2022年ノーベル賞振り返り ~2~ 文学賞 「シンプルな情熱」 平和賞 世相を反映? 経済学賞 元FRB議長が受賞

Eugene CarraraによるPixabayからの画像

 10月上旬、今年のノーベル賞が順次、発表された。しかしながら、日本人の受賞はなし。

 それとともにメディアの報道も”ノーベル賞自体が”なかったことのように、話題がスルーされた。ただ、残念ながら、今後、日本人の受賞は、予想通りというべきは”激減”しそうだ。

 理由は、日本の大学の下がり続ける「世界大学ランキング」と、主要国で唯一、日本だけが論文の数が減少していること1

 上海交通大学の「世界大学学術ランキング」(上海ランキング)によると、毎年のトップ10はイギリスとアメリカの大学がほぼ独占しているなか、日本は東京大学が22位(2018年)止まり。

 また、1981年から2015年にかけて全世界の論文の数は3.5倍に増えたなか、研究開発費総額上位のアメリカ、中国、日本、ドイツ、韓国、フランス、イギリスのうち、日本だけが論文数を減らしている2

 ノーベル賞を受賞するためには、25年前の業績(論文)が重要だという指摘もあり3、そうすると2001年の被引用論文数シェアはアメリカでは52%、イギリスは11%、フランスは5%、ドイツは7%に対し、日本は8%とかなり低い。

 それとともに中国の被引用論文のシェアは近年、上昇している。

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文学賞 「シンプルな情熱」


 日本時間の6日午後8時すぎ、スウェーデンの選考委員会は、2022年のノーベル文学賞にフランスの作家である、アニー・エルノー氏を選んだと発表。

 エルノー氏は、1940年にフランスの北部ノルマンディー地方に生まれた。喫茶店と食料品店を兼ねた店を経営する両親のもとで育ち、ジェンダーや階級などによる格差を経験して、自らの人生をいろいろな角度から観察。

 それらは、多くの自伝小説の題材となった。

 このうち、1983年に発表された「場所」は、自身の生い立ちや父親の境遇を描くことで、とくにフランスの労働者階級の熾烈さを描き、高く評価。

 1991年に発表された「シンプルな情熱」は、女性教師と年下の男性との不倫を赤裸々かつ客観的に描き、世界的に話題に。とくに「シンプルな情熱」は映画化され、日本でも公開された。

 選考委員会は、

「勇気と客観的な鋭さで階級や屈辱、嫉妬、あるいは自分が何者かを見ることができないといった苦悩を明らかにし、将来にわたって称賛に値する功績を成し遂げた」

4

とする。

 受賞の発表を受けてエルノー氏は6日、パリの出版社で記者会見し、「大きな賞をいただき感動している」と語った。

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平和賞 世相を反映?

 ノルウェーの首都であるオスロの選考委員会は7日、今年のノーベル平和賞に、ベラルーシの人権活動家のアレシ・ビャリャツキ氏、ロシアの人権団体である「メモリアル」、ウクライナの人権団体「市民自由センター」を選出したと発表。

 このうちベラルーシの人権活動家であるアレシ・ビャリャツキ氏は、1980年代にベラルーシで始まった民主化運動を率いて「春」という名称の人権団体を創設。しかし現在は、ベラルーシの刑務所に収監されている。

 ロシアの人権団体「メモリアル」は1987年に創設。ソビエト時代の政治弾圧の告発やロシアや中央アジアにおける人権侵害の監視を行ってきたものの、しかし今年の2月に解散させられ、現在は活動を停止している状態だ。

 ウクライナの人権団体「市民自由センター」は、ウクライナの人権問題や民主化に取り組み、2月にロシアがウクライナに侵攻したあとは、ロシア軍が行った疑いのある戦争犯罪を記録するため、ウクライナ各地で市民への聞き取り調査を行っている。

 ノーベル平和賞は、軍縮や民主主義、人権の問題、それに平和な世界の実現などに貢献した個人や団体に贈られるほか、近年は、環境問題への取り組みにも贈られる。

 1901年から2021年までの間に109人の個人と25の団体が受賞。

経済学賞 元FRB議長が受賞


 日本時間の10日午後7時前、スウェーデンの王立科学アカデミーは、ノーベル経済学賞の受賞者を発表。

 受賞は決まったのは、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)の元議長であったベン・バーナンキ氏、アメリカのシカゴ大学の栄誉教授であるダグラス・ダイヤモンド氏、同じくアメリカのワシントン大学セントルイスの教授フィリップ・ディビッグ氏の3人。

 受賞理由について、王立科学アカデミーは、

「経済における銀行の役割への理解を深めた。それにより、金融市場への規制や金融危機への対処のしかたについて多くの示唆を与えた」

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とする。

 3人の研究は、現代の銀行についての研究であり、銀行はなぜ必要なのか、あるいは銀行の破綻がどのようにして金融危機につながるかを明らかとしているが、これらの研究は1980年代のはじめに行われていた。

 このうちベン・バーナンキ氏は、2006年にアメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)の議長に就任し、2014年までの2期8年にわたりアメリカの金融政策の指揮。

 とくに2008年のリーマンショックの直後には、世界的な景気の悪化に歯止めをかけるために、政策金利を事実上のゼロ%にまで引き上げる「ゼロ金利政策」を実施した。

  1. 岩本宣明「日本人のノーベル賞が「急減する」絶対的理由」東洋経済ONLINE、2019年10月10日、https://toyokeizai.net/articles/-/307150
  2. 岩本宣明、2019年10月10日
  3.  岩本宣明、2019年10月10日
  4. NHK ノーベル賞特設サイト「2022年のノーベル文学賞にフランスの作家アニー・エルノー氏」2022年10月7日、https://www3.nhk.or.jp/news/special/nobelprize/2022/literature/article_13.html
  5. NHK ノーベル賞特設サイト「2022年のノーベル経済学賞に米FRB元議長のバーナンキ氏ら3人」2022年10月11日、https://www3.nhk.or.jp/news/special/nobelprize/2022/economic_sciences/article_04.html