5月8日より新型コロナ5類移行 一方、WHO、緊急事態宣言を終了 「新興感染症」「再興感染症」繰り返す感染症

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Alexey HulsovによるPixabayからの画像

 5月8日より、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが、季節性インフルエンザなどと同等の5類に移行された。これにより、法律に基づいた外出自粛や営業時間の短縮などの要請はなくなる。

  5類への移行は、ワクチン接種率が高まったことや、感染状況の改善によるもの。世界的にも‘、対策緩和の方向性が明確となっている。

  感染症法では、ウイルスや細菌を重症化リスクや感染力に応じて、原則、「1類」から「5類」に分け、国や自治体が行うことができる措置の内容を定めている。

  1類には感染した場合に命の危険のある感染症として、エボラ出血熱やペストなどが分類。

  2類には、重症化リスクや感染力が高い、結核やSARS(重症急性呼吸器症候群)などが該当。

 地方自治体は、感染者に就業制限や入院勧告ができ、医療費は全額、公費で負担される。

 また医療機関でも入院患者は原則、感染症指定医療機関が受け入れ、医師はすべての感染者について発生届け出を保健所に出さなければならない。

  一方、5類には、季節性インフルエンザや梅毒などがある。地方自治体は就業制限や入院勧告の措置がとれないほか、医療費は一部で自己負担が発生する。

 一般の医療機関でも入院患者を受け入れ、医師による届け出は7日以内とされ、医療費は一部で自己負担が発生する。

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WHO、緊急事態宣言を終了

 WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長は5日、新型コロナについての緊急事態宣言を終了すると発表。宣言は、感染症などに対するWHOの最高度の警告で、2020年1月30日に出されてから、約3年3ヶ月間続いた。

  宣言の終了は、ワクチンの普及などにより重症化率が下がり、世界各国が各種の規制をほぼ撤廃して日常生活が戻りつうある現状を踏まえてのもの。

  緊急事態宣言は、専門家で構成される緊急委員会の勧告を踏まえ、WHO事務局長が宣言する。発出された後は、緊急委員会が3ヶ月ごとに開かれ、宣言の継続・終了の是非を検証。

  2005年の制度創設から現在まで7例の発令があり、2014年のポリオ(小児まひ)、2022年のサル痘(エムボックス)については、現在までも継続中1

  宣言をめぐっては、テドロス事務局長が2022年9月14日、新型コロナのパンデミックについて

 「終わりが視野に入ってきた」

2

 と発言。

  12月14日には、2023年中の宣言終了について、強い期待を示した3。だが年末年始にかけてゼロコロナ政策が破綻した中国での感染状況が急速に悪化。今年1月の緊急委員会でも宣言の継続が妥当と判断された。

いつ「普通の風邪」になる?

  人に感染すると風邪の症状を引き起こす、いわゆる「普通の」コロナウイルスは現在、4種類ある。2003年に発見されたSARS(重症急性呼吸器症候群)を引き起こす原因にウイルスもコロナウイルスの一種だ4

  獨協医科大学の増田道明教授によると、普通のコロナの一つである「OC43」という種類が確認されたのは1960年代のこと。

 しかし2005年に発表された論文によると、19世紀末にはすでに出現しており、ロシアから世界へ広まった可能性があるとのこと4。当時、「ロシアかぜ」と呼ばれるパンデミックが発生していた。

  各個人が生涯で何度も感染を繰り返すことで、社会全体が安定的に免疫を獲得する。その段階で、ようやく新型コロナも「普通のコロナ並み」となると考えられる4

  長崎大学の古瀬祐気教授は西日本新聞に対し、

 「新型コロナが社会に与える影響をほとんど気にしなくなるまでには長い年月がかかるのではないか」

4

と指摘する。

新興感染症・再興感染症 繰り返す感染症

  ワクチンや抗生物質の開発により予防や治療が進んだことで、感染症の世界的な大流行も1940年代後半よりほとんど見られなくなった。

  ところが、1980年代後半に入り、それまで人間が遭遇してこなかったエボラウイルスによるエボラ出血熱、HIVによるエイズ(後天性免疫不全症候群)などが出現した。

 またマラリアや結核など、一度は克服されたと思われた感染症が再流行する事態も起きた。

  このような中、米国医学研究所は1992年に初めて、「新興感染症」「再興感染症」という言葉を使用し、WHOとともに定義すする。

  新興感染症は、以下のような定義を持つ。

 「かつて知られていなかった、この20年間に新しく認識された感染症で、局地的あるいは国際的に公衆衛生上問題となる感染症」

  再興感染症は、以下のように定義される。

 「既知の感染症で、すでに公衆衛生上問題とならない程度にまで患者数が減少していた感染症のうち、再び流行し始め患者数が増加した感染症」

  石弘之は、

 「感染症の流行と大地震はよく似ている」

5

 と指摘。

 「周期的に発生することは分かっていても、いつどこが狙われるかわからない。大地震に遭遇して痛い目にあうとしばらく用心するが、しだいに恐怖は薄らぎ、地震や津波への備えがおろそかになっていく」

5

 とした。

  1. ジュネーブ=共同「WHOの緊急事態宣言」西日本新聞、2023年5月6日付朝刊、3項
  2. ジュネーブ=共同「WHO 死者減で決断」西日本新聞、2023年5月6日付朝刊、3項
  3. 共同「WHO 死者減で決断」、3項
  4. 西日本新聞「いつ「普通の風邪」に」2023年5月8日付朝刊、21項
  5. 石弘之「感染症の世界史」角川ソフィア文庫、2020年、P72
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