2021年 COP26閉幕 ~2~ 主な成果と課題 そして日本に求められる行動

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COP26 では、世界全体で1.5°Cの目標を目指すことが確認された。しかし依然として先進国と途上国との対立は改善されなかった。

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2021年 COP26閉幕 ~1~ 何が議論されたのか?

目次

  • 主な成果
  • COP 26の評価
  • 残された課題
  • 日本に求められる対応

主な成果

       

 今回のCOP26にて合意された文書は、「グラスゴー気候合意(Glasgow Climate Pact)」と名付けられた。

           

 その中でも最も重要な成果とされたのは、1.5℃目標へと“格上げ“されたことだろう。なぜならCOP 26以前においては、パリ協定事務局に提出されていた各国の削減目標を足しても、1.5℃はおろか2℃未満の達成にも足りていなかったからだ。

                   

 会議直前の国連報告書において各国の2030年削減目標を考慮しても、世界の排出量は2010年比で、2030年には16%も増加し、さらに世界の平均気温は2.7℃も上昇してしまうと警告していた。

               

 先進国のほとんどは、すでに2050年に排出量ゼロと2030年に50%前後の削減目標を公表しており、今後は新興国が新たに目標を見直して発表するかに注目が集まっていた。

                   

 結果的には、中国とロシアの首脳はCOP 26には欠席し、また世界最大の排出量でもある中国は目標の引き上げは表明しなかった。

                   

 だが、世界3位の排出国であるインドが、2030年に再生可能エネルギー比率50%を目標とし、また、2070年に排出ゼロを目指すことを公表し、タイやベトナムといった新興国も2050年までのカーボンニュートラル目標を初めて明言した。このラインより上のエリアが無料で表示されます。

       

 さらに先進国から途上国への支援も、成果とされた。2009年にコペンバーゲンで開かれたCOP15では、先進国から途上国への資金支援を2020年までに毎年1000億ドルまで増やすという目標が掲げられていたが、この目標が2020年までに未達成になったことが議題として取り上げられ、途上国から批判が上がっていた。

               

 そのため、先進国などは、2025年に向けてこの目標の達成のためにさらなる努力を続けることが決定した。また、2025年以降の資金目標についても議論を開始することも盛り込まれる。

               

 異常気象などへの対応(適応)を目標とした資金も2025年までに、2019年比で倍増することを決定した。

       

 パリ協定のルールブック(実施指針)が完成した意義も大きい。2015年にパリ協定が採択されてから本来、2018年までには合意されるはずだったルールブックが、しかし「パリ協定第6条」の市場メカニズムのルールの決定が2回にわたって延期されていた。だが、議長国である英国のリーダーシップもあり、今回の会合について合意され、パリ協定の完成にまでいたった。

           

 このパリ協定第6条とは、二酸化炭素排出枠を「クレジット」として市場で取引する仕組みがメインであり、2国間で取引するもの(6条2項)と、国連主導型で取引されるもの(6条4項)の2つがある。

           

 ちなみに日本が途上国との間で進めている2国間クレジット制度は、6条2項に含まれる。しかし問題となっていたのは、排出削減量の二重計上(ダブルカウンティング)を防ぐことであった。

           

 この6条は、基本的にオフセット(相殺)の仕組みであったため、削減のプロジェクトを実施するホスト国と、支援するドナー国との間での「二重計上」が行われないようにすることが、重要であった。そうしなければ、地球全体で見た場合、排出量がむしろ増えてしまう可能性もあるからだ。

               

 だがCOP26の場での交渉により、何とか二重計上を防ぐことを前提とする仕組みが立ち上がったことも成果のひとつだあろう。

            

 4つ目の成果として、「損失と損害」への対応に関する議論が今後も引き続き行われることが確認されたことも成果だ。

               

 気候変動による豪雨や強風、干ばつなどによる損失や損害が世界中で顕著に現れているとともに、自然災害などによる難民の数も増えてきた。

               

 しかしながら、途上国は先進国と比べ、災害や社会不安を自力で克服することが困難であるため、パリ協定においては、基金の創設を求める途上国の声が上がっていた。

               

 COP 26においても、実質的な制度や基金の構築の合意にまでは至らなかったものの、引き続き議論していくことが合意された。

           

 またCOP26では、英国政府の主導で自発的な宣言が数多く公表された。これまでのCOP では、すべての国が合意を得ることを重視するため、特定の国の意見を反映させることを難しいという課題があった。

               

 しかし今回の会合では、さまざまなテーマに対し、国だけでなく企業なども含め有志連合を形成するスタイルが構築され、今後の合意形成に至るプロセルにも影響を与えるだろう。

   

COP 26の評価

       

 COP 26に向けて英国政府が1年以上もかけて周到に準備してきたことや、米バイデン政権の誕生により、COP 26は一定の成果を収めることができた。

           

 とくに、世界全体で1.5℃の目標を目指すことが確認されたことは、何よりも大きな成果だ。だが、今現在においてすでに1℃以上気温が上昇しており、この段階から目標を達成するためには、さまざまな大胆な行動が必要になってくる。

               

 そのためには、今後は国家レベルだけでなく、民間企業や自治体の役割が重要視される。その手段として、会合で取り入れられた「有志連合」の手段は、さまざまなステークホルダーへ向けたメッセージを送るうえでは効果的だった。

               

 有志連合の中には、目標達成に不可欠な国が参加していない場合もあったが、賛同する国や主要企業が声明を出したことで、他の企業や自治体へ向けての二次的な影響も与えるだろう。

               

 会場の外では多くの市民や若者が集まり、デモ行進も行われた。交渉の中でも、このような若者たちの声に絡め、1.5℃目標を実現しなければ、子どもや孫世代に対して取り返しがつかないという発言が相次ぎ、今まで以上に「将来世代」への配慮があったCOP 26となったことは確かだ。

       

 しかしながら、今回の会合においても先進国と途上国や新興国との対立は改善されなかった。先進国は、2050年のカーボンニュートラルと2030年までの排出量50%程度の削減目標でほぼ足並みを揃えたが、そのほかの途上国と新興国はそうではなかった。

               

 とくに世界最大の排出国である中国は、従来の2060年のカーボンニュートラルの目標を変えなかった。新しくカーボンニュートラルの目標を示したインドも同じく、先進国よりも10年遅い2060年の道筋を示した。