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日本の野球選手たちは、プロ・アマ問わず、世界で著しく評判が悪い。とくにオリンッピクの試合では、日本の捕手がキャッチングのたびにミットを動かし、その行為が審判への侮辱とみなされた。
2012年に韓国で行われたU-18の世界大会では、試合中にスタンドで配球を調べていいたスタッフがボールボーイにメモを渡してベンチに届けていたことが発覚。 リトルリーグの世界大会でも、塁上にいる走者が打者にサインを伝達していたことが発覚した。
一方、あまりに審判軽視が進むと米国のような事態を招きかねない。
米国では、以前からユーススポーツの場で審判の辞任が相次いでいたものの、2018年ごろからそのことが急激に加速、ニューヨーク・タイムズによると2018年~2021年の間に、あらゆる高校スポーツで約5万人が審判を辞任したという。
また米国では選手やその親たちが審判に対し、暴行事件を起こすまでにいたっている。
ミシシッピ州では、12歳を対象としたソフトボールの試合のあと、審判が出場した選手の親に待ち伏せされ、顔面を殴られる事件が起きた。
ジョージア州では、バスケットボールの試合終了後の笛が鳴らされた途端、審判が中学2年生の選手とその両親により暴行され、約30針を縫う怪我を負った。
前回までの記事→
佐々木郎希と白井球審とのトラブルの背景 求められるスポーツマンシップ ~1~ 白井球審とは? 過去には審判問題が国際問題に発展
世界で評判が悪い日本の野球選手たち
そもそも、抗議云々に関わらず、日本の野球選手たちは、世界の舞台で著しく評判が悪い。
その反応からは、日本高野連にとっても寝耳に水の話ではないことが読み取れた。
氏原英明、2018年4月17日
「8回の盗塁、あったねぇ」
大量得点差における試合の進め方について、筆者が聞いた時だ。実は国際大会において、日本代表の戦い方はあまり好意的に捉えられていない。その問題について尋ねたところ、冒頭のような返答をもらったのだ。
日本は世界的に見て実力では1位の国だと知られていますが、野球のマナーという点ではいい評価を得られていません。マナーとは試合の進め方です。相手へのリスペクトが足りていない。
氏原英明、2018年4月17日
日本の野球選手の「試合におけるマナー」が世界的に問題となったきっかけはオリンピックだった。日本の捕手がキャッチングのたびにミットを動かし、その行為が審判への侮辱とみなされた。
あるいは、シドニーオリンピックでは、日本の選手がヒットを打つたびにベース上でポーズをとった。これも相手チームへのリスペクトにかける行為であると、問題視された。
2012年に韓国で行われたU-18の世界大会では、試合中にスタンドで配球を調べていいたスタッフがボールボーイにメモを渡してベンチに届けていたことが発覚。リトルリーグの世界大会でも、塁上にいる走者が打者にサインを伝達していたことが発覚した。
2017年の秋にカナダで行われたU-18の3位決定戦では、日本代表が7-0とリードしている試合の終盤で盗塁。これに相手の二塁手が激怒し、事態を重く見た球審が「警告試合」を宣告した。
日本のスポーツの場では、小さいころから「勝つこと」が優先されている。もちろん、勝つことを求めることが重要なことであるが、一方で、「スポーツマンシップ」というものが、日本では軽視されている。
アメリカでは「審判不足」で試合ができない
スポーツの本場、米国でも審判の存在が大きく軽視されている。とくにユーススポーツ(高校生以下を対象とするスポーツ)の現場で、選手の親やコーチからの「暴言・暴力」により、審判のなり手が不足、場合よっては試合そのものができないでいる。
米国では、以前からユーススポーツの場で審判の辞任が相次いでいたものの、2018年ごろからそのことが急激に加速、ニューヨーク・タイムズによると2018年~2021年の間に、あらゆる高校スポーツで約5万人が審判を辞任したという。
この数字は、高校スポーツの審判全体の20%にも及ぶ。
深刻なのはアイスホッケーであり、4分の1の審判が辞任している、と報じた。
一方、ロサンゼルス・タイムズによれば、「審判が襲われる事件」が複数の州で相次いでいるという。
ミシシッピ州では、12歳を対象としたソフトボールの試合のあと、審判が出場した選手の親に待ち伏せされ、顔面を殴られる事件が起きた。その親には5万円の罰金が科される。
ジョージア州では、バスケットボールの試合終了後の笛が鳴らされた途端、審判が中学2年生の選手とその両親により暴行され、約30針を縫う怪我を負った。
しかも、こういった暴行の様子が動画でとられ、ネット上で拡散されることも、審判不足の要因ともなっているというのだ。
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今一度、求められるスポーツマンシップ
米国にしろ、日本にしろ、求められるのはスポーツマンシップだ。スポーツマンシップとは、何なのだろうか。
一般社団法人日本スポーツマンシップ協会は、スポーツマンシップを以下のように定義する。
スポーツはGame-
一般社団法人 日本スポーツマンシップ協会
すなわち、スポーツは遊びであるというのが大前提です。Good gameをめざして全力を尽くして愉しむことがスポーツの本質です。
プレーヤー(相手・仲間)、ルール、審判に対する尊重。困難や危機を恐れず、自ら責任をもって決断・行動・挑戦する勇気。
勝利をめざして苦しい試練を耐え抜き、自ら全力を尽くして愉しむ覚悟。
これらがすべて備わることでGood gameが実現できます。このようなスポーツの本質的な価値を理解し、Good gameを実現する覚悟をもった人をスポーツマンと呼びます。
そして、スポーツマンに求められる「Good gameを実現しようとする心構え」がスポーツマンシップです。
スポーツマンシップの歴史は諸説あるが、19世紀にはじまるという。イングランドが19世紀後半の植民地政策時代に、パブリックスクールでフットボールを取り入れた。
そのなかで、協調性や対戦相手へのリスペクト、自分で判断し行動する能力を養うという目的でスポーツマンシップが取り入れられた。
スポーツというのは、ただ単に勝てばよいというものでもない。相手チームと審判へのリスペクトがあってこそ、ゲーム(試合)が成り立つ。
同様に、これだけ手軽にさまざまなメディアを通してスポーツを観戦することができるいま、私たちファンにも、スポーツマンシップの尊重が求められる。
~おわり~
参考文献
氏原英明『国際大会で日本の野球が不評って?
勝つための戦術と“マナー”の問題』野球善哉、Number Web、2018年4月17日、https://number.bunshun.jp/articles/-/830514。
COURRiER Japon『アメリカでユーススポーツが崩壊の危機? 「審判不足」で試合ができない理由とは』2022年5月2日、https://courrier.jp/news/archives/286950/。
一般社団法人 日本スポーツマンシップ協会、https://sportsmanship.jpn.com/。