政府・日銀が為替介入 為替介入とは 「伝家の宝刀」 早くも限界が

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 政府と日銀は22日、急激な円安の進行を阻止するため、「円を買ってドルを売る」為替介入を実施。円買い介入は、1998年6月17日以来、約24年3カ月ぶり。

 円高の是正を狙った「円売り介入」を含めても、2011年11月4日以来のこと。

 アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)が21日(日本時間22日未明)に0.75%の大幅な利上げを決定。

 一方、日銀が22日、大規模な金融緩和の維持を決めたことを受け、外国為替市場で円相場が一時、1ドル=145円台後半まで急落したことをから、介入に踏み切ったとみられる。

「午後5時前後。145円70銭程度だった円相場が、瞬時に1円以上、円高方向に飛んだ。日銀の黒田東彦総裁の会見中に円安が加速し、誰もが146円台突入を見据えていた矢先だった」

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 日銀は、14日に144円台後半で相場水準を尋ねる「レートチェック」を実施、市場では「政府・日銀の防衛ラインは145円」とささやかれてきたものの、「口先介入」にとどまるとの見方が大半を占めていた2

 財務官として1998年に前後に円買い・ドル売り介入を実行した“ミスター円”こと榊原英資氏も、日本経済新聞の取材に対し、

「円買い介入には特有の難しさがあり、今回の介入は相当に予想外だった」

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と漏らす。

為替介入とは

 為替介入とは、「為替相場の急激な変動を抑え、その安定化を図る」4ことを目的として、日本銀行が外国為替市場で通貨の売買を行い、為替相場に影響を与えることをいう。

 今回のケースでいえば、急激に変動するドル円相場を安定させるために、日本銀行がドルを売って円を買うことで、急激な円安ドル高の流れを落ち着かせることを意味する5

 円が為替市場で安く売られていることから円安が進んでいるのだが、日銀が大規模に円を買うことで、この流れを止めようとした。

 一般的に政府は、急激な円安を沈静化させるために、

1.口先介入
2.金利引き上げ
3.為替介入

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の3つの手段を取り得るが、今回、日銀は3番目の選択肢を取った。

 だが日本政府による為替介入はもっぱら円高の阻止のための円売り介入だった。これまで円売り・ドル買い介入を319回実施してきたのに対し、円買い・ドル売り介入は32回にとどまる7

 円買い介入は、1998年の6月を最後になされていない。

 約24年前の円買い・ドル売り介入は、日米両国による協調介入だった8。介入は日本時間の夜間に実施され、東京の終値に比べて約4円の円高・ドル安につながる。

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為替介入の副作用


 ただ為替介入には3つの大きなデメリットが。結局のところ、最後の手段であること、効果が限定的であること、最後に国際的な懸念があることだ9

 第一に、為替介入は円安を是正する、ほとんど最後の手段。言い換えれば、為替介入を行っても円安を止めることができない場合、1ドル=145円台の攻防から、一層、円安が進行する可能性も。

 第二に、為替介入の効果は限定的とみられる。まず、為替介入の規模には限界がある。介入のための原資は日本の外貨準備高が用いられ、8月末の時点で1兆1728億ドルとなっているものの、3日ほどしかもたないとみられる10

 そもそも今回の円安が、「日米の金利差」という基礎的な条件を反映しているものであり、日米の金融政策がともに変更されなければ、なんら問題は解決しない。

 今回の介入が、「協調介入」ではなく「単独介入」であることも、懸念を残す。

 第三の副作用が、日本が単独介入を行ったことで、国際的に批判を浴びる可能性があること。為替介入は、ドルだけでなく他通貨にも影響を及ぼすことがあり、国際社会から「為替操作」であるとして懸念されるリスクも。

 日本の外貨準備は、米国債などで運用。介入原資の確保のために売却する場合は、ニューヨーク連銀に委託するとみられる11

早くも限界が露呈

 相場は介入を受けて、145円後半から140円前半までの5円超の下落となったものの、しかし1週間もたたないうちに144円台まで戻している。

 介入は円買い介入のときも、円売り介入のときも1回で相場の動きを止めた例が一度もない12 。1997年12から98年6月に行われた円買い介入のときもそう。

 為替介入を始めると、逆に投機筋を引きつけてしまうことになると考えるとも。今回の円買いも明らかにファンダメンタルズとは逆方向への介入であり、介入を行ってもすぐに円は売り戻される。

 そうすると、財務省・日銀は再び介入を行うか、レートチェックのようなことを繰り返し、また、短期的に円高になり、すぐに円安に戻る。

 そもそも、日本は市場の変動を投機筋のせいにして、動きをコントロールしようとして、問題の本質を直視しようとしない。

「今回も投機的な動きに対抗しているとしているが、ここまでの円安は基本的にはファンダメンタルズに沿った実需の円売りが大きく、円買い介入を行ったことで、逆にこれから投機的な取引が助長されることになるだろう。」

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  1. 日本経済新聞9月23日付朝刊
  2. 日本経済新聞9月23日
  3. 日本経済新聞9月23日
  4. 日本銀行、https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/intl/g19.htm/
  5. 石田健「為替介入とは何か?わかりやすく解説 = 1ドル145円の円安受けて」The HEADLINE、2022年9月23日、https://www.theheadline.jp/articles/704#_=_
  6. 石田健、2022年9月23日
  7. 日本経済新聞9月23日
  8. 日本経済新聞9月23日
  9. 石田健、2022年9月23日
  10. 日本経済新聞9月23日
  11. 日本経済新聞9月23日
  12. 佐々木融 「コラム:早くも露呈し始めた為替介入の限界、長期化なら効果低減=佐々木融氏」ロイター、2022年9月27日、https://jp.reuters.com/article/column-toru-sasaki-idJPKBN2QS0HN
  13. 佐々木融、2022年9月27日