局員と電話会談、
「無責任な行動であり、明白な主権侵害と国際法違反だ」
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と批判。5日~6日にかけ予定されていた中国訪問を延期した。
バイデン米大統領は4日、アメリカ東海岸南部沖で偵察気球を撃墜したと明らかにする。
そして、1日に米本土への飛来の報告を受けた後、人的な被害の危険がなくなり次第、撃ち落すよう、国防総省の命じていたと記者団に語った5。
米中対立緩和 気球が無に
「現時点では建設的な訪中の状況が整っていない」
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3日夜、ブリンケン国務長官は記者団を前に厳しい表情で語る。同じ日の夜に北京へ出発する予定だった。しかも、多くの高官が同行する「異例の布陣」(米政府筋)で米中の対立緩和へと外交努力をする構えだったという7。
しかし、米本土に飛来した気球がこのようなムードを無にした。
気球は、1月末に米空域に入っていたという。国務省の高官らによると、2月1日の夕方にはブリンケン氏らが在ワシントンの中国大使館の高官らと協議8。
水面下で、対応を協議していたという。だが結果として、訪中は見送りに。米議会の反発による影響があった。
当初、中国共産党系のメディアは、
「米国の自作自演」
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と突き放す。しかし、ブリンケン氏の訪中延期とともに態度を一変。
中国外務省も、繰り返し報道官の談話を発表するなどし、不可抗力によりアメリカを飛行したとして釈明、遺憾の意を示す。
国際政治学者のイアン・ブレマー氏は、
「習国家主席にとって最悪のタイミングだ」
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とCNNテレビで解説した。
偵察気球の歴史 日本は戦時中「風船爆弾」を9000個米国本土へ
偵察気球の歴史は200年以上前のフランス革命にまで遡り、冷戦時代にも情報収集の目的で頻繁に使われた11。
英メディアによると、偵察気球が最初に使われた記録は、フランス革命戦争中の1794年。その後、1860年代にもアメリカ南北戦争中、北軍が情報集中の目的で使用。
冷戦時には、低コストでの情報手段として、米ソ両国が使用した。
現代の偵察気球は、カメラやレーダーなどの機器を搭載し、太陽光発電で動くものもある。一般的な高度は2万4000~3万7000メートル。人工衛星に比べ動きが遅いため、時間をかけてより低い高度から広い範囲を観測できる利点が。
また、低コストで簡単に打ち上げか可能というメリットも。ここ最近は、人工衛星を攻撃する武器の開発も進み、イギリスを含む複数の国が再び、偵察気球への関心を高めているという12。
日本は戦時中、「風船爆弾」を活用してきた。爆弾をつるした気球のことで、太平洋戦争末期の1944年秋から翌年の春にかけ、偏西風に乗せ、9000個がアメリカ本土に向け飛ばされた13。
うち、少なくとも300個が米国本土へ到達したという。
何のための偵察気球か?
今回の気球について、中国外務省は、
「研究用であり飛行コースを外れた」
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と繰り返し述べているが、しかし中国の軍事研究者が最近、一般的にも入手可能な論文で、気球の開発を進め特定の作戦向けに配備すべきであると主張していたことが判明15。
これによると、
「特定飛行体」
と記された気球を研究する人民解放軍が昨年の4月に発表した論文では、気球について、
「敵の防空システムを誘発・稼働させることができ、電子偵察の実行のための条件や、防空システムの早期警戒検知の評価、作戦対応能力を測ることができる」
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と指摘、敵の防空耐性に対するテスト機能が、軍事的な有用性であると主張していた。
ロイター通信が入手した政府関連文書によると、中国の軍部と国の研究機関が今回の気球のような「高高度気球」と関連技術を購入していたことが判明。
一方、米ワシントンボスト紙は匿名のアメリカ当局者の話として、中国が偵察気球のプロジェクトを実行しているとの見方を伝える17。
これによると中国沿岸部の海南省から気球を操作し、日本、インド、ベトナム、台湾、フィリピンなどを偵察対象にしていた可能性があるという。
- ワシントン=共同「米本土に中国偵察気球」西日本新聞、2023年2月4日付朝刊、5項
- 共同、2023年2月4日
- 共同、2023年2月4日
- 金子渡、坂本信博「米国務長官が訪中延期」西日本新聞、2023年2月5日、3項
- ワシントン=共同「米軍、偵察気球を撃墜」西日本新聞、2023年2月6日付朝刊、1項
- 北京、ワシントン、共同=西日本新聞「対立緩和 気球が一蹴」西日本新聞、2023年2月5日付朝刊、5項
- 共同、2023年2月5日
- 共同、2023年2月5日
- 共同、2023年2月5日
- 共同、2023年2月5日
- 共同「偵察気球とは…低コスト、利便性で再評価、歴史古く仏革命戦争にも」産経新聞、2023年2月5日、https://www.sankei.com/article/20230205-NLEGVFDSSRKCPNQ6ONBDUWI3UE/
- 産経新聞、2023年2月5日
- 東京新聞「気球の軍事活用っていつから?衛星やドローンより有利な点って? 日本も9000個をアメリカ本土に」2023年2月7日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/229690
- ロイター「焦点:中国、高高度気球の軍事利用に強い関心」2023年2月7日、https://jp.reuters.com/article/usa-china-spy-military-idJPKBN2UH08S
- ロイター、2023年2月7日
- ロイター、2023年2月7日
- https://www.washingtonpost.com/national-security/2023/02/07/china-spy-balloon-intelligence/