佐々木郎希と白井球審とのトラブルの背景 求められるスポーツマンシップ ~1~ 白井球審とは? 過去には審判問題が国際問題に発展

スポーツ
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 4月24日の京セラドーム大阪の千葉ロッテ・佐々木労希の登板で、佐々木に詰め寄った白井一行球審の行動は、大きな波紋を呼んだ。

 その後も、白井球審に詰め寄るロッテの選手が相次ぎ、選手のみならず、監督・コーチ、あるいは野球関係者が相次いでコメントを残した。それだけでなく、ニュースやワードショーまでもが盛んに報じ、大きな遺恨となった。

 かつて、「審判は神様」といわれた。そのため、たとえば「誤審」という言葉なども存在しなかった。日本で、「誤審」という言葉がメディア内で多く使われるようになったのは、2002年のサッカーW杯のころからだろうか。

 ただでさえ、「日本単独開催」が土壇場で韓国との共催となる。そのなかにおいての韓国代表の快進撃が、いくつもの「誤審」とともにクローズアップ。

 ただ、世界中から選手が集まるのと同様、審判団も各国から集まってくる。

 もちろん、審判の質もばらばらなのでそれをカバーする存在が国際サッカー連盟であるはずなのだが、しかしメディアの批判の矛先がサッカー連盟に向けられず、結局、現在までつづく「反韓」世論を形成する要因となった。

 一方で、特殊な文化的背景をもつ相撲界では、野球ほど「誤審」の問題はクローズアップされない。問題の本質は、審判の存在そのものよりも、選手と私たちファンのスポーツマシップの欠如にあるようだ。

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白井一行審判とは


 騒動の主役、白井審判とはどのような人物なのだろうか。

 不遜なイメージばかりが先行していますが、実は球審のなかでもユニークなキャラで知られた人です

NEWS ポストセブン、5月23日

 白井審判は1997年2月にパリ―グ審判員に入局したベテランで、2021年9月には1500試合出場を達成。「ストライク」のコール時に甲高い声で叫ぶ独特のスタイルは、一部のプロ野球ファンの間でも広く知られていた。

2017年3月に行われたWBCの強化試合のオーストラリア代表と阪神タイガースとの試合の球審を務めた際には、そのコールにオーストラリア代表が驚き、チームの公式Twitterが白井審判を動画付きでアップしたこともあった。2018年には、審判員奨励賞も受賞している。

 プロ野球ファン人気が高い、「球辞苑」(NHK BS)にも出演。番組内でAKB48の大ファンであることを明かし、ストライク時に指で「K」の形を作る動作について、

 AKB48のチームKの公演を見て思いついた

と語ったこともある。

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マイク・ディミュロ事件


 審判を軽視することは、日本のプロ野球では昭和の時代からあったようだ。

 昭和の時代のプロ野球では、審判の判定に監督や選手がクレームをつけることが珍しくなかった。暴力をふるうことさえあったが、多くのファンは「審判がよくない」という論調だった。

Number Web、5月14日

 1982年8月31日、横浜スタジアムで行われた試合で、阪神の2人のコーチによる審判への暴行事件が起きる。島野育夫、柴田猛の2コーチがファウル、フェアの判定をめぐり、鷲谷亘三塁塁審に暴力をふるった。

 セリーグの鈴木龍二会長は2人のコーチに「無期限出場停止」を科した。この処分を支持する人も多かったものの、一方で「審判の質が悪いからこうなるのだ」というファンの論調も存在したという。

 たまたまこの試合の後に、塁審に打球が当たって方向が変わり、安打になるという試合があった。このとき「審判は石と同じだから、打球が当たってもプレーはそのまま続行される」というルールが紹介された。

 この後、関西では「審判が石と同じなんやったら、石ころ殴った阪神のコーチがなんで謹慎せなあかんねん」という話が冗談半分で流布したものだ。

Number Web、5月14日

 プロ野球の創成期から戦後しばらくは、何人もの大物審判が存在した。大学野球やプロで実績を残した元選手が多く、さらに各球団の監督よりも年上が多かったことから、審判を侮辱したり、からかかったりすることは少なかった。

 しかし戦後になり、現役時代に実績を残すことができなかった元プロ野球選手が審判に転向するようになって、「審判を軽く見る」風潮が強くなったという。

 ただ、この風潮を変えた事件が起きる。 1997年に起きた「マイク・ディミュロ事件」だ。

 マイク・ディミュロというのは、メジャーリーグから日本のプロ野球に技術交流の目的で派遣された審判であり、おもにマイナーリーグで審判を務めてきた。

 6月の岐阜県長良川球場での中日ー横浜戦で、中日の大豊泰昭が球審ディミュロのストライクの判定に抗議。すると、ディミュロ球審はボール気味の次の投球を「ストライク」と宣告。

 これは、ジャッジの権限が球審にあると強調するために、”懲罰的”にストライク判定をしたのであったが、これに怒った中日の星野仙一監督とコーチ陣がディミュロを取りかこんで猛抗議する。すると、ディミュロ球審は、翌日辞表を出し、帰国してしまった。

この事件は、米国メディアでも、「審判が恐喝された」と大きく取り上げた。

 そもそも、野球のルールでは、「ストライク、ボール」の判定には選手や監督、コーチは一切抗議できない。しかし、最近でも佐々木労希はじめ、メジャーリーグでプレーする大谷将平もしばしば、ボールの判定をめぐり、不服そうな態度を見せる。

                     ~つづく~

参考文献

広尾晃『「また審判叩きが始まるのか」佐々木朗希と白井球審の件で思い出す“暴行・恫喝の過去”… ロッテ元守護神が判定技術を称賛するワケ』Number Wwb、2022年5月4日、https://number.bunshun.jp/articles/-/853100

NEWS ポストセブン『ロッテとトラブルの白井一行球審の素顔 AKB48の大ファンで推しは大島優子』Yahoo!ニュース、2022年5月23日、https://news.yahoo.co.jp/articles/1d0d10a8a1f421c123ef8475177467e2c9fe1e4b

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