Peggy und Marco Lachmann-AnkeによるPixabayからの画像
今月開かれたG7(先進7カ国首脳会議)広島サミットでは、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くため、「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国との連携を強化する声明を打ち出した。
首脳声明では、新興国などとの連携に絡み、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序を維持し、強化する方針を明記。大小に関わらず、国の利益の利益のため、国連憲章の尊重が必要だと強調する。
20日の討議では、グローバルサウスへの関与を強化するため、G20(20カ国・地域)の議長国であるインドを支え、丁寧に対応していくことが必要だとの認識で一致。
中国やロシアを念頭に、経済的威圧に対抗するため、新たな枠組みを創設することで合意する。
そして、インドやブラジルを含む招待国8カ国も参加し、拡大会合を開く。
グローバルサウスは、国連加盟国の7割近くを占めるとされ1、G7としては、ロシアは覇権主義的な動きを強める中国の動向を踏まえ、これらの国々との距離を縮めておきたい構えだ。
G7の首脳は、食料危機などに結束して取り組むことを確認。さらに拡大会合では、保健分野や気候変動といった地球規模の課題についても強調することで一致した。
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グローバルサウス
東西冷戦後の1990年代から、人やモノ、カネ、情報などが国境を越えるグローバル化が急速に進んだ。しかし、その恩恵を受けられずに取り残された国や地域がグローバルサウスと呼ばれるようになった2。
一方、「途上国」という言葉がある。欧米など先進国に対し、成長の途上にあるという意味で用いられる。
グローバルサウスの「サウス」は「南」を意味する。アフリカや中南米など南半球を中心とした途上国や新興国は地理的に重なる部分も多い。
しかしながら、グローバル化の恩恵を受けられなかったのは南半球の国だけではなかった。あるいは、一つの国の中でも格差が広がるなかで、グローバルサウスという言葉は、あらゆる不平等を含む考え方として使われる。
アフリカ諸国の中には、ウクライナ侵攻を続けるロシアが軍事支援を強めている国もある。ASEAN(東南アジア諸国連合)の一部でも、ロシアとの経済的つながりを深める国も。
このような中、大国間の争いになるべく巻き込まれたくないと、ウクライナ情勢については、曖昧な態度をとる国も多い。
ロシアと南アフリカとの蜜月
アメリカのブリゲティ駐南アフリカ大使は11日、南アフリカがロシアに対し、武器や弾薬を提供していると指摘、非難した。南アフリカ側は、疑惑には証拠がないと反発し、今後調査するとする3。
南アフリカの地元メディア「ニュース24」によると、ブリゲティ氏は11日、
「2022年12月6~8日、(南ア南西部の)サインズタウン海軍基地に貨物船が停泊し、その船に武器や弾薬を積んでロシアに帰ったと確信している」
4
と発言した。
AP通信によると、南アフリカのラマポーザ大統領は11日の議会で、ロシアへの武器提供疑惑について、
「その件は調査中だ」
5
と述べた。
ラマポーザ政権は、ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、中立を装いながらロシア寄りであると、欧米から批判されてきた。
与党アフリカ民族会議(ANC)は、白人政権が黒人を差別したアパルトヘイト(人種隔離)の撤廃を求める運動をしていた際、旧ソ連から支援を受けていたため、現在もロシアと良好な関係を保っているという歴史的な背景も6。
「E7」 注目される新興7カ国
G7を背景に、「E7」と称される新興7カ国が注目されているE7のEは、「Emerging」を意味する。当てはまるのは、中国、インド、ロシア、ブラジル、インドネシア、メキシコ、トルコだ。
E7は、大手コンサル「Pwc」(プライスウォーターハウスクーパース)が提唱した7。PwCの推計によると、E7全体のGDPは2030年までにG7を逆転し、2050年にG7の1.5倍に達するという。
この中でもとくに勢いがあるのはインドだ。国連は4月、同月末までにインドの人口が中国を抜き、世界で最多になるとの推計を発表。労働力人口も当面は増え続ける。
一方、中国は人口減と高齢化が同時に進み。2021年に全人口の14%超を65歳以上が占める「高齢社会」に入り、生産年齢人口は今後減少に転じる。ただ、それでも先進諸国より「伸びしろ」があるとの分析が多い8。
また、Pwcは2028年にインドの経済規模が日本を抜き、2032年にはブラジル経済がドイツを上回ると予想する9。
- 河合仁志「G7 新興国の取り込み躍起」西日本新聞、2023年5月21日付朝刊、3項
- 加藤あず佐「【そもそも解説】グローバルサウスって何? 「途上国」とは違うの?」朝日新聞デジタル、2023年5月11日、https://digital.asahi.com/articles/ASR5C4QZGR58UHBI02Y.html
- 遠藤雄司・下司佳代子「ロシアへの武器提供疑惑 対南アフリカ「報復措置」がアメリカで浮上」朝日新聞デジタル、2023年5月12日、https://digital.asahi.com/articles/ASR5D6GB3R5DUHBI00V.html
- 遠藤雄司・下司佳代子、2023年5月12日
- 遠藤雄司・下司佳代子、2023年5月12日
- 遠藤雄司・下司佳代子、2023年5月12日
- Scott Hamilton「主要新興7カ国の経済規模、あと20年余りでG7を追い抜く-PwC」Bloomberg、2011年1月7日、https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2011-01-07/LEMY711A74E901
- 桑村朋・石川有紀「新興7カ国「E7」台頭 2030年G7超え」産経新聞、2023年5月15日、https://www.sankei.com/article/20230515-5DB4Q4GE5FNZ7NTN2PPO6NHMTU/
- Scott Hamilton、2011年1月7日