東日本大震災から12年 被災地 想定以上の人口減少  ”核の闇” 覆いつくす復興事業

北アメリカ
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gtaranuによるPixabayからの画像

  東日本大震災から12年が経過した。2011(平成23)年3月11日14時46分、東北地方太平洋沖を震源とするマグニチュード(M)9.0の、日本周辺における観測史上最大の地震が発生。

  東日本各地での大きな揺れや、大津波と火災などにより、東北地方を中心に12都道府県で2万2318名の死者・行方不明者を出した(震災関連死を含む)。

 この数字は、明治以降、関東大震災、明治三陸地震につぐ3番目の規模である。

  地震により、場所によっては波高10メートル以上、最大遡上高40.1メートルにも上る巨大な津波が発生。東北地方と関東地方の太平洋沿岸に甚大な被害を出す。

  震災では、避難所の不衛生や寒さなどが原因により、避難後に死亡する「震災関連死」が高齢者を中心に相次いだ。

  復興庁では、震災関連死の死者を「東日本大震災による負傷の悪化などにより死亡し、災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき、当該災害弔慰金の支給対象となった者」と定義する。

  地震の発生から1時間後、東京電力福島第一原子力発電所は、遡上高14 – 15mの津波に襲われ、1号機から5号機で全交流電源が喪失。原子炉を冷却できなくなり、1号機・2号機・3号機が炉心溶融(メルトダウン)に陥った。

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被災地 想定以上の人口減少

  被災地では交通網の整備や住宅の高台への移転などの復興事業が進むものの、しかし想定以上に人口の減少が進む。

  国勢調査によると、岩手、宮城、福島の3県の沿岸部と東京電力第一原発事故の影響を受けた計42の市町村では、震災前(2010年)に約257万人から10年間で約14万人減少した。

  詳しく見てみると、10年間の県全体の人口減少率は、岩手8.9%、宮城1.9%、福島9.6%と、いずれも全国の1.4%を上回る。市町村別では、3970人の死者・行方不明者を出した宮城県石巻市で2万675人の減少。

  被災した3県の沿岸部では、定住や帰還を促すさまざまな取り組みが行われているものの、しかし若い世代を中心に都市部へ流れる傾向がみられる1

 仙台市は5万718人増え、隣接する名取市が5584人増える一方、その周辺の人口流出が著しい。

  急激な人口減少は、原発事故で被災した福島県沿岸部でより顕著だ。避難指示が出された市町村の数は当初の11から7に減ったものの、約8万8000人であった居住人口は、しかし18%の約1万6000人にとどまる。

  復興庁などが2021年に行った住民意向調査では、10~40歳代で「帰らないと決めている」と答えた人は、双葉、大熊など4町で5割を超えた。

 人口の減少が帰還を思いとどまらせ、さらに人口減を招くという悪循環に陥っている。

 「処理水」 海洋放出 年内にも

 1月13日、日本政府は、東京電力福島第一原発での「処理水」について、年内にも100万トン以上を海に放出する方針を示す。

 政府や東京電力は、ほとんどの放射性物質の濃度を国の基準より低く薄める「処理」を済ませた水だと説明。

  多核種除去設備(ALPS)でフィルター処理した水が、原発構内のタンクで保管されているものの、保管される処理水の量は130万トンを超え、保管場所がなくなりつつある。

  日本政府は2021年4月に処理水の海洋放出を決定。これには、韓国だけでなく、オーストラリアやニュージーランド、パプアニューギニア、フィジーなどが加盟する地域経済協力機構「太平洋諸島フォーラム」が反対してきた。

  政府は有識者会議で海洋放出のほか地層注入、水蒸気放出、水素放出、地下埋設の合わせて5つの案を検討した結果、海洋放出が一番コストが安く、しかも時間的にも早いと判断されたために海洋投棄を決めたとしている。

  しかし有識者会議が検討した案は、海洋放出以外は土地の確保や技術開発などの点でいずれも現実性に乏しいもの。

  一方で、政府はNGOの専門家らが現実的な代替案として提唱している大型タンクの設置やモルタル固化処理などの案を検討すらしてない2

 ”核の闇” 覆いつくす復興事業

  そもそも日本政府が本当に「原発の闇」「核の闇」と向き合っているのかさえ、疑わしい。

  東京電力福島第一原発事故で被災した福島県沿岸の浜通りに新産業創出の中核として浪江町に開設するのが、「福島国際研究所教育機構」。

 モデルとするのは、アメリカの核施設の周辺地域であり、原子力や核兵器を”礼賛”する地だ。

  機構は、福島復興特別再生特措法に基づく特別な法人として、国が設立する研究教育機関。福島の復興の柱となる「福島・国際研究産業都市」(イノベーション・コースト)構想」の一環として整備される。

  この機構は、2020年6月、復興庁の有識者会議がまとめた原発事故の被災地復興に関する報告書が基になっている。報告書が機構のモデルとしたのは、アメリカのワシントン州ハンフォード核施設周辺。

  報告書はハンフォードについて、

 「軍事用のプルトニウムが精製され、放射能汚染に見舞われたが、環境浄化のために多くの研究機関や企業が集積し、廃炉や除染以外の産業発展に結びついた」

 と復興の成功例と位置づけるも、しかし原子力は礼賛されている地域という事実につては触れなかった。実際、核を礼賛する地域を手本とする拠点づくりに、警戒する動きもみられる。

  1. 読売新聞「被災地の人口減深刻」2023年3月11日付朝刊、1項 
  2. ビデオニュース・ドットコム「汚染水を海に捨ててはならないこれだけの理由」2021年4月17日、https://www.videonews.com/marugeki-talk/1045 
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