不完全な統計が「民意」を決める危うさ 世論調査の限界
現代日本の政治において、世論調査は政策判断や選挙戦略の重要な根拠とされてきた。しかし、その信頼性が情報環境や生活様式の変化によって構造的に低下している。衆議院解散の判断材料として用いられた調査結果も、民意を正確に反映しているとは限らず、不完全な統計によって「民意」が定義される状況は、民主主義の正統性を損なう危険もある。
かつて世論調査の主流であるRDD(無作為番号ダイヤル)方式は、低回答率と標本の偏りという限界がある。見知らぬ番号からの着信を避ける行動が一般化し、調査は協力的な一部の層の意見に依存しがちだ1。対話形式による調査では避けられないバイアス(社会的望ましさ)よってもたらされた意見についても、いかようにも処理されてしまう。
国際的には、米国を中心に確率的パネル(ABS方式)への移行が進み、調査の精度と透明性を制度的に担保しようとしている2。一方、日本では便宜的な商用パネル調査が常態化し、メディアも調査設計の詳細を十分に開示していない。この不透明さは、世論調査を「民意」として政治判断に用いる正当性を弱めている。
世論調査は本来、政治を正当化する装置ではなく、社会の実像を測る計測器である。民主主義の基盤は、正確に測られた民意の上にのみ成り立つことを忘れてはならない。
1イギリスもMiller判決により、行政権の濫用に対する司法的統制を明確にした。 2世論調査は本来、政治を正当化する装置ではなく、社会の実像を測る計測器である。 3民主主義の基盤は、正確に測られた民意の上にのみ成り立つことを忘れてはならない。
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