4月から「プラスチック新法」スタート プラスチックごみの何が問題か? そして私たちにできること 「個人のマナー」で終わらせないために

 4月から、「プラスチック資源循環促進法」が施行された。この法律は、プラスチック製品の設計・製造から廃棄物の処理にいたるまでのプラスチックの処理全体を通した、資源の循環を促進することを目的とするもの。

 近年、地球規模の問題として、海洋プラスチックごみの問題、プラスチックごみの諸外国の輸入規制などの問題に対処するため、2019年5月に、「プラスチック資源循環戦略」が策定されていた。

 そのための具体的な取り組みとして、2020年7月からレジ袋の有料化がスタートしていた。そして今年4月から、プラスチック資源循環促進法がスタートした。

 「プラスチック資源循環戦略」の基本原則は、「3R+Renewable」だ。従来の、

3R:Reduce(リデュース)= ごみの発生を減らす
  Reuse(リユース)= 繰り返し使う
  Recycle(リサイクル)= 資源として再び利用する

に付け加え、これからは、

Renewable(リニューアブル)=再生可能資源に替える

ことが必要となってくるという。

 この3R+Renewableの基本原則にのっとり、これからがプラスチックの処理全体を通じて、「事業者」・「消費者」・「国」・「地方公共団体」などが相互に連携し、プラスチック資源の循環を促進しなければならない。

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プラスチックとは何か

 プラスチックが私たちの生活に欠かせないものになっていることは間違いない。とくにこの60年あまり、プラスチックの生産量は急速に増大した。

 プラスチックの”起源”はおよそ150年前に遡ることができる。

 プラスチックの製造の始まりは、ビリヤード球が関係しているという。19世紀半ばのビリヤード球は、象牙でできていた。ただ、象の牙1本からできるビリヤード球は、平均3個ほど。

 当たり前だが、象牙を取るには象を殺すしかないので、象牙の需要が高まると象が絶滅するのではないのか、あるいはビリヤードに使う球を調達できなくなるのではないか、が懸念された。

 そこで、米国における「ビリヤードの父」であるマイケル・フェランは1863年、「象牙の代替品を見つけた者に賞金1万ドル(現代の300万ドルに相当)を支払う」という新聞広告を打つ。

 すると、それにアマチュアの発明家であったジョン・ウェズリー・ハイアットが挑戦。綿の中にあるセルロースからまったく新しい素材であるセルロイドを合成させた。このセルロイドが、最初のプラスチックとされる。

 ただ、ハイアットは結果的に賞金を受け取ることはできなかった。ハイアットがつくったセルロイド球は、象牙の球のように跳ねず、ビリヤードには不向きだったからだ。

 しかし、このセルロイドは、櫛やフィルムなど幅広い用途で使われるようになった。そして、セルロイドは、別のプラスチックに関する発明を促していく。

 1907年に、レオ・ベーグランドが化石燃料から生まれた初めての完全な合成プラスチック「ベークライト」を発明した。

 とくに第二次世界大戦中は資源が貴重で、天然ゴムや絹などは配給制であったため、合成素材のプラスチックがつくられるようになった。

 事実、戦時中はプラスチックの生産量は300%も増えた。パラシュート、ヘルメットの裏、バズーカ砲の砲身から、原子爆弾の材料にまでなる。

プラスチックごみの何が問題か

 プラスチックごみは、私たちの生活に、そしてこの地球上に明らかに悪影響を及ぼしている。

 ここでは、景観への影響、生物の誤食、汚染物質の付着、そして製造過程の危険性について考えてみる。

 第一に、有名な海岸では、それほど漂着ごみが目立たない。それは、誰かが片付けているからだ。しかし、清掃に要するコストでは人気がある砂浜なら問題ないが、日本の長い海外線ではほとんどは元が取れず、結果的に景観が汚される。

 第二に、海鳥たちが餌と一緒にプラスチックごみを誤食する。

 第三に、プラスチックそのものに毒性はないが、たとえば海を漂ううちに汚染物質を表面に吸着させる。プラスチックは石油からつくられているため、油と似た性質を持つ物質が付着しやすい。

 最後にプラスチックの製造過程において、様々な健康被害を引き起こす。まずプラスチックの製造時に大量の粉塵を出し、排出量があまりに多ければ、工場の従業員が呼吸器疾患を起こしかねない。

 事実、2013年に行われた調査では、自動車用プラスチック製造工場で勤務してする女性の乳がんに罹患するリスクは、一般女性の4倍であるというデータが出た。

 また、そもそもそのような工場は世界的に貧困地域に点在し、健康格差と貧富の格差が強く結び付いている。

 体内に入ったプラスチックの健康への影響については、まだ分かっていないことが多い。しかし、他の物質と結合しやすいプラスチックが人体に有害な他の物質の運搬約を果たしているという指摘も根強い。

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海洋プラスチック

 海洋プラスチックごみの問題も、深刻だ。プラスチックごみなどが街中の道路わきにある排水溝に落ちると、たとえば水再生センターへ流れ込む。

 しかし大雨が降ると、川へと流れ込む場合があり、川へ流れ込んだプラスチックごみはそのまま流れ込む。これが、海洋プラスチックごみとなっていく。

 また、水再生センターでも100%すべてのごみを取り除くことはできない。キッチンや洗濯機から出る小さなプラスチックの繊維が、プランクトンの中から見つかる例もある。

 日本近海には、「太平洋ごみベルト」が存在。ここには、日本から米国にかけてのごみが集ってくる。

 また、環境省によれば、2000年ごろから日本海側から東シナ海にかけての海岸で多くのポリタンクが流れ着くようになった。

 たとえば、2016年4月から2017年3月までの1年間に、約1万6000個のポリタンクが、流れ着いたという。流れ着いた場所は、多い順に島根県、長崎県、鹿児島県、山口県、石川県であった。

 あるいは、この海洋プラスチックごみについても貧富の格差の構図が横たわる。海に流れ込んだプラスチックごみが多い国は、アジアなど発展途上国がほとんど。これらの国は、現在の経済を回すのは最優先であり、ごみ処理の問題まで手が回っていない。

 「海洋プラスチックごみ2050年問題」というものがある。現在、すでに海には1億5000万トンものプラスチックごみがあると考えられているが、これからも毎年800万トンのプラスチックごみが海に流れ込むという。

 すると、2050年には、海に住む生物よりもプラスチックごみの方が多くなるという計算になる。

マイクロプラスチック

 マイクロプラスチックのことも、プラスチックごみの問題を語るうえで重要なものとなってきた。

 マイクロプラスチックがより深刻なのは、回収して処分することができないということ。砂粒と同じような大きさのプラスチックであり、きれいな海岸を維持する清掃活動においても、マイクロプラスチックは片づけることができない。

 「マイクロ」とは英語で「小さい」という意味だが、マイクロプラスチックは大きさが5ミリメートル以下のものをいう。

 海面を漂ったり砂浜に打ち上げられたりしたプラスチックは、太陽の光にさらされもろくなり、やがて波の力で砕けていく。こうして大きなプラスチックごみが小さくなっていったものが、マイクロプラスチックだ。

 また、最近では少なくなってきたが、洗顔料や歯磨き粉に「スクラブ」として小さなマイクロビーズが、小さなプラスチックとして含まれていることが多かった。現在でも、それがマイクロプラスチックとして、海を漂っている。

 このマイクロプラスチックは、食物連鎖を通して、現実に私たちの体の中にも入りこんでいる。実際、これまでに魚や貝、食卓の塩、ペットボトルのミネラルウォーターなどで確認されている。

 また、人間の便の中からマイクロプラスチックが検出されたという報告も。

 ただ、プラスチックそのものは有毒ではないが、プラスチックには熱に強くしたいり、柔らかくしたりするために、「ビスフェノールA」「フタル酸エステル」などが混ぜてあり、このような成分が体内に残る可能性も。

 あるいは、有害であると確認され現在では禁止された「ポリ塩化ビフェニル」という物質は、いまだ海水に溶け込んでいて、それがプラスチックに吸着し、そのプラスチックを誤食した海鳥の体に残っているという報告も存在する。

日本の取り組み

 残念ながら、プラスチックごみに関する日本の取り組みは、「遅れている」と言わざるを得ない。

 「日本ではプラスチックごみの8割はリサイクルされている」とされる。しかし、実際には、それは「燃やしている」のだ。「熱回収」を、リサイクルとカウントしている。そして日本の「リサイクル」されるプラスチックの7割が、この熱回収だ。

 世界的はこの熱回収は、リサイクルに含まれない。

 ごみを燃やすときに、その熱で電気を作ったり、水を温めて近くの温水プールに転用したりすることが多くなった。

 同様に、プラスチックごみを一般のごみと一緒に持たしたりしても、ただ燃やすのではなく、熱として利用する。れを「熱回収」というが、日本では独自に「サーマルリサイクル」と呼び、プラスチックと「リサイクル」しているとする。

 ただ、前述したようにサーマルリサイクルが世界的は、リサイクルされたとはいわない。そして、日本のリサイクルの7割が、この熱回収だ。

 実際に「リサイクル」として、海外にリサイクル材料として輸出しているものを含め、日本でリサイクルされているプラスチックは2割ほどしかない。

世界の取り組み

 プラスチックの削減に向けた取り組みは、世界でも進んでいる。

 とくに日本では、いまだにレジ袋の有料化にぶー垂れている国民が多いが、世界ではレジ袋そのものを禁止している国が少なくない。

 2018年時点で、欧州(2カ国)、アジア(7カ国)、アフリカ(26カ国)、オセアニア(4カ国)、中南米(5カ国)がレジ袋を禁止している。

 最も、アジアやアフリカでレジ袋を禁止する理由は、環境に配慮するというよりも道端に捨てられたレジ袋が、街中の水路に詰まってしまうからだ。

 さらにアフリカでは、溜まった泥水にマラリアを媒介する蚊が発生し、深刻な健康被害をもたらした。南アジアでは、モンスーンの時期に排水溝が堰き止められ、洪水をもたらしたという。

 レジ袋の廃止まではいかなくても、レジ袋に対してすでに何らかの規制を実施している国は世界で127カ国にいたる。

 日本も”ようやく”その仲間入りをしたわけだが、ただレジ袋の消費量は日本の年間プラスチック廃棄量の2%にすぎない。レジ袋よりも、食品の包装容器の方がはるかに問題だ。事実、日本は米国に2番目にプラスチックを消費している国だ。

私たちにできること

 最後に、では私たちには何ができるだろうか。

 よく、「リユース」(再利用)や「リサイクル」(再資源化)が謳われるが、しかし、それだけでは結果的にプラスチックそのものはなくならず、問題が”先延ばし”されるだけだ。

 やれるべきことは、地道に自分が普段使っているプラスチックの総量を計算したり、代替品を探したり、あるいはプラスチックの99%は化石燃料でできているため、「化石燃料に反対する」という手段しかとらざるを得ない。

 また、普段から社会参加を果たし、国や地方自治体、企業に対し、「監視」と「規制」を求めることが重要となってくる。

 とくに、「監視」と「規制」を求めることはプラスチック問題に限らず、ごみ問題を考えるうえは実は非常に重要なこと。

 実は「ごみ問題キャンペーン」は環境活動家ではなく、企業の思惑でスタートした。とくにプラスチックは、1950年代、米国で使いやすさや値段の安さも伴い急速に普及、その一方でプラスチックごみ問題も生じる。

 当然、世論の声を受けた米国議会は、プラスチックの製造業者、とくにパッケージ業界の責任を求め、ごみの削減を促す規制を検討する。

 ところが、企業は猛烈なロビー活動を展開、結果としてごみ問題の責任を負う主体が企業ではなく、公共の場でごみを捨てる”個人”となった。これが、一大キャンペーンとなった「キープ・アメリカ・ビューティフル」であった。

 このよう経緯のもとをたどれば、ごみ問題の”主犯”を何もかも、「個人のマナー」に任せること自体に大きな問題がある。今一度、企業の責任を問うためにも、私たちの”日頃の社会参加”が重要なのだ。

参考文献一覧

磯辺篤彦『海洋プラスチックごみ問題の真実 マイクロプラスチックの実態と未来予測』化学同人、2020年。

高田秀重、WWFジャパン、公益財団法人かながわ海岸美化財団『地球が危ない! プラスチックごみ① 海洋プラスチック~魚の量をこえる!?』幸運社、2019年。

高田秀重、WWFジャパン、公益財団法人かながわ海岸美化財団『地球が危ない! プラスチックごみ② 日本中にあふれるプラスチック』幸運社、2019年。

『脱プラスチック データで見る課題と解決策』日経ナショナル ジオグラフィック社、2021年。

『2022年4月スタート ~10分で分かる「プラスチック資源循環促進法」~』ecoo online、https://www.rever-corp.co.jp/ecoo-online/

『プラスチック汚染対策をレジ袋有料化で終わらせないために』ビデオニュース・ドットコム、https://www.videonews.com/marugeki-talk/983

保坂直紀『海のプラスチックごみ調べ大辞典』旬報社、2020年。