ハリケーン「イアン」フロリダ州に上陸 アメリカでは2005年「カトリーナ」以来の被害 バイデン大統領、”政敵”知事と一時休戦 

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DidierによるPixabayからの画像

 ハリケーン「イアン」は9月28日、アメリカのフロリダ州南西部に上陸。その勢力は、5段階中2番目に強い「カテゴリー4」だった。

 ただ、バイデン米大統領は、フロリダ史上「最悪の」ハリケーンになるかもしれないとの見方を示す。

 イアンは、メキシコ湾のなかでもとりわけ海水温の高い海域を通過、日本の「猛烈な台風」に相当する勢力となった1。その勢力のままフロリダに上陸。

 上陸時の最大風速は、67m/s(1分平均)で、これはフロリダ州に上陸したハリケーンのなかでは観測史上4位タイ、アメリカの観測史上でも5位タイの記録となる2

 ハリケーンの名称は国立ハリケーンセンターにより決められ、毎年Aからアルファベット順に命名。1979年以前は女性の名前が付けられていたが、1979年からは男性名と女性名とを交互に付けることになった。

2022年の名称リスト

Alex Bonnie Colin Danielle Earl Fiona Gaston Hermine Ian Julia Karl Lisa Martin Nicole Owen Paula Richard Shary Tobias Virginie Walter

 地球温暖化による気温の上昇にともないハリケーンや熱帯低気圧の激しさが増す。ほとんどの気象学者はそうみている3

 アメリカにおいても、1980年以降でカテゴリー3以上に達するハリケーンの比率は高まっており、嵐が激化するスピードも速くなっているという。

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被害の状況


 ハリケーン「イアン」は当初の予想より南側に進路を取った影響もあり、逃げ遅れた住民を多く、犠牲者は100人を超えた。

 1つのハリケーンで、死者が3桁以上になるのは、1200人が亡くなった2005年「カトリーナ」以来のこと。

 イアンによる被害が大きかった理由のひとつとして、記録的な高潮があげられる。イアンはフロリダの西側から進んでいったために、「危険半円」と呼ばれるとりわけ風の強い部分がフロリダを襲った。

 そのため、強風が海水をフロリダの西岸に叩きつけ、巨大な高潮を発生させる4。高潮は海水が壁のように押し寄せてくる現象。ハリケーンによる現象としては、とくに致命的な被害をもたらす。

 実際、沿岸部では破滅的な洪水が発生、多くの家屋が飲み込まれたようだ。 

 さらに当初の予想では、イアンはフロリダ州のさらに北に上陸するものだと予想され、上陸する日時も29日の木曜日か30日の金曜だとされていた。

 しかしながら実際は予想された進路が南にずれるとともに、上陸した日時も前倒しとなる。

 そのうえに、フロリダには英語やスペイン語を母国語としない人が数100万人もいる。

 そのため、呼びかけが理解できなかったり、避難地図があっても正しく読めなかったりしたり、あるいは一人暮らしの高齢者が多数、逃げ遅れた模様5

Kenny HolmesによるPixabayからの画像

ハリケーンとは?


 ハリケーンとは、「広義の熱帯低気圧」(Tropical Cyclone)のうち、

北半球の国際日付変更線からグリニッジ子午線までの領域において、地上での 1 分 間の平均最大風速が 64 ノット(74mph, 119km/h)以上となるまでに発達したもの

6

をいう。

 通常、ハリケーンはカリブ海やメキシコ湾、西アフリカ沖のカーボベルデ共和国付近において発生。その後、西に移動したあと、上空の風の影響を受けて北西から北に進路を変え、さらに北から北東方向に進行。

 これまで、南部から東海岸にかけての沿岸部、とくに フロリダ半島やミシシッピ・デルタ地帯に「重大ハリケーン」「大型ハリケーン」(Major Hurricane )と呼ばれる、生命や財産をとくに脅かすカテゴリー3以上のものが、多数、上陸している。

 アメリカでは、広義の熱帯低気圧をその勢力により5段階(カテゴリー1~5)に区分する「サファ・シンプソン・ハリケーン・スケール」(Saffir-Simpson Hurricane Wind Scale)を用いてハリケーンの勢いを区分。

 ハリケーンの命名については、1953年以降、米国国立ハリケーンセンターが大西洋海域の熱帯低気圧のうち、熱帯暴風 雨(最大風速 39mph 以上)またはそれ以上にまで発達したものについて、発生順にA~Wまでのアルファベット順に名前を付けている。

バイデン大統領、”政敵”フロリダ州知事と一時休戦


 バイデン大統領は5日、ハリケーンに襲われたフロリダ州のフォートマイヤーズを視察、”政敵”でもあるデサンティス知事とも協力する姿勢をみせた。

 デサンティス知事は野党・共和党のなかでもとくに注目される政治家であり、2024年大統領選の候補者指名争いでも有力視されている7。しかも大統領とは、新型コロナウイルス対策や移民問題などでことごとく対立。

 不法移民をチャーター機でマサチューセッツ州の島へと送るなど、その言動は「ミニ・トランプ」とも称されてきた8

 しかしながら大統領は、

「われわれの政治哲学は全く違うが、手を取り合って働いている。危機対応で完全に歩調を合わせている」

9

と記者団に語り、知事との連携ぶりを強調。「彼は素晴らしい仕事をしている」と称賛さえしてみせる。

 来月11月8日にはバイデン大統領は中間選挙を、デサンティス州知事は再選を目指す知事選を控える。そのため、両者ともに危機管理能力を問われかねない災害対応では細心の注意を払い、協力姿勢を打ち出しているようだ。

  1. 森さやか「ハリケーン「イアン」、何が壊滅的な被害をもたらしたのか」Yahoo!ニュース、2022年9月30日、https://news.yahoo.co.jp/byline/morisayaka/20220930-00317391
  2. 森さやか、2022年9月30日
  3. Daisuke Takimoto「米国を襲ったハリケーン「イアン」は、“未来”からの警告でもある」WIRED、2022年10月2日、https://wired.jp/article/hurricane-ian/ 
  4. 森さやか、2022年9月30日 
  5. https://www.npr.org/2022/09/28/1125448849/why-people-dont-evacuate-hurricane-ian-florida 
  6. 在マイアミ日本国総領事館「ハリケーンの基礎知識」2022年4月、https://www.miami.us.emb-japan.go.jp/files/000175712.pdf 
  7. 時事ドットコムニュース「米大統領、政敵と「一時休戦」 ハリケーン復興で協力―米中間選挙」2022年10月9日、https://www.jiji.com/jc/article?k=2022100600705&g=int 
  8. 時事ドットコムニュース、2022年10月9日 
  9. 時事ドットコムニュース、2022年10月9日 
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