英国、グラスゴーで開催されていた、国連気候変動枠組み条約第26回締結国会議(COP26)は、13日、成果文書を採択し閉幕した。だが採択をめぐっては、各国間の意見の調整が難航、協議が当初の予定よりも1日延長された。
成果文書では、気温上昇の「1.5度目標」を実現するための努力をすること、そしてその目標が明記されたことが成果とされた。
なぜなら、2015年に採択された「パリ協定」では、「産業革命前と比べた世界の平均気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑える」との目標が掲げられており、1.5度はあくまで努力目標にすぎなかったからだ。
また、COP26に先駆けて行われた国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会は、1.5度の気温上昇で熱波や豪雨、干ばつの発生頻度が高まる試算結果を公表していた。
これを受け、今回の議長国である英国は、「1.5度の目標」を成果文書において強調することを、COP26における最優先課題と位置付けていたとされる。
しかしながら、この数値を採択したとしても、世界の地球温暖化対策がどの程度、進むのかは不明瞭だ。
成果文書では、石炭火力の廃止についても注目が集まった。議長国である英国は、二酸化炭素排出が多い石炭火力の「段階的な廃止」という表現を、成果文書に盛り込むことを最後まで目指していた。
だが、発電コストの安い石炭火力を主要な電源とするインド代表が、石炭火力の廃止を”強硬”に反対した。そこで、最終的に、インドが提案した「段階的な”削減”」という表現で決着が図られた。
目次
- COP26までの経緯
- COP26における議論
COP26までの経緯
COP26に先立ち、英ジョンソン首相は、2035年までに全電力を再生エネルギーでまかなうことを表明した。
英国では、すでに二酸化炭素排出量を78%削減するとしており、再生可能エネルギーへの転換はその流れだ。
また、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を2030年までに禁止するとしている。一方で、今年のノーベル物理学賞が、米プリンストン大学上級研究員の真鍋淑郎さんら3人に贈られたことは記憶に新しい。
真鍋さんの研究は、地球温暖化の影響を予測するコンピューターモデルの開発であった。
さらに欧州では今年、ドイツで発生した洪水で10数人が亡くなった。それを受け、英環境庁は、気候変動は「順応するか死ぬかの問題」という強い言葉で警告を発する。
また世界気象機関(WWO)は、温室効果ガスの排出が今年、新型コロナウイルスのパンデミック下であったにもかかわらず過去最大だったとする調査報告を公表。そして、世界の状況が「私たちの目の前で変わっている」と指摘し、猛暑や大洪水などの異常気象が「もはや新しい平常になっている」とまで警告した。
英国と大西洋を隔てる米国でも、大きな動きがあった。下院において、米エネルギー大手などによる、数十年間におよぶロビー活動や公式声明が検証された。
下院の行政監視・改革委員会で開かれた公聴会は実に6時間にわたり行われ、激しいやりとりもあった。
とくに民主党議員らは、以前から指摘されていたように、1990年代のタバコ産業大手に対する追及と地球温暖化問題を重ね合わせた。タバコ産業は、自社製品の中毒性に関する証拠を隠そうとしていたためだ。
今回の委員会が出した声明でも、石油業界が1977年から地球温暖化への影響について認識していたと説明。しかし、「数十年にわたって、自社製品の害悪について否定と疑いを広めてきた」とした。
一方、イタリアのローマで開かれたG20(主要20カ国・地域首脳会議)は、気候変動を食い止めるため、「意味ある効果的な行動」を約束したものの、具体的な方策は明示しなかった。
ちなみに、G20を構成する19カ国とEU(欧州連合)の二酸化炭素排出量は、世界全体の80%を占める。