トルコ・シリア地震から1週間 なぜ被害が拡大したのか? パンケーキクラッシュ 極めてまれな”双子地震” 阪神大震災の22倍ものエネルギー

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Angelo GiordanoによるPixabayからの画像

 トルコ南部を震源とする6日に発生した大地震から1週間が経過した。トルコと隣国のシリアを合わせ、当局などによると確認された死者は13日までに両国で合計3万5000人を突破。

  2011年3月11日に発生した東日本大震災の死者・行方不明者数(関連死を含む)の2万2000人を上回る。

  厳寒の被災地では、行方不明者らの捜索活動が続く。地震発生から180時間以上たってからの救出劇もあったが、時間の経過とともに、生存者の発見は困難に。

 今後も犠牲者数の大幅な増加が懸念されるとともに、シリアは内戦下でもある。

  今回の地震は、中東でも歴史的な惨事となった。しかし、全体の被害状況は依然として不明のまま。現地では、略奪の発生など治安の悪化も進む。そのため、支援活動を一時停止する外国の救助隊も現れた。

  14日時点、トルコの死者は3万1643人、負傷者は8万人以上に達し、トルコの歴史上において有数の大惨事に。

  トルコのオクタイ副大統領は、100万人以上が一時避難所にいると語る。トルコ当局は11日、被災地での略奪や強盗などの行為で、容疑者90人以上を逮捕し、銃やライフルなどを押収したという。

  内戦により国土が分断したシリアでも、アサド政権の支配地域と北西部の反体制派地域で、計3500人以上の死者が確認された。

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トルコ南部を震源とする6日に発生した大地震から1週間が経過した。トルコと隣国のシリアを合わせ、当局などによると確認された死者は13日までに両国で合計3万5000人を突破。 #トルコ #シリア  #地震

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パンケーキクラッシュ

 
 ここまで被害が甚大になった理由の一つとして、「パンケーキクラッシュ」と呼ばれる現象が起こった可能性があるため。地震工学が専門の愛媛大学・森伸一郎特定教授は、「めざまし8」の取材に対し、

 「(パンケーキクラッシュ)とは中層以上の建物が1階・2階・3階と何層にもわたり層崩壊を繰り返し、床・天井がパンケーキのように重なって崩壊してしまう現象」

1 

 であると指摘。このような現象が起きると、建物が数秒(一瞬)で崩壊、避難が難しくなるばかりか、上から“面“で崩壊するため、生存空間がなくなり、命の危険度も増す。

  トルコで今、問題となっているのが、「建築恩赦」といわれる制度2。トルコでは、1999年に発生したトルコ北西部地震を機に、耐震基準の見直しが行われ、日本と変わらない厳しい基準となったとされる。

  しかし耐震基準を満たさない違法建築であっても、行政の書類を提出すれば、そのまま利用を続けることができた。これが恩赦建築であり、被災した地域に最大で7万5000棟あったとされる3

極めてまれな”双子地震” 阪神大震災の22倍ものエネルギー

  
 今回の地震について専門家は、

 「極めてまれな“双子地震”で今後の活動に注意が必要だ」

4

 と指摘する。

  筑波大学の八木勇治教授は、世界各地で観測された地震計のデータをもとに、地震の断層の動きを解析。それによると、今回の地震の震源域にはアルファベットのVを横に倒したように交わる2つの断層があった。

  このうち、最初に地震が発生したのは、南西から北東にのびる東アナトリア断層帯。日本時間の6日午前10時すぎに、マグニチュード7.8の大地震を発生させる。

  このとき1分ほどかけて北東の方向へと地下の岩盤の破壊が広がり、長さおよそ50キロ、およそ10メートルにわたって大きくずれ動いたとみられる。

 そのおよそ9時間後には、最初の大地震の震源から100キロほど北に離れた東西に走る断層でマグニチュード7.5の地震が発生。

  この断層も長さ40キロほどおよそ10メートルにわたってずれ動いたとみられる。2つの断層の交わる角度はおよそ30度。八木教授はこうした鋭角に並ぶ断層帯で短期間に規模の大きな地震が相次ぐことは珍しいと指摘した5

  東北大などの分析によると、最初の地震のエネルギーは阪神大震災の約22倍だという。

発生から1週間が経過 現地では治安が悪化 今後、被災者への支援が重点に


 地震の発生から1週間が経過。がれきの下に取り残された人の捜索活動は続いているものの、生存者の発見の確率が低下する中、今後、死亡者の数は増加するおそれがある。

  国連の人道問題担当であるグリフィス事務次長は13日、シリア北部のアレッポを訪問。救助の段階は、

 「終わりに近づいている」

6 

 と語り、現在は被災者への住居や食料、学校教育の提供に重点が移っていると述べた。

  外交筋によると、シリアのアサド大統領はトルコらからシリア国内への国連の援助の受け入れの拡大に同意したという。

  トルコの災害・緊急事態管理局によると、今回の地震による死者数は、1939年の地震の3万1643人を上回りトルコの近代史上最多となった模様。

  現地では厳しい寒さとともに治安が悪化。被災地を離れる人も相次ぐ7(7)。トルコ南部の被災地アンタキヤでは多数の建物が崩壊、損傷した建物の店舗などから金品が盗まれる事件が続発、発砲事件も発生。

  厳しい寒さや深刻な物資の不足なども重なり、トルコ政府の発表によるとこれまでに16万人の人々が被災地から他の地域に避難した。

  1. FNNオンライン「【わかるまで解説】トルコ大地震で“パンケーキクラッシュ”と“キラーパルス” 死者3万超の原因とは…日本で起こり得る可能性も?」Yahooニュース、2023年2月13日、https://news.yahoo.co.jp/articles/08a2dbaa529f1a45c5979bdb85ae68a3fc756fe9
  2. FNNプライムオンライン、2023年2月13日
  3. FNNプライムオンライン、2023年2月13日
  4. NHK NEWS WEB「トルコ大地震 専門家「極めてまれな“双子地震”」」2023年2月7日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230207/k10013973961000.html
  5. NHK NEWS WEB、2023年2月7日
  6. ロイター「トルコ・シリア地震、死者3.7万人超、発生から1週間 被災者支援に重点」Yahoo!ニュース、2023年2月14日、https://news.yahoo.co.jp/articles/30453b564740e98b50bed9dbc98266a3f4e37186
  7. 読売新聞オンライン「トルコ被災地で治安悪化、16万人が他地域に避難…「手抜き工事」責任追及も」2023年2月14日、https://www.yomiuri.co.jp/world/20230214-OYT1T50022/
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