2022年ノーベル賞振り返り ~1~ 生理学・医学賞 ホモ・サピエンスとネアンデルタール人とで種が交わっていた可能性 物理学賞 量子もつれ 化学賞 クリックケミストリー

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 今月3日からノーベル賞が順次発表された。

 ノーベル賞は、スウェーデンの発明家アルフレッド・ノーベルの遺言に基づき、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和の各分野において、「人類に最大の貢献をもたらした人々」に贈られる賞。

 のちに経済学分野も追加され、今では6つの賞が存在。毎年、各章、最大3名まで受賞できる。

 ノーベルはダイナマイトの発明により30代にして巨万の富を手に入れる。晩年には、軍事用途にも使われる「バリスタイト」という火薬を開発したり、兵器開発の製造にも乗り出す。

 以後、ノーベルの発明は、軍事技術にも大きな影響を与えた。

 ノーベルが50代半ばを迎えた1888年、ある転機が。兄であるリュドビックが亡くなった際、弟のノーベル自身が亡くなったと勘違いした新聞が、「死の商人、死す」という見出しの記事を載せる。

 そのことを払拭したいと考えたのが、ノーベル賞創設の由来のひとつとも。

 ノーベル賞がこれだけ権威ある賞として世界的に注目される理由として、「世界で初めての国際賞」であるからだという1。まだ、戦争が多かった時代に、世界を包括する賞などは考えられなかった。

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【本日のニュース】2022/10/14/金

生理学・医学賞 ホモ・サピエンスとネアンデルタール人とで種が交わっていた可能性


 日本時間の3日午後6時半すぎ、ノーベル生理学・医学賞が発表。受賞が決まったのは、スウェーデン出身で、ドイツのマックス・プランク研究所のスバンテ・ペーボ博士。

 ペーボ博士は、沖縄科学技術大学院大学(OIST)=オイストの客員教授も務めている。ペーボ博士は、絶滅した人類の遺伝情報を解析する技術を確立し、人類の進化に関する研究で大きな貢献をした。

 ペーボ博士は、4万年前のネアンデルタール人の骨に残っていた遺伝情報を詳しく調べて、現代の人類であるホモ・サピエンスと比較。

 その結果、ホモ・サピエンスはネアンデルタール人の遺伝情報を一部、受け継いでいることを突き止め、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人とで種が交わっていた可能性を明らかに。

 さらに絶滅した人類の遺伝情報は、標高の高い土地での生存を有利にしたり、あるいはウイルスに対しての免疫の反応に影響するなど、いまの私たちの体の仕組みをより深く明らかにした。

 またベーボ博士は、ネアンデルタール人から受け継がれた遺伝子が、新型コロナウイルスの重症化についてのリスクにも関わっていることを、化学雑誌「ネイチャー」などに報告。

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物理学賞 量子もつれ 「量子コンピューター」の開発へ


 日本時間の4日午後7時前、ノーベル物理学賞の受賞者を発表。受賞が決まったのは、フランスのパリ・サクレー大学のアラン・アスペ教授、アメリカのクラウザー研究所のジョン・クラウザー博士、オーストリアのウィーン大学のアントン・ツァイリンガー教授の3人。

 このうち、クラウザー博士とアスペ教授は、「量子もつれ」と呼ばれる量子力学を象徴する現象が、単に理論の上だけでなく、実際に存在しうることを、1970年代から研究。

 その結果、2つの光の粒などの量子がお互いにどんなに遠く離れていても、片方の量子の状態が変わると、もう片方の状態も瞬時に変化するという、「量子もつれ」という現象が実際に起きることを実験により確かめた。

 この「量子もつれ」という現象については、アインシュタインをはじめ多くの著名な研究者を悩ませていたが、教授らは実験により、その正しさを突き止めた。

 さらにツァイリンガー教授はこの「量子もつれ」という現象を利用すると、ある情報を量子に埋め込み、それを離れた場所にあるもう一方の量子に瞬時に伝えることができるという、「量子テレポーテーション」という現象が起きることを、実験により示した。

 これら研究により開発が進められているのが、「量子コンピューター」だ。

化学賞 「クリックケミストリー」


 5日午後7時前、ノーベル化学賞の受賞者が発表。

 受賞が決まったのは、アメリカのスタンフォード大学のキャロリン・ベルトッツィ教授と、デンマークのコペンハーゲン大学のモーテン・メルダル教授、アメリカのスクリプス研究所のバリー・シャープレス教授の3人。

 3人は、さまざまな分子の結合を効率的に行うという「クリックケミストリー」と呼ばれる手法の開発にかかわった。

 このうちシャープレス教授は、さまざまな分子の結合を、効率的でシンプルに行うことができる「クリックケミストリー」と呼ばれる手法を提唱。

 さらにシャープレス教授とメルダル教授はそれぞれ別に、「クリックケミストリー」の中核をなす反応を開発。

 この手法では、余分な生成物をほとんど作らずに求める合成物を効率的に生み出すことができ、さまざまな反応条件を探さなくても、狙った分子を結合させることができるようになった。

 この手法により、作ることのできる分子の種類が大幅に増え、医薬品や材料の開発など、幅広い分野に研究が活かされている。

 またベルトッツィ教授は、この手法を生きた細胞でも使えるようにした。

 このことにより、たとえば、特殊な化合物を細胞の表面に結合させることで細胞を光らせたり、印を付けたりすることができるようになり、がん細胞の分子の動きなどを観察することが可能になる。

  1. 高橋大地「ノーベル賞って、なんでえらいの?」ノーベル賞2022 NHK特設サイト、2019年10月4日、https://www3.nhk.or.jp/news/special/nobelprize/2022/feature/article_02.html