ウクライナで今、何が起こっているのか クリミア大橋の爆発 ロシア、大規模なミサイル攻撃で報復 懸念されるウクライナの「シリア化」

中東
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EnriqueによるPixabayからの画像

 ウクライナにおける戦況が、目まぐるしく変化し続けている。

 とくにウクライナ軍はここ最近、ロシア軍に対する大規模な反撃により戦況を反転させたが、これはアメリカがウクライナに提供した高機動ロケット砲システム(HIMARS)が決定打だったようだ。

 ウォールストリート・ジャーナルは、

「HIMARSは射程距離や正確度、機動性が独自の組み合わせになっている。これにより数十台の在来式発射台から数千発を撃つのと同じことができるようになった」

「支援兵力や軍需品補給の側面でも戦場の様子を一変させている」

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と報道。

 HIMARSは最高時速85キロで走行可能な6輪駆動装甲トラックに多連装ロケットシステムを搭載。最新のデジタルシステムを使い、数分で目標を破壊し、素早く別の場所に移動が可能。

 他方、冬に向けて、

「ロシアはかつて、「冬将軍」の加勢を得てナポレオンとヒトラーを打ち負かした。プーチン大統領は今、欧州がこの冬にエネルギー不足やとその価格高騰に根負けし、ウクライナに停戦を迫るというシナリオに賭けている。」

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との声も。

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誰が? なんのために? クリミア大橋の爆発

 8日、ロシアに併合されたクリミア半島とロシアの本土とをつなぐ唯一の橋である「ケルチ橋」が爆破された。ロシア側はトラックの爆発が原因とし、3人が死亡したと発表。

 SNSに投稿された監視カメラの映像には、橋から車で1時間の場所から来たとされる、爆発物を積んだトラックが、爆発時に西へと向かう様子が映っていた。

 ロシア当局は、トラックの所有者をすでに特定している。しかし、映像を詳しくみると、このトラックと爆発は何の関係もないという3 。専門家はむしろ、橋の下で何らかの爆発があったとみる。

「ウクライナ軍が遠隔操作できる、海上監視用と海上攻撃用の船舶を使っているという、根拠十分な報告がいくつかある」と、上述の元英軍専門家は話した。

「この作戦の発想は、数カ月ではなく、数年かけて練り上げてきたものだ」

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 しかしながら、キーウ周辺では、誰も「ウクライナ作戦説」を認めようとはしない。振り返れば、4月のロシア黒海艦隊の旗艦モスクワの沈没、8月のクリミアにおけるロシア空軍基地への攻撃など、謎めいた攻撃が続く。

「わからない。それが好ましい」

 それがウクライナの歓迎するところだ。

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ロシア 大規模なミサイル攻撃で報復 ウクライナの防空システムも限界が?


 ウクライナの国営通信によると、首都キーウで10日朝、市内の4地区にロシア軍のミサイルが着弾、少なくとも5人が死亡、27人が負傷したと発表。

 それにさきがけ9日、ロシアのプーチン大統領はクリミア大橋で8日に発生した爆発について、「ウクライナの情報機関によるテロ行為」との認識を示した。

 そのようななか、各地へのミサイル攻撃はクリミア大橋の爆破への「報復」の可能性もある。

 ミサイル攻撃は、キーウだけではなかった。東部のハルキウでは10日朝、電力関連施設に複数のミサイルが撃ち込まれ、結果、市内で停電が発生、ドニプロペトロウシク州でもミサイル攻撃があり、死傷者が出ているとの情報も5

 今回の、やや「無差別」ともいえるミサイル攻撃は、西側諸国によるウクライナの防空システムの”限界”も明らかとなった。

 とくにウクライナの複数都市でミサイル攻撃により電力や水道の供給が断たれる事態となり、厳しい冬とされる時期を前に、エネルギー施設を脅かしている6

懸念されるウクライナの「シリア化」


 懸念されるのは、ウクライナの「シリア化」だ。もともと、昨今のウクライナ情勢とオスマントルコ時代から欧米列強がシリアに対して繰り返してきた介入は、共通点が多い7

 シリアは多くの人種と宗教・宗派を内包し、多様な文化が存在。それがシリアの発展をもたらした。

 しかしシリアはヨーロッパからアジアやアフリカへと抜ける”交通の要所”でもあり、シリアの支配権を維持したいイギリスやフランス、ロシアらはシリアの”多様性”を逆手にとり、人種・宗派間の対立をあおってきた。

 同様にウクライナの場合も、とくにソ連の崩壊後、ロシアと隣接する東部の2州では人口で多数を占めるロシア系住民がウクライナから差別されてきたとも。

 さらにウクライナはロシアとヨーロッパとの”緩衝地帯”であり、シリアとおなじような「代理戦争」が起きやすい地域。

 ただ、もともと年間の軍事費で10倍以上の差があるロシアとウクライナではまともな戦争にはならないところを、アメリカがウクライナに武器を供与することで、その軍事力の差を埋めている・・・。

 それがこの戦争の当初からの現実だ。もはやこの戦争は、ロシア対アメリカの代理戦争と化した。

  1. キム・ミョンイル「戦況逆転でロシア軍劣勢に…米国がウクライナ軍に提供した「ゲームチェンジャー」兵器とは」朝鮮日報、Yahoo!ニュース、2022年10月10日、https://news.yahoo.co.jp/articles/00bde4560edd5819c20204f736427c0d0192e1c7 
  2. Reuters Staff「焦点:ロシアが賭ける停戦シナリオ、冬のガス不足で西側が根負け」REUTERS、2022年8月25日、https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-6months-military-idJPKBN2PV09S 
  3. ポール・アダムス「【解説】 誰が、何が? クリミア大橋の爆発 これまでに分かっていること」BBC NEWS JAPAN、Yahoo!ニュース、2022年10月10日、https://news.yahoo.co.jp/articles/95606db6154c419fde27841dbadc1ba6601cf2a8 
  4. ポール・アダムス、2022年10月10日 
  5. 読売新聞オンライン「ロシア軍がミサイル80発以上、半数を迎撃…キーウ4地区への着弾で5人死亡27人負傷」2022年10月10日、https://www.yomiuri.co.jp/world/20221010-OYT1T50116/ 
  6. キャサリン・ファン「ロシアの大規模ミサイル攻撃には、西側の防空システムも役に立たない?」ニューズウィーク、Yahoo!ニュース、2022年10月11日、https://news.yahoo.co.jp/articles/575dab21cb1a1281e58af33ef513ee0c6dbe9cc9?page=1 
  7. ビデオニュース・ドットコム「ウクライナを第二のシリアにしてはならない」2022年8月6日、https://www.videonews.com/marugeki-talk/1113 
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