地球温暖化により影響を受けるコメ 地域別のリスク 稲作が温暖化を加速させる可能性も 

地球温暖化
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Ngo Minh TuanによるPixabayからの画像

 地球温暖化が進むとともに、温暖化が日本のコメの生産に影響を与える可能性が危惧されている。

 すでに一部の地域や極端な高温であった年では、収穫量の減少が見られ、白未熟粒(しろみじゅくりゅう)と呼ばれる見た目や味の悪い品質が見られる1

 研究では、気候変化のシミュレーションによる違いは見られるものの、九州地方の一等米比率は今世紀半ばでは約30%、 今世紀末では約40%も減少することが予測された2

 一方、農研機構などによると、現在比3度以上の平均気温となった場合、東北以南のコメ生産は最大15%の減収が予測されるほか、高温への対応策をとらなかった場合、白未熟粒や玄米充実不足などの影響で、一等米の比率も低減することは確実という3


 また気象庁気象研究所の分析によると、温暖化で大気中の水蒸気量が増え、今世紀末には梅雨時期の降水量が増加すると予測されており、気候変動に備えるには暑さだけでなく、雨の降り方の変化や、それに伴って懸念される病害にも対応しなければならない4

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地球温暖化の影響により、日本の農業にどのような影響があるのか 全国の農業の現場から得られた実験を元に、その研究や技術がどのよ うに利用されているかを紹介した内容。
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地域別のリスク

 日本は北から南までさまざまな気候帯が存在し、地域によって地球温暖化の影響も異なる。

  北海道では、2030年代の平均気温は現在よりも1.3~2.9℃(年平均2.0℃)上昇し、主要な農耕期間である5~9月は平均1.8℃上がると見積もられている。

  温暖化で稲の穂が出る時期が早まり、現在よりも安定した気象条件で実ることができるため、6%ほど収穫量が増加すると見積もられた5

  北海道のコメ作りの歴史は冷夏との戦いだった。しかし、温暖化の進行で夏の平均気温が高くなるにつれて、コメの収量も増加。ただし、高温や二酸化炭素濃度の増加が収量減少や品質低下につながることも6

 東北地方においても、温暖化で稲の穂が出る時期が早まり、現在よりも6%ほど収穫量が増えると予想。しかし近年、東北地方においても大型の台風の接近・上陸が頻繁にコメの倒伏や品質低下を引き起こす可能性が。

 九州地方では地球温暖化のデメリットを大きく受ける。一等米の比率が今世紀半ばでは約30%、 今世紀末では約40%も減少することが予測された7

稲作が温暖化を加速させる可能性

 一方で、稲作が温暖化を加速させるとの指摘も。

  たとえば、2014年に公表された「2010年の世界の温室効果ガス排出量」の内訳を見ると、総排出量490億トン(二酸化炭素=CO2換算)のうち、発電が最も多く、全体の25%を占めていたが、その次に多いのは農林業で、24%。

  農林業による温室効果ガス排出の内訳を見ると、森林伐採による影響が37%、次いで牛などの反芻動物の消化管内発酵によるゲップの排出などが21%、肥料が10%、化学肥料が7%、そして5%の割合で「コメ(英語表記:rice)」という項目が含まれている。

  コメによって排出される温室効果ガスの多くは、メタン(CH4)。これは稲が作り出すのではなく、水をはった田の土中に生息する嫌気性細菌が生成したもの。

 そのおよそ9割を、稲が土壌から吸収して、そのまま大気中に放出してしまう8

  ただ、対策を行っている国も。ベトナムで導入された「節水型稲作」(AWD)は。土壌に適切に組み合わせることで、水田のメタン排出量を30~70%減少させることができるという9

進む対策

 対策は進んでいる。三菱商事は昨年6月28日、脱炭素の実現のために温室効果ガスの排出量を取引する「J―クレジット」制度に、稲作で参画すると発表10

  この制度は、農家が排出を削減した「価値」をクレジット(証書)に変換するプロジェクト。これにより、農家の方々には新たな収入源を提供し、脱炭素と農業支援を同時に実現することが期待されている。

  産業界では、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする取り組みが広まっている。削減できない排出量については、第三者が削減分の「クレジット」を買い取ることで相殺することが考えられている。

  プロジェクトでは、稲作の過程で田の水を抜く「中干し」により、クレジットを生み出す。通常の2〜3週間の中干し期間を1週間ほど延長することで、土壌内の細菌の活動を抑え、CO2の25倍もの温室効果を持つメタンの発生を約30%減少させることができるという。

  農家の中には、中干しの延長で収量が減るのではないかとの懸念があり、そのためにクレジットづくりが減収にならないレベルの対価を支払い、中干しを延ばして収穫された「環境配慮米」の流通にも協力。

 コメづくりに温暖化対策という新たな価値を付ける。

  1. 西森基貴「温暖化でお米の生産はどうなる?」ニュース 農業と環境 No. 110 2016.12、https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/no110_4.pdf
  2. 西森基貴、2016年
  3. マイナビ農業「温暖化の進行でコメ収穫量減の危機。新潟大学研究室が新品種開発急ぐ」2023年3月13日、https://agri.mynavi.jp/2023_03_12_220822/
  4. 毎日新聞「コメ襲う温暖化(その1) 病害や白濁、品種開発急務」2023年1月5日、https://mainichi.jp/articles/20230105/ddm/001/040/110000c
  5. 中辻敏朗「地球温暖化は北海道の農作物にどう影響するか」北海道立総合研究機構、2012年3月23日、https://www.hro.or.jp/hro/info-headquarters/event-info/lunch/post-33.html
  6. 片山由紀子「温暖化がビジネスチャンスに? 気温上昇でごはんがおいしくなるワケ」ITmediaビジネス、2019年6月15日、https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1906/14/news088.html
  7. 西森基貴、2016年
  8. 青沼陽一郎「日本人に伝えたい「稲作が温暖化促進」の衝撃事実」東洋経済ONLINE、2022年8月1日、https://toyokeizai.net/articles/-/607891
  9. オリバー・フリス、ライナー・ワスマン、ビヨルン・オレ・サンダー「水田は温暖化ガスの深刻な排出源、削減のためAWD型のコメ作りを」ニューズウィーク日本版、2022年3月3日、https://www.newsweekjapan.jp/stories/technology/2022/03/post-98190.php
  10. 青田秀樹、加藤裕則「コメづくりで温暖化対策、三菱商事がJクレジット参画 農業支援にも」朝日新聞デジタル、2023年6月28日、https://digital.asahi.com/articles/ASR6X6DC6R6WULFA03G.html
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