ロシアのウクライナ侵攻から2年 懸念される「朝鮮半島化」 露・西側ともに軍需産業潤う

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OpenClipart-VectorsによるPixabayからの画像

 ロシアのウクライナ侵攻から2年が経過した。

  ウクライナのゼレンスキー大統領は2月25日、ロシアによる全面侵攻により、こえまでに3万1000人のウクライナ兵が亡くなったと公表。一方、負傷者についてじゃ、ロシアの軍事計画に利益を及ぼすとして公表していない。

 また英国防省は、この2年間のロシア側の死傷者の合計が35万5000人以上にのぼるという見方を示す。さらに先月の死傷者が1日あたり1000人近くにのぼり、侵攻後の2年間で最多となったとする。

 2022年2月にロシアが侵攻して以降、ウクライナは歳入のすべてを国防と軍備につぎ込み、年金から社会保険料まで、その他あらゆる支出の数百ドルを外国からの援助で賄ってきた1

 一方、ロシアがウクライナ軍事作戦のために使用する装備や部隊配置、維持の戦費は最大2110億ドル(約31兆円)に達し、武器輸出の取りやめや延期に伴う損失も100億ドル(1兆円)以上に上っているとのこと。

 ただ、キーウ国際社会学研究所によると、ゼレンスキー氏大統領の支持率は2022年12月の84%から62%(23年12月)まで下落した。

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ウクライナ劣勢? 懸念される「朝鮮半島化」

 米欧を中心とする西側諸国は、ウクライナに軍事侵攻したロシアに対し、制裁を連発。経済の弱体化と戦意の低下を狙う。

 しかしながら、ロシアは第三国経由で物品を調達して兵器を生産。結果、23年度はプラス成長を成し遂げた。だが、労働力不足は深刻化し、高インフレも招き、市民生活に影を落とす。

 西側諸国がこの2年間で、エネルギー資源の禁輸や取引価格の上限の設定、電子部品の輸出禁止といった制裁を発動。

 ロシア連邦統計局によると、22年の国内総生産(GDP)は前年比1.2%を記録したものの、しかし23年度は政府の財政出動や弾薬、武器生産が後押しし、3.6%増のプラスに転じる。

 対して、欧州連合(EU)は昨年100万発の砲弾を提供する計画でしたが、今年3月までに50万発の供給をできるかどうかという状況。兵器の生産能力を上げていくことが遅れており、このままではロシアの攻勢にウクライナが耐えることができない。

  戦力を維持し続けることができなければ、国家存続の危機もありえる。見通されるのは、戦線が膠着化し、朝鮮化する事態だ2

露・西側ともに軍需産業潤う

 西側諸国による厳しい経済制裁が加えられている中でも、ロシア経済はなんとか持ち堪えている。ロシア連邦統計局によると、2023年の経済成長率は速報値で3.6%に達した。

  元ロシア中央銀行の顧問であり、カーネギー・ロシア・ユーラシアセンターの非常勤研究員であるアレクサンドラ・プロコペンコ氏によれば、この意外な成長率の背後には、前年のマイナス成長からの反動効果とともに、

(1)政府支出の拡大
(2)欧米の制裁への適応

を挙げる3

  結果、西側諸国の経済制裁の影響は予想よりも限定的だった。

  一方、西側諸国はロシア産原油の輸入を減らし始めているものの、「影の船団」と呼ばれる、所有者が明確でない暗号タンカーが増加。これらのタンカーはロシア産原油をインドや中国などの国に運んでいるという4

  さらに、ウクライナに対する軍事侵攻が西側の軍需産業にとって「特需」を生み出しているという事実も5

ドローン戦争


 欧米の支援の先細りが懸念されるなか、ウクライナはドローン(無人機)の活用を加速させている。

 たとえば、キーウ郊外のスタートアップ企業「エアロジックス」では、社員たちが、1日10~12時間にわたりドローンを製造し続けている6

  ウクライナ軍にとって、偵察ドローンは、前線で対峙するロシア軍の居場所を正確に把握し、攻撃の最大を狙うための欠かせない存在。

 ロシアとウクライナとの戦いにおいて毎日のように新たな設計のドローンが生まれており、「ドローンの大群」を構築。

 ドローンの視点を操縦者がリアルタイムで体感できるFPVドローンや自爆ドローン、偵察用ドローンなどが含まれる7

 しかしドローンが用いられた戦いは、戦争の形態を大きく変える。とくにドローンは遠隔操作で飛行するため、兵士が直接戦闘に参加する必要がなく、死傷者数が大幅に減少。このことにより、戦争の長期化につながる。

  1. Olena Harmash、Tom Balmforth「アングル:厳しさ増す来年のウクライナ経済、西側援助の持続性に黄信号」REUTERS、2023年12月25日、https://jp.reuters.com/world/ukraine/GR7C3W5BXNIATING6CV2JB6O2A-2023-12-24/
  2. 河東哲夫「ウクライナ劣勢?いや違う、この先にあるのは膠着状態、ロシアの「北朝鮮化」ウクライナの「韓国化」だ」現代ビジネス、2024年3月7日、https://gendai.media/articles/-/125279?imp=0 
  3. 宮川裕章「ロシア経済、制裁に適応 軍事産業が支え 原油輸出、抜け穴」毎日新聞、2024年2月17日、https://mainichi.jp/articles/20240217/ddm/003/030/107000c 
  4. 宮川裕章、2024年2月17日 
  5. CNN「ウクライナ侵略で潤う米欧軍需産業、ロシアの脅威で「戦後」も好況か」2024年3月7日、https://www.cnn.co.jp/business/35216238.html 
  6. 宋光祐「ロシアとの戦い、カギを握るドローン 製造担うウクライナの新興企業」朝日新聞デジタル、2024年2月28日、https://digital.asahi.com/articles/ASS2R6RKSS2DUHBI02B.html 
  7. エリー・クック「ウクライナがFPVドローンでロシアのT-90戦車を破壊…衝撃の爆破シーン」ニューズウィーク日本版、2023年10月31日、https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/10/fpvt-90-1_1.php 
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