台風1号は記録づくめの台風 2019年台風19号も 地球温暖化と台風との関係

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政徳 吉田によるPixabayからの画像

 4月中旬に小笠原諸島父島に接近した台風1号は、記録づくめである台風となった。

 接近間近には、1号としては本州の南海上において最も北上する台風ともいわれ、小笠原諸島では4月としては記録的な暴風となるおそれとされる。

 今回の台風は北緯4.5度という極めて低い緯度で発生、その場所は渦を巻く力の小さい場所であり、統計のある1951年から2021年に北緯5度未満で発生した台風はわずか13個しかなく、発生確率わずか0.7%の台風となった。

 台風1号は、4月8日、グアム島の南、約600キロのカロリン諸島で発生。4月12日には「強い勢力」の台風となり、13日には中心気圧が950hpa、中心付近の最大瞬間風速が60メートルに達する見込みであると報道、15日には強い勢力を保ったまま父島など小笠原諸島に最接近する見込みとなった。

 台風が発生するためには海水温が高いことなどの条件も必要。様々な条件を考慮すると、台風1号のような赤道付近で台風が発生するのは、何か特別な理由があると考えられている。

 1号に限らず、2019年に発生した台風19号は、地球温暖化による気候変動の影響により、勢力が拡大したとみられ、その影響により、被害も拡大したとみられる。

 2019年10月に東日本の広い範囲に莫大な被害をもたらした19号の豪雨による被害額は、地球温暖化の影響により少なくとも40億ドル(約5200億円)増えたという分析結果を、英国の研究チームが発表した。

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2019年台風19号


 このたび、2019年10月に東日本の広い範囲で甚大な被害をもたらした台風19号の豪雨による被害額は、地球温暖化などの気候変動の影響により、少なくとも40億ドル(約5200億円)増えていたとの分析結果を、5月18日、発表した。

 このような台風など日本で起きた気象災害について、被害額の地球温暖化による影響分を分析した研究は初めてのこと。

 研究成果は、学術誌「クライマティック・チェンジ」に掲載された。

 研究チームは、温暖化が進んでいない1951年と温暖化が進んでいる2019年のそれぞれの気象条件で、台風19号の時と同じ程度の極端な大雨が10月に発生する確率を分析。

 その結果、1951年と比べ2019年では発生確率が約67%増加していた。とくに暖かい大気はより多くの水蒸気を含み、温暖化により多くの雨が降る可能性が高まったと考えられるという。

 また、ドイツ・ミュンヘン再保険によると、保険金の支払総額は約100億ドル(1.3兆円)に上ったが、1951年と2019年の発生確率の変化をもとに温暖化に起因する分を試算したところ、その額は約40億ドル分と見積もられた。ただ、実際にはさらに多額であった可能性もあるとのこと。

 チームのフリーデリケ・オットー英インペリアル・カレッジ・ロンドン上級講師は、

 台風19号のような豪雨は、温暖化でより危険で破壊的になっている。世界が石油、ガス、石炭の使用を大幅に減らさない限り、その影響は悪化し続けるだろう

毎日新聞デジタル、2022年5月18日付

と指摘している。

 19号は、2019年10月12日夜、「強い勢力」のまま伊豆半島に上陸、関東甲信、東北地方を通過した。103の地点で、24時間の降水量が観測史上最多を更新するなど、各地で記録的な大雨となった。

 内閣府によると、河川の堤防が約140カ所で決壊するなどし、13都府県で104人が死亡した。

Lavir Hamil LavirによるPixabayからの画像

スーパー台風


 気候変動により地球温暖化が進むと、21世紀の後半には「スーパー台風」とも呼ばれる猛烈な強さの台風が現在よりも発生しやすくなり、場合によっては日本にも襲来するという研究結果が出ている。

 具体的には、コンピューターの数値解析により、2074年には風速が秒速80メートルに達する台風の発生が増えるというシミュレーション結果が出ている。

 2017年、気象庁気象研究所は、世界と日本周辺の気象予測データベースを活用したシミミュレーションの予測結果を公表。このシミュレーションは、これまでのデータベースでは困難だった解析よりも、より高精度なもの。

 シミュレーションによれば、このまま地球温暖化が最悪なペースで進むと、世界における台風の発生総数は、3割程度は減るものの、しかし日本の南海上からハワイ付近と、メキシコの西海上にかけて、最大風速が秒速59m以上の「猛烈な」台風が発生する頻度が高まるとの予測が出た。

 スーパー台風とは、合同台風警報センターによる台風の階級で、最も強い区分にあたる、最大風速が毎秒67メートル(130ノット)以上の台風のことをいう。

 日本におけるスーパー台風の明確な定義は今のところないが、日本では最大風速が毎分54メートル(105ノット)以上の「猛烈な台風」が、ほぼこれに該当する。

 東京都は2018年、日本に上陸した台風としては過去最大級とされる1934年の室戸台風と同程度の910hPaの台風を、「我が国既往最大規模の台風」と設定し、その上陸によって引き起こされる最大規模の高潮の想定を公表している。

 このスーパー台風は、2021年に台風22号としてフィリピンに上陸、30万人以上が避難し、108人が死亡するという被害をもたらした。

気候変動により大型の台風が生まれるメカニズム


 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書によると、世界の全土で気候変動が明確に観測されている。

 気候変動の原因とされるのが温室効果ガス(二酸化炭素)の増加による地球温暖化であるが、台風が大型化するメカニズムもここにあるという。

 台風は海水温が26.5℃以上の暖かい海で発生、さらに海面水温が高いほど、台風の勢力は強くなるといわれている。水温が高いと大気中に含まれる水蒸気の量が多くなり、これが台風のエネルギー源となるためだ。

 実際に気象庁の観測データによると、日本の近海の海面水温は年々高くなっており、猛烈な台風が上陸する可能性が危惧されている。ただ、地球温温暖化と台風の関係については、現時点では明確となっていない。

 台風の年間発生数に対する最大風速が毎秒33メートル以上の「強い」勢力を持つ台風の発生割合は1970年代後半から80年代後半にかけでは増加傾向にあったが、80年代後半をピークに90年代後半までは減少傾向が続いていた。

 しかし、2000年代になって再び増加傾向に転じている。このように、台風の勢力の動向は、10~20年程度で増減はしている。

 ただ、気象庁気象研究所や財団法人地球科学技術総合推進機構を中心とする研究グループによる21世紀末頃を想定した温暖化予測実験によると、熱帯低気圧の発生数については、現在よりも30%程度減少する一方、海上(地上)の最大風速が毎秒45メートルを超えるような非常に強い熱帯低気圧の出現数については、地球温暖化に伴い増加する傾向があるとされていて、被害が甚大化する可能性がある。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の報告書では、台風を地域別に調査している。それによると、東アジア地域では、

 強烈な熱帯低気圧の発生率と数が増加しており、熱帯低気圧の軌跡は極方向(北側)方向に移動している可能性が高い

と分析している。


参考文献

宋光祐『フィリピンに「スーパー台風」直撃 108人死亡、被害拡大のおそれ』朝日新聞デジタル、2021年12月19日、https://www.asahi.com/articles/ASPDM4JTDPDMUHBI00Z.html

三ヶ尻知子『台風1号 1号としては最も北上し、小笠原は記録的な暴風のおそれ 関東への影響は?』Yahoo!ニュース、2022年4月11日、https://news.yahoo.co.jp/byline/mikajiritomoko/20220411-00290940

森田正光『台風1号「確率0.7%」極めて稀な海域で発生 台風発生場所に異変か』Yahoo!ニュース、2022年4月13日、https://news.yahoo.co.jp/byline/moritamasamitsu/20220413-00291174

岡田英『2019年の台風19号、温暖化で被害5200億円増 英チーム分析』毎日新聞、2022年5月18日、https://mainichi.jp/articles/20220518/k00/00m/040/349000c?utm_source=pocket_mylist

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