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小川洋知事の辞職に伴う福岡県知事選挙が、4月11日に投開票をむかえる。
一時は、9年間副知事として小川県政を支えた服部誠太郎氏と、福岡県県議会の”重鎮”に対抗心を燃やした武田良太総務相が推す元国土交通省局長の奥田との「保守分裂」の危機をあったが、自民党二階俊博幹事長の「一本化に協力してほしい」との奥田氏への一言で、分裂選挙は免れた。
目次
- 「保守分裂」の危機
- 候補者の主な政策・公約
- 都道府県知事の役割とは?
- 都道府県知事の実際
「保守分裂」の危機
小川氏は2月9日に肺腺がんを患っていると公表、その直前に小川氏の辞意を知ると、福岡県議団実質トップといわれる蔵内勇夫・元県連会長は服部氏に出馬を打診した。
他方、武田氏は小川氏の体調不安が表沙汰になった昨年末から、後継者探しに着手した。自民党OBの古賀誠・元幹事長が打診した奥田氏が出馬に前向きな意向であると知ると、山崎拓・元副総裁らと擁立に動く。
だがその思惑は、すぐさま崩れる。
「コロナ渦の非常事態に分裂する姿をみせられない」
「服部氏に大義がある」
武田氏は、小川氏の後継指名を狙う。それは、服部氏が告示日直前に脱退し、さらに蔵内氏自身が立候補するということを恐れたからだ。
武田氏は小川氏と病室で直接会おうともしていた。だが、小川氏側は、「体調が悪いく応じられない」と拒んだ。リモートで会談をすることも考えたのだが。
最終的に、自民・立憲民主党・公明党・社民党の推薦で、服部誠太郎氏が立候補した。対して、共産党推薦で星野美恵子氏が立候補することになった。
候補者の主な政策・公約
各候補者の注目すべき政策・公約は、以下の通りだ。
服部誠太郎氏
基本方針
住み慣れた所で、「働く」「暮らす」「育てる」
新型コロナウイルス対策
ワクチン接種を市町村と連携して円滑に進める。
経済・雇用
ウェブ物産展で県産商品の商品拡大
福祉
「70歳現役社会づくり」を掲げ、高齢者の求人を開拓
公共事業
下関北九州道路の早期実現
その他
減災へ向けて、「流水治水プロジェクト」推進
星野美恵子氏
基本方針
ケアや社会保障に手厚い県政に変える
新型コロナウイルス対策
無症状者へのモニタリング検査を10倍に拡大
経済・雇用
就農への財政的支援の強化
子育て・教育
18歳までの医療費を通院・入院とも無料
福祉
国民健康保険料などを引き下げ
公共事業
下関北九州道路など大型事業は凍結
子育て・教育
待機児童解消へ潜在保育士の現場復帰を支援
その他
県の女性幹部職員の割合をまず3割に増やす
都道府県知事の役割とは?
知事は、地方自治法により「普通公共団体の長」として都道府県に置くことが定められている職である。だが地方公務員でありながら、地方公務員が適用されない、特別職にあたる。
明治時代は、これまでの藩に替わる行政単位となった府県に長官として派遣され、天皇の勅命によって任用される勅任官であった。戦後の1947年からは、住民による直接選挙によって選ばれることになった。
任期は4年で、しかし、解職請求(リコール)により任期満了前にその地位を失うことさえある。
被選挙権(選挙に立候補することができる資格・権利)は、日本国民で満30歳以上。地方自治法により、知事の兼職や兼業は禁止されている。実際、2016年に小池百合子氏が東京都知事選挙に立候補した際、衆議院議員を辞職した。
都道県知事の実際
日本の地方自治は、アメリカの大統領制に近い「首長制」に近い形態が取られている。首長制とは、議員と首長となる各地方自治体の長とを別々に選び、両者の牽制と均衡の中で公正な政治の実現を図る制度である。
しかしながら、全国47人の都道府県知事のうち、57.4%の27人の経歴が霞が関の中央省庁の官僚である。このほか、国の独立行政法人や中央省庁所管の財団法人出身者、元自衛隊員などもいて、それらの人を含めると6割以上が中央省庁とその関連団体出身者が占めるという。
それと比べ、会社役員や会社員、弁護士、東京都小池都知事などのニュースキャスター、大学教授などの民間の出身者は全体の11人、23%に過ぎなかった。
中央官僚が知事候補になりやすいことについて、行政に精通し、また出身省庁の予算が確保しやすい、などの理由があるという。また、地方にしがらみがなく、あるいは「東京大学出身」という肩書がいまだ、田舎の高齢者をひきつけるとも。
ただ、あまりにも行政事業にくわしいことが災いし、これまでの常識から外れた、いわば「大胆な」改革ができない知事も多数、存在するという。つまりは、知事になったとしても、霞が関の視点から脱却できずにいるのだ。