ライドシェア、一部条件付きで導入 世界の状況 求められる”タクシー業界”と”ITプラットフォーマー”双方の既得権益の打破

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Olle AugustによるPixabayからの画像

 政府はライドシェア(相乗りサービス)の合法化を2024年4月に条件付きで決定。タクシー会社が運行を管理し、車両不足が深刻な地域や時間帯に限って、一部限定解禁する。

 今、タクシーで乗客を運ぶ場合は、道路運送法第3条第1号ハによって規定される「一般乗用旅客自動車運送事業(一個の契約によりロの国土交通省令で定める乗車定員未満の自動車を貸し切って旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)」に該当し、同法第4条に基づく許可が必要。

 また、タクシーの運転手は、道路交通法に基づいて普通第二種免許を取得する必要がある。これらの規制は、国民の安全と公共の福祉を守るためにありますが、ライドシェアの合法化を支持するのは、新自由主義の立場からだ。

 菅義偉前首相はライドシェアの合法化を後押しし、「ライドシェア解禁は避けて通れない」と述べまた。一方で、小泉進次郎元環境相は「私はライドシェア推進派ではありません。タクシーとの共存派です」と述べながらも、導入を推進する姿勢を見せる。

 ライドシェアの合法化に向けた動きは以前からあったが、最近再び注目されたのは、3月29日に開かれた第15回新しい資本主義実現会議でのこと。

 Zホールディングスの川邊健太郎社長(当時、現LINEヤフー会長)は、完全な自動運転はまだ先の話であり、その間に「ライドシェアサービスの拡充に努めるべき」であると述べ、さらに日本を「完全に移動後進国」であるとし、「既存の事業者に対しては政治が補償し、圧倒的大多数の国民に、ライドシェアのメリットを提供すべきだ」とする1

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ライドシェアとは?

 日本語で「相乗り」と呼ばれるライドシェアは、アメリカや中国など海外では様々な形で普及する。

 例えば、アメリカの大手システムでは、移動したい人が車に乗りたい場所や行き先をスマホのアプリで送信すると、登録済みの一般の方が自家用車で迎えに来てくれる仕組み。このシステムでは、車を手軽に利用できるだけでなく、タクシーよりも費用が安く抑えられるという利点も。

 一方、日本ではライドシェアは原則的に認められておらず、現在は過疎地の移動手段確保など「国家戦略特区」として認められた場合のみ実施が可能。そのうち、兵庫県北部の養父市では、国家戦略特区の制度を利用してライドシェアを導入。

 ライドシェアの運行は主に山間部の「タクシー空白地帯」に限定されており、市街地のタクシー会社などが共同で設立したNPOが運行の管理を行う。ドライバーは特別に許可を得た地元の住民で構成されており、現在は11件の登録がある。利用者とは顔なじみとしての関係もあるそう。

 ライドシェアの議論が活発化している理由は、深刻な「タクシー不足」。現在、全国のタクシー会社で働く運転手の数は、今年3月末時点で約23万人。4年前のコロナ禍以前から約20%減少している。運転手の高齢化と、新型コロナウイルスによる収入減少などにより、離職率がさらに増加。

 しかし、外国人観光客も戻りつつあり、さらなる不足が懸念される中で、解禁を求める声が上がる。

 他方、ライドシェアの解禁については、タクシー業界は反対の姿勢を示してた。全国ハイヤー・タクシー連合会という業界団体は、「安全と安心が担保された輸送サービスの提供が地域公共交通としてのタクシーの役割だ。安全・安心に関する問題点が多いライドシェア解禁は、日本における輸送サービスの根幹を揺るがす」と主張する2

世界の状況

 「ライドシェア」と言っても、世界にはいろんなタイプがあり、注意が必要だ。Uber Japanが規制改革推進会議に出した資料によると、ライドシェアはTNC型とPHV型の2つに分かれるという

 TNC(Transportation Network Company)型は、Uberのような配車プラットフォームがドライバーの管理や運行をして、ドライバーに課す条件は基本的にプラットフォームが決める。TNC型を使っている国では、この運用ルールを法律で決めていて、プラットフォームだけでなく、ドライバーにも規制をかける場合もある。

 一方、PHV(Private Hire Vehicle)型は、個人タクシーの派生型のようなもので、ドライバーは国の登録や車両・運行管理をしなければならない。ライドシェアをするためには、ドライバーは国の要件を満たして登録しなければならない。

 また、プラットフォームに関係なく、規制当局がドライバーを規制する。

 要するに、ライドシェアは手軽な個人タクシーのようなもの。通常、流し営業や、タクシープールの利用はできない。アプリを使って予約や配車をして運行する。

 多くの場合、人々が思い描くライドシェアはTNC型だろう。一定の規制はあるが、ドライバーはプラットフォームに登録することでサービスを提供できる。

 Uber Japanが議論した規制改革推進会議では、「諸外国におけるライドシェア法制と安全確保への取り組み」という報告書が出ている。それによると、G20主要国では、アメリカやカナダ、ブラジル、メキシコ、インドがTNC型を採用していて、中国、オーストラリア、英国、フランス、ドイツ、ロシアがPHV型を採用。

 韓国やイタリアはどちらもまだ導入していない。この中で、日本はPHV型の導入を望んでいるという3

求められる”タクシー業界”と”ITプラットフォーマー”双方の既得権益の打破

 ライドシェアの利点は、一般的なタクシーに比べて比較的安価に利用できること。手頃な価格で移動できるため、頻繁に移動しなければならない人にとって魅力的だ。

 しかし、デメリットもある。海外ではライドシェアの急速な普及とともに、安全性への懸念が高まった。ライドシェアのドライバーによる強盗や殺人、暴行などの犯罪が世界各地で報告されており、利用者にとって重大な安全上のリスクとなっている国も。

 また、ライドシェア導入には既存の業界との競争も伴う。日本においても「ライドシェア」の解禁に対し、タクシー業界からの強い反発がある。ウーバーは2014年3月に日本に上陸したが、日本の規制をクリアできず、アプリで配車されるのは提携した会社のタクシーのみとなった。

 その間、タクシー業界は独自の配車アプリを立ち上げ、ウーバーの価値を低下させた。結局、世界で普及しているライドシェアも日本では規制され続けている。ウーバーはその後、規制のない飲食デリバリーの「ウーバーイーツ」に重点を置く4

 2014年1月27日には、「タクシー『サービス向上』『安心利用』推進法」として国土交通省が呼ぶ法律が施行。この法律により、特定地域におけるタクシーの台数削減や新規参入の禁止などを事業者と協議会で決定できるようなるのだが、しかしこれがタクシー運転手不足の一因ともなった。

 一方で、ライドシェアもITプラットフォーマーの既存権益という側面がある。ライドシェアを導入しても、市民に本当に利益が及ぶかは不透明だ。地方交通手段の衰退を救済するためには、ライドシェアだけで全て解決するわけではない。

  1. 室伏謙一「ライドシェア解禁で「タクシー不足」加速?地方がたどりそうな“悲惨な末路”とは」DIAMOND Online、2023年12月1日、https://diamond.jp/articles/-/333160
  2. NHK政治マガジン「「ライドシェア」って?なぜ浮上?」2023年9月22日、https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/102345.html
  3. 下山哲平「TNC型とPHV型に大別、日本導入の焦点はPHV型か」ライドシェアの法律・制度の世界動向(2023年最新版)、自動車運転ラボ、2023年11月13日、https://jidounten-lab.com/u_44043
  4. 磯山友幸「「駅前ですらタクシーがつかまらない」それでも”ライドシェア解禁”が遅々として進まないワケ」PRESIDENT Online、2023年10月31日、https://president.jp/articles/-/75288
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